FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年2月24日放送

今回お話してくださるのは、岡寺山継松寺の柏木住職。
小さな頃からこの季節になるといつもよりさらににぎやかになる境内を見ながら育ちました。
厄年と迎えた多くの人が参拝に訪れます。
地元松阪の人のみならず、県内各地から、またこの地域出身で今は県外に住んでいる人まで様々。
県内各地域の厄年の人たちが団体でお参りに来ることも多いそうです。

年は気持ちを整えるのに必要な年

3月2〜4日の『初午大祭』に向けて、今は忙しい時です。
厄年についてはいろいろな考え方があり難しいのですが、一般的には何か悪いことが起こったりする年と捉えられています。
その年代で何かあったりすると「厄年だから」と言われる人が多いかもしれません。
しかし厄年とは本来、悪いことが起こるというものではありません。
厄や災いは、厄年に関係なく降り掛かってくるものなので、厄年というのは、災いが降りかからないよう、それぞれが気持ちを整えたり気を引き締めたりして、自分が歩んできた道を振り返ったりする年だと思っております。
災いに遭わないためには、まず自分でできることをし、そうでないところはお祈りをする。
気を引き締めたり気持ちを整えたりするためには「何か起こるんじゃないか」と懸念することも悪いことではありません。
そういう気持ちを利用し、体のことを気をつけたりすることも含めて、厄年は必要だと思います。

 

祷を行っているのは400年以上前から

こちらの初午大祭がいつからあるのかはっきりとわかっていませんが、『岡寺山継松寺』は松坂城ができた後に、松阪の町の中心、中町に移されているんです。
それまでは今よりももうちょっと海寄りにあったそうですね。
その時から初午大祭は行われていて、厄年の方で賑わっていたという記録が残っているので、少なくとも400年ほど前から続いているようです。
毎年3月2日から開催される初午大祭はとても賑わいます。
周辺は交通規制がされ、露店もたくさん出ます。
3月3日には、『宝恵駕籠行列』があり、たくさんの方が見に来て街全体が賑わいます。
松阪の三大祭にも上げられていますし、今年はちょうど週末にも当たるので、たくさんの方にお参りいただきたいですね。
『宝恵駕籠行列』は復活してから今年で10年目。
戦前から続いていた行列で、戦後の一時期までは続いていたのですが、その後、ずいぶん途絶えていました。
それを松阪の呉服商組合の方々が中心になって、行列を復活させてくれました。
10年経って、みなさんにも知ってもらってきたと感じています。

松阪といえば呉服屋が多く、厄年の19歳の女性は振り袖でお参りされる方が多いので、そういった意味でも、街が着物で賑わいますよ。

 

おこしはねじりおこしが発祥ともいわれている

初午のおみやげとして知られる『猿はじき』、戦前の写真にも写っているので、昔からお祭りになると売られていたようです。
今でもお参りに来られると猿はじきを買ってくれる人がいますが、近年は作る人がだんだん減っているため、昔に比べるとお店に出す人も少なくなっていますね。
昔は農閑期に、農家の人たちが作っていたのですが、そういう人も少なくなっていますので・・・。
観光協会も仕入先を探して、ずいぶん悩んでいるようです。

そういえば初午名物の『ねじりおこし』も、いつごろからあったのかわかっていません。
『雷おこし』も松阪のねじりおこしからできたと聞いたことがありますので、かなり古くからあると思います。

 

年の風習が、年月を経ても守られている

『岡寺山継松寺』は、聖武天皇の勅願によって、行基が作ったお寺と言われています。
その聖武天皇が42歳の厄年のときに、ここの御本尊を宮中にお祀りして供養したということから、厄除けの観音さんとして、厄年のお参りに来ていただくようになりました。
それからずいぶん年月が経ちましたが、厄年というのはみなさんが大切にされてきた行事として、ありがたいことに風習として残っています。
あまり喜ばれない人もいますが、自分の人生を考え直す上でも、節目の年として大切にしてもらえると良いですね。
60歳の還暦は、暦が一回りするということで、生まれ変わる。
赤いものを身に着けてお参りされる方もいますが、それはおそらく『生まれ変わる』ということで、赤ちゃんの赤いものを、ということだと思います。
還暦やその後の古希、喜寿などの節目にお参りされる方も多いです。
節目を大切にするということは、自分の人生を大切にするのと同じこと。
節目のお参りは、ぜひ大切にしてください。

こちらのお寺の大きな行事は初午大祭だけですが、小さな行事としては、夏に一晩中お参りすることができる四萬六千日などもあります。
1日や18日は御本尊の縁日ということでお参りに来られる方もいます。
また、5月や10月の18日には『観音市』を開催していまして、境内にいろいろなお店が出て賑わったりすることもあります。

ちなみに『継松寺』という寺号は、かつて奈良時代に大洪水のために流失した諸堂を再建したという『継松法師』の名前にちなんでつけられたものとのこと。
古くから松阪の地で多くの人が訪れている場所です。