FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年7月7日放送

今回のお客様は、四日市市『三重の糸 大矢知手延素麺株式会社』の代表大塚晃さん。
これからの季節が、一番多く消費されるときですが素麺作りの最盛期は冬。
鈴鹿おろしの冷たい風が吹くと素麺作りが始まります。
冬の間、熟成された素麺は高温多湿の梅雨の季節を超し、ゆで延びしにくい麺に変わります。
製造してから2年経った古物(ひねもの)を好む人も多く、手間暇と時間をかけて作られています。
長きに渡り、守り続けられている技法。
その歴史は江戸時代までさかのぼります。

至から作り始めた素麺がおいしく熟成されていく

5月から8月のお盆までが素麺の最盛期です。
みなさんが食べていただくのに一番美味しい季節だと思います。
12月24日から2月の末くらいに作られる素麺が、最も美味しいと言われています。
それを半年ぐらい寝かして旨味を出してから出荷するのが現状となっています。
冬至から作りはじめた素麺が寒さの中で熟成されていくので、一番美味しいと言われています。
もちろん生産は11月くらいから始める場合もありますし、1年中作るところもありますが、うちは一番美味しいとされている3月くらいまでに生産を終わるようにしています。
熟成させることによって、旨味がどんどん増してくるので美味しくなりますし、素麺は寝かせれば寝かせるほど美味しいと言われています。
少なくとも半年以上熟成させるのが、大矢知手延素麺の方針です。

 

侶が訪れ素麺作りを教えたのが200年ほど前

歴史をたどっていくと200年くらい前からですが、実際には約50年ほど前で、昭和20年頃にはじめたと聞いています。
組合長は私で4代目。
大矢知で麺作りをはじめたというのは、いろいろな文献に残っているのですが、どれが正しいとはっきり言えない部分があります。
もともと大矢知は農業が盛んなところで美味しい『赤柄小麦』が作られていました。
そこに僧侶が訪れたときに、素麺作りを教えたと言われています。
基本的には合間に農期の合間に作っていたのですが、需要があり年中素麺作りができないかと、素麺、ひやむぎ、うどんなどを作るようになり、麺作りが盛んになったと聞いています。

 

延べ素麺はねじって引き延ばして細い麺を作る

素麺は、小麦、塩、水、そして油のシンプルな原料で作られ、その日の天気や湿度に応じて、配合が変わります。
手延素麺の場合は、原料の仕込みからこねて板状に伸ばして、油で切れないようにしてどんどん伸ばしていきます。
太さ1.3mm以下が素麺の基準です。
その中で旨味成分が熟成していくように工夫しながら作業をしています。
朝の2〜3時から、一日半を掛けるのが素麺の工程。
細くないといけないのが素麺なので、うちとしては1.1〜1.2から1.3mm。
このあたりが素麺を作る人の技術だと思っています。

 

域によって好まれる太さが違う

ひやむぎは1.3〜1.7mmと言われています。
それ以上だと、うどんという規格になりますね。
素麺ははやく茹で上がるので喉越しは良いですが、麺の美味しさはうどんやひやむぎのほうということで、このへんでいうと名古屋はひやむぎ文化が多いですね。
うどんは全国的ですが、どちらかというと東日本がうどん、ラーメン文化、西日本が素麺文化と言われています。
四国のさぬきうどんもありますがね。
僕が子どもの頃は風を引いたりしたときに素麺を食べた覚えがあります。
母が作ってくれたにゅうめんは、小さな頃の大きな思い出です。
夏はごく普通に、冷やし素麺として、単純に食べるというのが自分的には好きです。
最近ではボンゴレ風にしてみたり、パスタのように食べるなどの開発をしているところもありますが、私は普通に食べる方法しか知らないので、みなさんにはいろいろな食べ方をしてほしいと思います。

大矢知だけが繁栄すればよいということではなく、素麺という文化を残していきたいので、いろいろな産地の素麺も食べてほしいと思います。