今年度のおしまいに訪れてくれたお客様は、紀北町のあるデザイン会社『ディーグリーン』の東城(ひがしじょう)さん。
いつもおもしろいお話しを持ってきてくれます。
イギリスに留学して、都会で働いて、そして地元に帰ってきてもう10数年。
ディーグリーンを起こして、今年で11年目になるそうです。
自分の仕事に向かうスタイルも変わってきたかなって東さん。
若いスタッフとともに、いろんなことにチャレンジをしています。
そして、アシスタントをつとめてくれた伊東将志さんは今日でこの番組卒業です。
今までありがとうございました。
歩
いていたら何気なく海藻をもらう
ちょっと前なんですけど、道を歩いていたらおばちゃんが声をかけてきて、「にいちゃん、ヒロメいらんか?」って、ゴミ袋いっぱいのヒロメを渡してきて。
鈴木 知っている人なんですか?
近所の人。
でも話したことないんですよ。
すごい地域ですよね(笑)。
会
社を立ち上げて10年、よくここまでやってきたなと思う
10年前というと、こっちに帰ってきてすぐくらい。
会社を立ち上げたりしていた頃ですね。
新進気鋭のUターンの若手IT企業社長、みたいな。
なにもんだこいつは、みたいなところからのスタートでした。
今では立派なおっさんになってね。
伊東 田舎でデザインやっているという面白さというか。
そうですね、最初はスタッフ2人ではじめた会社だったので、今は7人いますが、10年続くのかなと。
インターンシップも受け入れたりとか・・・それこそ伊東さんにもお世話になって。
時代の移り変わりというか、新しいものが好きなんで、新しいものをどんどん取り入れていこうというコンセプトでもあるので・・・いろいろな人にお世話になって、今年で11年目になります。
伊東 もちろん、続けることもそうですが、11年続いたことを振り返ってみると・・・?
いやあ、よく続いたな、って感じですね!
仕事なんで、生活の面もそうですが、結婚したり子どもが増えたり、スタッフが増えたり、お金の面で困ったこともあったので、よく続いたなと思いますね。
そもそも来た当初は「デザインてなんやねん」というところからスタートしたので。
伊東 田舎は特に、そういうところにお金は出さないという印象がありますからね。
そういう意味では、本当にみなさんにお世話になった気がします。
鈴木 最初のときって、ちょうどお店がみんなホームページを持たないと、という時代でしたね。
そうですね、みんな持とう持とうみたいな。
ただ、このあたりでは格安で作ってもらっているところもけっこうありました。
僕はそもそも都会の値段で出したんで、高かったんですよね。
そういう意味で、田舎の常識を知らない自分がいたし、今は逆に常識を知りすぎて、尻込みしてしまっている部分もあるかもしれないです。
まあ、そのあたりは勉強させてもらいました。
10年経って、理解もされ、そのおかげでスタッフも増やすことができたのかな、と思います。
帰
ってきたい人からの相談が多い
僕はどちらかと言うと、出ていきたい人よりも、帰って来たい人たちの相談が多いですね。
帰ってきたいという子には、積極的に帰ってくるよう勧めます。
僕たちのような小さなビジネスでも、生まれれば面白いだろうし、何より若い子がいると、町に活気が生まれますよね。
伊東 そうですよね。
帰ってくればいいのに、って思いますよね。
四の五の言わず、そんなに悩むんならって。
不思議ですよね。
伊東 でも10年前に比べて、増えてきたと思いません?
