三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2018年3月18日

400年以上の歴史を持つといわれる日本独自の芸術品=根付、伊勢根付職人である梶浦明日香さん。
根付とは、ポケットのない着物に、印籠や煙草入れなどを、帯に下げて携帯するため、紐の先に結わえた、小さな彫刻品。
海外では漆・浮世絵・刀とともに日本の四大芸術の一つとして紹介されています!
梶浦明日香さんは、元々はテレビキャスター。職人を紹介する番組取材を通じて、伊勢根付をつくる中川忠峰さんと出会い、感銘を受け、弟子入り。
さらに三重県の伝統工芸を担う若手職人グループ『常若』を立ち上げました!

根付職人・梶浦明日香さん。
元テレビのキャスター。
伝統工芸の取材を重ねる中で、この世界の危機的現状を知り、自ら職人へと転身しました。

「根付は作る人と使う人が一緒ん育てていくものなんです。使った人とつくる使えば使うほど『なれ』と言って、摩耗して成長していくもの。
伝統工芸の世界を変えようなんて、そんな大きいことは考えてませんが、はじめてみたら何か気付くことや何か新しい発見があるかもしれないぐらいの気軽な気持ちではじめたのが最初です。
でも作っていくうちどんどん、伝統工芸を守ることの必要性と使命感を感じ、それでがんばってきました」

 

漆、浮世絵、刀、そして根付。
大英博物館やボストン美術館などで、日本の四大芸術のひとつとして紹介されています。
根付とは、ポケットのない着物に、印籠や煙草入れなどを、帯に下げて携帯するため、紐の先に結わえた、小さな彫刻品。
400年以上の歴史を持つといわれる日本独自の芸術品です。

キャスターから根付職人への転身にまったく悔いはなく、とても幸せな暮らしをしているという梶浦さん。
その工房を訪ねてみました。

 

工房があるのは伊勢市上地町の『伊勢根付彫刻館』。
こちらは三重を代表する根付職人の中川忠峰さんの工房であり、その作品が展示されています。

 

こちらが梶浦さんの師匠、中川さん。
梶浦さんはいつも中川さんと並んで作業を行っています。

「根付職人として40年になります。
これ大の大人が手のひらで、1ヶ月も2ヶ月もかかって作品を作るわけです。
とっても細かいのですが、もともと細かい手仕事が好きで一番向いていたので、長く続けてこられたのだと思います」

と、中川さん。

梶浦さんにとって中川さんは・・・?

「人として本当に尊敬できる師匠です。
技ももちろんですが、師匠の作品はあたたかみがあって、人柄がにじみ出ているんです。
しかもいろいろな人から慕われていて、人柄も根付の技術も、自分もこうなりたいなと思う師匠です」

 

そんな中川さんの代表作、『ダリア』と『丸ねずみ』。
もちろん図面はありません。
『丸ねずみ』は伊勢根付の代表的なデザインで、子孫繁栄や大黒様の使いといわれ重宝されているそう。
伊勢の名工が江戸時代に作ったデザインが今に受け継がれているのです。

 

伊勢根付に欠かせないのが、こちらのツゲの木。
伊勢神宮の奥の院と呼ばれる朝熊山でとれたものだけを使用。
成長が遅いため、年輪が細かくつまっています。
それは他の地域のツゲと比べると、その差は歴然。

 

梶浦さんが今、作っているのは『たけのこ』。
1つ作るのに2〜3週間かかるそうです。
ここまででおよそ2週間。
まだまだかかるそうですよ。

 

最初の状態は普通の木です。
ここから丸みを出して、たけのこの形に近づけていきます。
始めた当初は丸みを出すのが難しく、とても苦労したそうです。

「『見て盗め』というのが基本なので、師匠は違うとわかっていてもあえて何も言いません。
こちらが聞けばとても丁寧に教えてくれるんですが、疑問を持って聞いてくるまで、ちゃんと待っててくれるんですよね」

と、梶浦さん。

 

そんな梶浦さんが代表となり2012年に立ち上げたのが、三重県を中心に活動している伝統工芸を担う若手職人6人によるグループ『常若』。

 

現在、四日市市の『あさけプラザ』にて、伊勢根付、伊勢型紙、一刀彫など、三重の伝統工芸を受け継ぐ6人の作品が展示。
力を合わせ、互いに刺激を与えあい、三重の伝統工芸をさらに発展させていこうとがんばっています。

 

『常若』メンバーの一人、『伊勢一刀彫』の太田結衣さん。

「自分以外に女性の職人さんがいるということに驚きまして。
そういった方たちの話を聞いて、一緒に交流を持って、職人活動を続けていけたらなあと思い、『常若』に参加しました。

 

同じくメンバーの一人、『漆芸』の村上麻紗子さん。

「伝統工芸だからといって昔のものを同じようにずっと繰り返すのではなくて、進化させていかないとつながっていかないのかなという風に感じています」

手のひらのしあわせ。
職人がつくり、使う人が育てる根付。
手から手へ。
その技術と魅力を次世代へとつなぎます。

「根付職人としては、持って下さった方がちょっと嬉しくなっちゃうような根付をつくっていきたい。
ちょっと自慢できるような根付をつくっていきたいという思いがあります。
その上で、世界中から日本の伝統工芸の良さを知ってもらえる活動を『常若』としても個人としてもしていきたいですね。
師匠の技術をしっかり受け継ぎ、師匠の歳になった時に、同じくらいの技術を持った職人にるのが目標です」

と梶浦さん。

日本の四大芸術のひとつ、根付の魅力を感じてみませんか。
伊勢根付彫刻館、常若の展示については、こちらをご覧ください。

 

伊勢根付彫刻館
住所 伊勢市上地町1358-1
電話 0596-25-5988
※要予約