FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年2月17日放送

今回は津市にある『バイオリン工房NAKANO』の中野雅敏さんがお客様。
中野さんが工房をオープンしたのは今から18年前。
今のお店ができてから8年が経ちました。
18年前は、バイオリンを作っている工房は三重県になかったし、バイオリン教室も多くはなかったそうです。
現在、中野さんはチェロ教室の先生でもあります。
教室に来る皆さんは、大人半分。子供半分。
大人の方は、小さな頃からずっと憧れていた人が多いそうです。

学卒業のタイミングでバイオリンを作る学校が開校!

もともと音楽をしていたので、楽器そのものには興味があり、できることなら、音楽や楽器に携わる仕事に付きたいと思っていました。
楽器を作る学校が日本にもある・・・というか、ちょうど僕が大学を卒業する年に開校し、そこに通いはじめたのがバイオリン作りのきっかけです。
僕は実はチェロを演奏していたんです。
チェロの魅力は、音楽を下から支えるというパートであることが多いということ。
旋律を弾くよりはそちらのほうが好きだったんですね。
しかし、バイオリン製作の学校ができたのは、何かのめぐり合わせだと感じました。

学校では、製作をするということを前提に、次にこの作業をするのなら、その前にこれを学んでおかないといけないと・・・など、先生がいろいろ考えてくれて。
つまり、製作と、それに関わる基礎的な理論を行ったり来たりという勉強法でした。
バイオリンを作るということを見込んだ授業内容。
4年かけて卒業するまでには、バイオリンを作ることができるようになります。

 

作りでバイオリンを作ることを学んだ

僕らが学んだバイオリン製作は、完全に手作りのもの。
逆に、就職がなかなか難しいので、自分たちで工房を立ち上げるか、製作を抑えて楽器屋さんに勤めて修理やメンテナンスをするという仕事になります。
どこかに就職してバイオリンを製作するということは、まずあり得ないですね。
なのでまあ、基本は卒業したら、自分たちでやっていくという考え方の学校。
同級生は3人。
4学年揃っても15人くらいでしたね。
そこから独立しようと思っても、急には難しいので、製作以外の修理や調整的なことを勉強するため、他のバイオリン専門店に勤めていました。
そして何年か経ち、三重で工房を立ち上げることになりました。

 

イオリンの木は堅すぎず柔らかすぎず

バイオリンというのは2種類の木材を使っていまして、いわゆる表側の表板はモミの木などの針葉樹。
それ以外は楓など、硬い広葉樹を使うのが一般的となっています。
目が詰まっている方が音的にはいいのですが、硬すぎず柔らかすぎずという感じですかね。
何百年も持つものなので、木自体も頑丈ですが、硬すぎても音があまり良くならないので、そのあたりの具合のちょうど良いのが、ヨーロッパ産の材質ということがあります。
一般的に寒い地方の木を使うことが多いですね。
作っていく中で一番難しい過程は、均一さを出すことでしょうかね。
寸法や厚みなど、サイズはほぼ決まっています。

バイオリンのパーツが描かれた大きな紙には、細かな数字がいくつか書かれています。
寸法や木の厚みで、横板6枚、表板1枚、裏板1枚、そして頭の部分、9つのパーツが合わさってバイオリンが完成します。

ここは何ミリだとか、部分的には決まっています。
たとえば、この図でみると、真ん中に5.5とか5.2とか書いてありますよね。
これは厚みなんですね。
右側が表板で、6ミリとか7ミリの厚み。
何も書いていない部分はだいたい6ミリ。
だんだん端にいくに連れて薄くなっていくと書いてあるだけなので、それをなだらかにつなげていくという作業は自分たちで判断してするしかありません。
そのあたりのなめらかさや均一さ・・・部分的にだったら何ミリかとか測って出せますが、6ミリから4.8ミリをどうつなげていくか・・・また、重さも図りながらやるので、この部分は6ミリ寄り、この部分は4ミリ寄り・・・などの判断を、型や音の感じとかを確かめながらやるのが難しいところですね。

 

イオリンを作る人、直す人

僕が通っていた学校は、製作専門の学校でした。
弓はまた別の専門の職人さんがいます。
また、作ることができるようになったとしても、修理やメンテナンスの知識はあまりないんですね。
作ることはできるけど直せない、別ジャンルなんです。
僕らは20年ほど前に作る勉強をしましたが、それ以前のお店には、作る人がそんなにいませんでした。
つまり専門店は修理やメンテナンスが専門のお仕事だったんです。
だんだん作ることができる人が増えてきて、今では何ヶ所かあるのかなと。
作る作業自体は1〜3ヶ月くらいで終わります。
その後の調整は自分ですることもありますし、ユーザーさんが良いように手を入れたり、リクエストを受けて手直しするという感じ。
なので出来上がった時点で、一旦は手を離れることになります。