しますね。
僕らの年代が一番難しいのは管理職などが近くなってきて、お給料がいいんですよね。
生活面とかも豊かになっているので、帰ってきたいんだけど、賃金に不安があるとの相談をよく受けます。
でも、そのあたりを一緒にするな!という話はよくします。
伊東 確かにね。
鈴木 結婚している人で、配偶者が都会出身だったりすると、田舎にはカルチャーが足りないという人がいたり・・・。
文化って面白いですよね。
各々小さな町で、ぜんぜん違う文化があったり。
おまつりなどもぜんぜん違うものだったり。
伊東 東京や大阪にいても、何のためにやってんやろ、とか考える人、最近多いじゃないですか。
でも文化で言うと、最近少なくなりましたが、家を戸締まりしないという話があって。
この辺てみんな戸締まりしないんですよね。
だから知らないおっちゃんが家の中でビールを飲んでいた、みたいな(笑)。
正確に言うと、知ってはいるんですけど。
勝手に冷蔵庫開けてビール飲んでいたみたいな。
田舎あるあるですよね。
都会から来た人は、これカルチャーショックですね。
伊東 まだちょっと距離感ありますね(笑)。
し
んどいけど楽しんでやっている
僕らが携わっている広告業というかデザイン業は、喜ばれることがあまりないんですよ。
成功したところしか喜んでくれず、失敗すると批判しか来ません。
お客様の顔があまり見えない仕事をしていたのですが、たまたまご縁があって、魚の離乳食を作らないかと提案があり、うちがやりましょうと『モグック』をはじめました。
一番いいなと感じたのは、お客様の声がダイレクトに届くこと。
また、自分たちがいいなと思ってやっていることは共感を得るんだな、と実感しました。
伊東 そういう時代なんですよ。
働くとかお金を稼ぐとか・・・みんな豊かで、欲しいものがあまりないじゃないですか。
自分の費やした何時間が、なんのためなのかを考えるというか、時間の使い方を有意義なものにしたいという年代が、とても増えてきているように感じます。
田舎だからこそ、それに近いものがたくさんある気がします。
まさにその通りですよね。
僕はデザイン業ですが、当初は批判を浴びたました。
『モグック』もそうで、そんな値段では売れないよとか言われました。
でもやってみて、ダメだったらやめればいいじゃんという流れを作ることが大事なのかなと。
もっと若い人もチャレンジしてくれれば、おもしろい技術が生まれるんじゃないのかなあという気がします。
そういうことができる環境の町にしていきたいですね。
チャレンジしたり、それを応援したり。
伊東 僕も、呼ばれて話をしていても、お酒を飲んで話していても、楽しそうでいいですね、と言われます。
けっこうしんどいことも多いんですけどね。
多いですよね。
8対2くらいでしんどいことのほうが多いです。
伊東 でも誰かに自己紹介したり、自分のやっていることを説明すると、僕が笑っているんですって。
先日、城くんと一緒に岩手に行って、城くんが事業の説明をしている時は、やっぱり笑っているんですよ。
これはやっぱりしんどいのも含めて楽しんでいるんだなと思いました。
やっぱり仕事をいかに楽しんでするか・・・趣味にしちゃダメと言うけど、趣味ぐらい没頭できることってないでしょ。
伊東 あと、誰かを陥れるような仕事ではないですからね。
そう。
だからwin win winの関係で、三角形がみんなwinになっていくプロジェクトが大事なんじゃないかなと思いますね。
い
ろいろな世代が交わって作っている『燈籠まつり』
紀北町での人間関係でおもしろいなと思ったのが『燈籠まつり』。
今、60代70代の人たちがはじめて、30年たちます。
僕も参加して12〜3年になりますが、そういう人たちと接する機会が多いんですよ。
地域で集まって議論できる場所ってなかなかないので、いい会というか、まつりですね。
伊東 多様性というか。
普通の生活をしていたら、出会う機会がないですからね。
70代や80代の人たちとお酒を飲んだりすることもね。
『おまつりをする』という共通のゴールがあって、それをするために議論するのは意外とおもしろいですね。
伊東 その話、5回目やとか(笑)。
ありますね(笑)。
最近は「知っとる!」って言います。
伊東 でも知らない人がいたら、「あの話、してあげてくださいよ」みたいな。
こういう場は、自分の幅を広げて、豊かにしてくれますね。
旅に連れて行ってもらったりするんですよ。
僕が一番年下で荷物持ち。
面倒だなと思いながら(笑)。
そういう人たちって、みんなワガママなんですよ。
決まり事がないんで、すごい大変なんですけど。
でも旅に一緒に行くと、意外に知らないことをちゃんと知っているんですよね。
一番最初に興した人たちが集まっているので、話を聞いているとおもしろいですね。
伊東 やっぱりその年代年代の人たちが決断して、町を作ってきたわけですからね。
歴史館などを見ているととてもおもしろいですね。
『燈籠まつり』の30周年を記念して、30周年誌を作ったのですが、資料を集めていたら、昭和初期からはじめて40年代のとき、人口流出で若者がいなくなり、一時中止と書いてあるんですよ。
要は漁師さんがいなくなったとかなんでしょうけど、やっていることって今とほぼ一緒で、時代は巡っているんだなという気がしました。
今は特に人口が減っていますが、考え方は一緒なんだなって。
そういうのも一度見直して、町を見るとおもしろいんじゃないかなあ。
もう、尾鷲とか紀北とか言っている場合じゃないですね。
伊東 老いも若きも力を合わせて。
人
が出会い、間にある線を消してくれる
伊東 県内のいろいろな人と出逢えてよかったなと思います。
線を消してくれる感覚がありますね。
例えばビジネスでもそうですけど、関係ないですね。
紀北だけでやっていても仕方なくて、それこそ尾鷲でやってよかった部分もあるし、また別の地域でやったほうがいい部分もあるし・・・紀北だからとか地域にこだわったやり方はしないほうが良いですね。
一昨日も熊野の方でお話があったりしましたしね。
地域と地域の枠を超えて、みんながよかったって思えることがどんどん増えていくことを期待しています。