三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2018年3月25日

南伊勢町在住の元・小学校教諭、中世古珠美さんが主宰する児童人形劇団『ぽんぽこ劇団』! 中世古さんの長女が小学校に入学した昭和61年に、自宅である正泉寺で座禅や読み聞かせ、英会話などを教える寺子屋スクールをスタートさせたのが始まり。 その後、人形劇団に形を変え、週に1回の放課後の練習と、保育園や老人施設などへの公演等を行ってきました! 脚本は中世古さん作のオリジナルで、人形は手作り。 昨年、青少年の文化の普及に貢献した団体等に贈られる「久留島武彦文化賞」を受賞しました!

度会郡南伊勢町、五ヶ所城址のすぐ近くにあるお寺『正泉寺』。 春が来ると毎年咲き誇る藤棚が有名で、大勢の見物客で賑わうお寺です。

 

こちらの本堂で、地元の小学生たちが人形劇の練習をしていました。 児童人形劇団『ほんぽこ劇団』のみなさん。 『ぽんぽこ劇団』は、なんと、結成から32年の歴史を持ち、現在メンバーは地元の小学2年生から5年生までの8名。 毎週木曜日、こうして放課後にお寺に集まって練習をしています。

 

子どもたちに稽古をつけていたのは、『ぽんぽこ劇団』代表の中世古珠美さん。 「1986年、長女の小学校入学を機に地域の交流を深めようと地元の子どもたちを集めて寺子屋スクールを始めました。 座禅や読み聞かせ、英会話等を行い、その一つとして指人形遊びを始めたところ、とても反応が良かったんですね。 普段あまり大きな声を出さない子たちがきゃあきゃあ遊んでいるのを見て、人形劇団を作ろうと思いました」 中世古さんの3人の娘が卒業した後も人形劇団は続き、多い時では50名の団員が所属していました。

 

人形を操り、演じてきたのは地元の小学生たちですが、台本は中世古さんのオリジナル。 32年の間に、なんと34本のお話が生み出されました。 それらは、保育園や老人施設、県の人形劇フェスティバル等で上演。

 

その長きにわたる活動が認められ、昨年11月には、日本のアンデルセンと呼ばれた童話作家、久留島武彦(くるしま・たけひこ)を記念してつくられた『久留島武彦文化賞』の団体賞を受賞。 三重を代表する児童人形劇団へと成長しました。

 

そしてもうひとつ驚くべきことが。 台本だけでなく、これまで舞台で使ってきた人形も全て、中世古さんによる手作りなんです! ここにある人形は作った数の半分ほど。物語の登場人物のキャラクターが顔に出るように心がけているとのこと。

 

初代は後ろから手を入れて指に入れて演じるタイプの人形でしたが、子どもの手は小さく、長時間演じていると疲れてしまい、人形が下を向いてしまうため、2代目からは後ろで持つタイプに変化しました。

 

中世古さんの思い入れのある人形がこちら。 「泥棒の主人公なんですけども、いつも悪いことしてハラハラしているのでビックリすると『ドッキンドキドキドッキン』というのが口癖。 この人形を演じた子が、社会人になってもビックリすると『ドッキンドキドキドッキン』って言うらしいんですよ(笑)』 32年の思い出がぎゅっと詰まった人形の数々・・・。 最初の頃、人形劇に参加した子どもたちは、もうそのお父さんお母さんの年頃になっています。

 

人形劇の練習を行う木曜日の午後4時。 学校帰りの子どもたちがお寺にやってきました。 早く来た子は本堂で勉強をしたり、境内で遊んだりしているそうです。 子どもたちで行う、練習の準備も手慣れた様子です。

 

この日、練習していたのは、『ぽんぽこ劇団』の代表作のひとつ、『はらぺこポスト』。 タイトル通り、腹ペコのポストが森の動物たちが出した手紙を食べてしまって巻き起こす騒動記。 楽しい物語の中に、手紙の大切さが伝わるようになっています。 「タヌキさんが葉書を入れるのだから、ポストまでタヌキさんを持っていって」 「パンダさんをぶら下げて持ったら可愛そうでしょ。 ちゃんと身体を起こしてあげて」 中世古さんの指導はやや厳しく見えますが、これも愛情と信頼関係があってこそ。 こうして何度も練習を積み重ねて、作品に息を吹き込んでいくのです。

 

『ぽんぽこ劇団』OBの高山裕斗さんは、現在18歳。 高山さんは人形劇団の活動をきっかけに音響に興味を持ち、2年前からは音響担当として公演を手伝っています。 「小学校1年生から6年生まで『ぽんぽこ劇団』にいました。 みんな和気藹々と練習するのがとても楽しくて、一番思い出に残っています。 小学生の生活の中で一番時間をかけていましたね。 人前に立ったり、セリフを覚えたりすることで、あまり緊張しなくなりました」

 

人形劇の練習はお菓子付き? そうではなく、これはお迎えに来た保護者からの差し入れでした。 「発表会のたびに観に行っています。 毎回、子どもたちの成長を感じられてうれしいですね」 と、活動を見守る家族の方。 「これだけ少子化が進んで、子どもの声を聴くことができない地域もあります。 その中で継続してこられたのは、とてもありがたいことだと思います。 上級生と一緒に何か作っていくことで、大人になってから『良い体験をしたな』という思い出が残ってくれるといいですね」 と、中世古さん。
『ぽんぽこ劇団』がんばるぞ! また会う時までさようなら♪ポン♪