今回は桑名市にあるおもちゃ屋さん『いもや本店』のご主人、黒澤正二さんと妥子さんがお客様。
『いもや本店』は創業してからもう100年以上。
正二さんは3代目。
以前は、いもをつぼ焼きにして売っていたから、店の名前は『いもや』。
3代目の正二さんからはおもちゃ屋さん。
およそ50年、桑名の町で子供たちと触れ合ってきたお父さんとお母さんです。
長
居する人にはレッドカード!
正二 30分、50分いる人もいます。
そんな時は「そろそろ時間ですよ、レッドカードですよ!」と声をかける。
妥子 レッドカードね。
夢中になって見ているんだろうけど、混んでいると他のお客さんが見にくいでしょ。
そうしたら、レッドカードと行って出ていってもらうんです。
正 そろそろデッドカードだよ、って。
決めてってくれる?って。
自
転車がずらっと並んだかつての土日
妥子 土・日になると自転車がズラ~と並んで、整理整頓に困りました。
ここは歩道がないけど、子どもが自転車をダ〜ッと置くもんでね。
今は一日に1人か2人。
子どもがいないし、今はみんなゲームばっかりで、こういうおもちゃは欲しくないの。
お客さんも子どもは一人も来ないで、40代、50代の年配の人ばっかり。
ここでは昔のものを置いているので、その頃を懐かしんで来るわけです。
吊るしてあるおもちゃも4〜50年経っているし。
懐かしいで来るだけ。
プラモデルも今の子どもたちは作らないでしょ。
正二 一部の子だけだね。
妥子 ミニ四駆も当時やっていた子も、今はもう40過ぎくらい。
今の小中高校生は見もしない。
正二 20何歳の子が作ってるね
妥子 20代じゃないよ、もっといっているわ。
うちの子どもがもう50になるんやで。
ルービックキューブが流行ったころは大忙し。
回りやすいように、お父さんが夜なべで調整作業をしたこともあったっけね。
お
もちゃは天井へ吊るす
妥子 私は知りませんが、お父さんがいうには、大昔は夜通し、縁台で碁を指したりして遊んだそうです。
年寄りの遊びといえば、そんなものしかなかったんですね。
二代目はかき氷やら焼きそばやら、食べ物をしていたらしいです。
でも、徐々に周りにも店ができたもので。
おもちゃ屋も近辺に何軒もあったんだけど、今はもう、うち1軒だけ。
いっぱい吊るしてあるおもちゃは、お父さんがみな付けたんです。
正二 これがほしいと言われたら脚立に乗って取るんです。
大変です。
妥子 上ばかり見ているとクラクラするで、上も下もせなあかんよ、ってお客さんに言っているんですよ。
正二 首が痛くなるで〜、って。
妥子 40年越えた、当時のまんまのものなので、懐かしいわね。
正二 お宝ですねえ。
妥子 『妖怪けむり』は昔からあるねえ。
これは今もずっと出ているの。
買うのは子どもというより、これを知っている人だね。
正二 これは50年以上前のものかな・・・この人形の形をしたメンコは『人形パン』といって、片岡千恵蔵やら・・・。
妥子 東千代之介かな、もう今はいないけど・・・。
全
国からマニアがやってくる
妥子 岐阜、伊勢、横浜、大阪、名古屋はもちろん来るし・・・。
正二 さっき来た子は鈴鹿だったな。
妥子 横浜から新幹線に乗って、何度か通ってきた人もいますね。
昔のものは、もうないからね。
お給料が入ったから、「あの商品取っといてな」っていう人もいます。
ここを建てるときに全部ビニールの袋に入れて、一つも捨てずにみんな倉庫に入れてあったの。
普通は引っ越しのときとかに、みんな捨ててしまうけどね。
で、改装したときにこの商品を全部並べたのよ。
マニアの人は、ホコリも取らないでと言うくらい。
私たちより詳しい人もいますよ。
女の人向けだとキャンディ・キャンディやセーラームーン。
でももうみんな買い占められて、全然ないの。
キャンディ・キャンディは名古屋のファンの人が、みんな買っていきました。
正二 空箱でも欲しいと言ってました。
妥子 セーラームーンも大きな人形があったんだけどね。
正二 セーラームーン、人気だったね。
妥子 未だに問い合わせが来ますよ。
ご
近所のお年寄りのたまり場
妥子 退職してもいいんだけど、やっぱりボサッとしているのもねえ。
店を開けないとテレビばかり見て一日経っていくので、体に悪いから。
歩けるうちは働くねと言ってます。
このあたりは年寄りばかりなので、日中の明るいうちは、近所の人たちが集まって座談会だね。
ここの前に椅子があるでしょ。
みんな並んで、めいめい話すんだわ。
今日も朝、あたたかいうちに5〜6人で話しましたわ。
一人暮らしが多いので、出てこないと無事かどうかわからないでしょう。
うちと、そこの奥さんと、やめたうどん屋さんのところと、朝の20分くらい話すの。
正二 ええことやわねえ。
妥子 そこのうどん屋さんは明治の前からしていたんだけど、継ぐ人もいなくて店を閉めて、2年目。
東海道に向かって時計屋さん、こっちに曲がっていくと鍛冶町で、冬になると『ふいご祭り』を今でもしますよ。
ちょうど先日、したところです。