FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年1月21日放送

今回のお客様は、生まれも育ちも紀北町矢口浦の、西村友一さん。
2年前から地元で、青さのりの養殖をはじめました。

西村さんが小学生のときは30軒ほどの家が青さのりの養殖をしていたそうですが、現在は8軒。
先輩の親方たちに可愛がられながら、今は、ひたすらに青さのりと向き合っています。

■地元の深いところに目を向けたら『青さのり』の養殖があった

僕は、生まれも育ちも紀北町の矢口浦。
20歳で名古屋に出て、27歳で矢口浦に帰って来ました。
とは言っても、それから3年間…30歳までは、普通にサラリーマンをしていたんです。
30歳を機に、「自分で何かをはじめたい」という思いが芽生えて。
でも最初は、仕事をさがす中で『海』っていう発想はありませんでしたね。
どこかの会社に入るとか、漠然とそんな風に考えていました。

そんな時、たまたま自分が住んでいる『矢口浦』という地域…紀北町の中でも田舎の深い部分…に目を向けてみたんです。
そうしたら、青さのりの養殖をしている人たちに出会って。
自分が小さい頃からやっている業者さんが、今もまだ続けている事実を知りました。
しかし、青さのり養殖業者は後継者不足なんですね。
かつては30軒近くあった業者が10軒以下に減ってしまっていて。
養殖業者さんの話を聞いているうちに、「やってみないか」、と声をかけられたんです。

青さは普段から当たり前に食べていましたけど、仕事としてとらえると、正直、ちょっと考えちゃいましたね。
シーズンは冬だから寒いんじゃないかとか、素手で取るんじゃないのか…とか、勝手な想像で。
でも、現役の青さ養殖の方から色々話を聞いたり、教えてもらっている中で、ある程度近代化になっているという話を聞いて。
じゃあやってみようかな、と、飛び込みました。


■杭打ちができて一人前!

青さの養殖は、9月がシーズンのスタートです。
暑さのピークは過ぎているものの、海の上は太陽の照り返しでけっこう暑いんですよ。
でも、冬の寒さもなかなか大変…基本は冬の仕事ですから。
どっちも大変ですね(笑)

9月頭に養殖網に種付けをし、網を24枚重ねて種場につけて置きます。
これを沖出し(支柱となる杭を打ち、養殖網を張ること)するための杭打ちをするんですが、10月いっぱいまでには終わらせなくちゃならない。
青さ養殖の仕事は杭打ちが半分と言うくらい、杭打ちは重要です。
海の上から、深いところだと7~8メートルくらいの杭を打つんですから、かなり体力が要ります。
しかも、陸だと踏ん張りがきくけど、海の上だとふんばった方向に身体が流れて行ってしまう。
だからこそ、杭打ちができて一人前と言われるんですよ。

杭は漁業の関係上、シーズンが終わったら外さなくてはならないので、毎年打って外すの繰り返しです。
今シーズンは、1500本くらい打ちました(笑)


■今年の青さは光っている!

僕が言うのも何なんですが、今年の青さの光具合は、去年と比べて違いますね!
自分でも、2年目にしてはイケてるな、と(笑)
綺麗だし、ふんわり具合も丁度良いです。
手でちょっと潰したらすぐ戻る、クッションみたいなふんわり感が良いと言われているんです。ちょっと上手にできているかな、と。
親方が聞いていたら、何て言われるか知らんけど(笑)

青さはふわふわなのが良いんです。
収穫した後に水洗をして、その後、手で砕ける状態まで乾燥します。
余熱を抜いた後、もう一度湿気を与えて、ふわふわに戻す。
それから、感触を確かめながら出荷します。
なので、色と香りと『戻し具合』が、一つのポイントとなるわけです。

9月から育てはじめた青さは、1月から4月までが摘み取り時期。
その中で、計4回収穫します。
やはり一番美味しいのは一番摘み。
その後二度三度と繰り返すうちに、どうしても少しずつ種が弱くなっていくので、色も香りもやや薄くなってしまいますね。
一番摘みは水洗いをして、『青さのり』としての商品に。
二番摘み以降は塩洗いして、佃煮や加工用となります。
これが大体の流れですが、もちろん出来次第では、二番摘みでも水洗いになることもあります。
その時の状況に応じて、ですね。


■自分が動くことで、みんなに地域への興味をもってほしい!

僕が生まれ育った矢口浦で、男の同級生は7人。
だからみんな顔馴染みだし、親同士も知っているし。
自分がこういうことを始めても「○○さんのとこの子が、こんなことをはじめたわ」的なイメージ(笑)
同級生もこの地域では多めの3人が残っていて、みんな応援してくれています。

仕事中は、カッパやヤッケ姿で顔が見えないので、町で会っても気づいてくれないのは寂しいですが、こういう世界に踏み込んだっていう心意気を、同級生たちも買ってくれているのが、嬉しいです。
ただ、「漁業顔じゃない」と言われるのと、「ヤッケを着ていると10歳以上年をとって見える」と彼女から言われるのが悩みです(笑)
でもまあ、仕事なんで。
とはいえ、やっぱり気にもなるんで、ド派手な『勝負ガッパ』を買ってみたり(笑)
あとは、海での仕事なので、目立つ色を意識して買ったりしています、赤とか。
僕が(怠けてないで)海に出ているというアピールも込めて(笑)

アピールは存在だけじゃなくて。
僕が色々することによって、地元の人に、少しでも地元のことを関心を持って欲しい。
こういう仕事があることとか。
僕は今まで、こんなに長い間、矢口浦に暮らしてきたのに、町外の人に対して、何をアピールしたら良いのか分からなかったんです。
最近でこそ、矢口浦という地域にちゃんと眼を向けるようになって、ちょっとずつわかってきましたけど。
自分の住んでいる地域を何も知らないということは、意識が低いな、と思うんです。
僕の仕事を、同級生や知り合いにも知ってもらい広めてもらう…PRとしても役立てて欲しいですね。

『青さのり養殖』自体は、親方たちの経験や知識を吸収するのが目標。
今、農業や漁業が衰退して行っていると言われているけど、だからこそ今がチャンスだと思うんです。
失敗を恐れることなくチャレンジができるじゃないですか。
できることは、これからどんどんチャレンジしていくつもりです!