三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2018年4月8日

『三重県漁協女性部連合会』は、三重県の漁協の組合員やその家族である女性を中心に構成する組織で、7つの部があり、部員数はおよそ1800名!
昨年設立60周年を迎えました!
今回はあおさのり漁を行う前川さつみさん一家に密着。
女性としてあおさのり漁を支える前川さんの姿や、家族の皆さんを通じて、三重の漁業を支える女性の姿をお伝えします!

松阪市の松ヶ崎漁港。
黒海苔、あおさ海苔が主要産物となっているこの港で、出漁の準備をしている人が前川さつみさん。
海で働くお母ちゃんです。

「アオサノリ漁をしています。
ちょっとまだ寒いですね」

さつみさんはご主人と息子さんの家族3人でアオサ漁を続けています。

 

沖にずらりと並ぶ杭は、ノリの養殖網を張るもの。
波が静かな遠浅な海、そして栄養豊かな川の水がノリ養殖には欠かせません。
実は三重県はアオサノリの生産量が全国の約70%近くをしめ、松阪市は県内で2番目の生産量を誇るんです。

 

3月のまだ冷たい海へ入ったさつみさんがはじめたのは、ノリの養殖網をあげる作業。
大変な重労働です。
こうして網を杭の途中まであげて、収穫をしやすくします。
そして登場したのが、ノリの収穫専用の船。
網の下をくぐりながら、どんどんノリを収穫していきます。

「今年はとても不作でした。
天気も悪いし、昨年10月に来た、2回の台風でやられてしまって」

と、さつみさん。

自然の恵みを受ける仕事は、自然との戦いでもあります。
海で働き、海で生きる。
海で活躍する女性と聞くと、海女さんが思い浮かぶ人が多いかもしれません。
しかし、三重県の漁業は、たくさんの女性の力に支えられているんです!

 

漁業を支える女性たちの『三重県漁協女性部連合会』は、部員はおよそ1700人。
昨年で設立60年を迎えた三重県漁協女性部連合会の総会が、伊勢市で開催されました。

 

女性部の活躍は海だけに留まりません。
地元で水揚げされた魚をつかっての料理講習会、水産イベントでの加工品の販売など、もっと魚をたべてもらおうという魚食推進活動にも積極的に取り組んできました。
さらに、海の環境保全活動なども行っています。

 

総会のあとは神宮奉納。
それぞれの港であがった海産物を、女性部のみなさんが、今後の豊漁、安全祈願をこめて奉納します。

 

「女性部高齢化が進んでいるのは確かですね。若い奥さんもいますが、パートに出たりと、漁業から離れていく人も多いです。
そのために地元での漁業関係の仕事を増やし、地元で雇用できるような、そして女性部にしかできないようなことを増やしていきたいと思っています」

と、『三重県漁協女性部連合会』の会長、小寺功子さん。

「漁業という男性社会の中で、唯一の女性の団体ですし、女性部の人に会うと本当にパワーをもらえるというか圧倒されるというか、本当に元気な団体です。
女性のこの明るさ、元気があってはじめて漁村も元気になると思うので、がんばってほしいですね」

と、『三重県漁業協同組合連合会』の会長、湯浅雅人さん。

 

さて一方、阪の松ヶ崎漁港に、前川さん一家の船が帰ってきました。
先ほど収穫されたばかりのアオサの水揚げです。

 

そのアオサは、まずは海水で洗浄。
ゴミを徹底的に取り除きます。

 

そのあと、港のすぐ近くにある前川さんの自宅へと移動。
自宅に併設された工場で作業を続けます。
二回目の洗浄は真水で行い、その後、専用の大きな脱水機にかけます。
朝、海に入ってから、ずっと働き通し。
本当に大変な仕事です。
いくつもの工程を経て、ようやく店頭にならぶアオサノリっぽくなってきました。

 

仕上げは、畳1枚ほどの網に広げたアオサノリを、機械で乾燥。
待つこと3時間。
こうして、朝、海へ出てから7時間をかけて、香りと滋味が凝縮されたアオサノリが商品になりました。

 

仕事を終えて、ホッと一息の時間。
しかしさつみさんは、このわずかな休憩のあとも家事が待っています。

「4軒くらい隣から嫁いできて41年になります。
いきなり夜中まで仕事するのに大変というよりもしなきゃならないと思いました。実家が近かったため、子どもを預かってもらうことができ、その間は仕事に専念できたのも助かりました。
つらいと思ったことはありません。
そんなことを思う暇もありませんでした。
人に負けたくないという気持ちでやってきたので、人生を振り返っても、良かったと思えます。
人に気づかわなくても良い、自分が大将の仕事だから良かったのかもしれませんね(笑)」

と、さつみさん。
こんな素敵なお母さんが、三重の漁業を支えているんですね。

 

「妻は、人に負けたくないという根性があります。
海に行ったら汚れるし、それをすぐに着替えて、洗濯や炊事などの家事を一切引き受けてくれて、女の人は大変だと思いました」

「母は網を上げるのがとにかく早いです。
周りの人も早いけど、うちの親が一番早いと思います。
自分も最近一緒くらいになってきたと思っても、下駄を履いた時の母はとても早くて引き離されます。
やっぱり、女性として家事とか育児とかもして、合間合間の時間をうまく使うというのですごく早いのかなあと思いますね」

と夫の好司さんと、息子の良太さん。

「漁は夫婦丸でするものなので、男の人は男の人の仕事、女の人は女の仕事、支え合ってしなければならないので、やっぱり女の人必要と思います」

と、さつみさん。

漁業の衰退、部員の減少、高齢化。
そんな厳しい状況の中、女性部のみなさんは、家の暮らしを守り、海の仕事を支えているのです。