FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年7月21日放送

今回は、亀山市関町にある『桶重』の服部健さんがお客様です。
桶重は、関宿の街道沿いにある桶屋さん。
創業は明治15年、服部さんは4代目です。
1つ1つ昔ながらの工程で桶を作っています。
昭和の時代までは、桶がいたるところで使われていました。

は生活に密着していたライフ商品

桶というのはライフ用品、いわゆる生活に密着した入れ物ということで、昔はもうすべて、木でできていました。
風呂桶、寿司桶、おひつ、水桶・・・すべて桶です。
今はそれに変わるプラスティックが出てきて、桶の需要が非常に少なくなりました。
でもまあ、うちは桶で生計を立てて苦しい時代もありましたが、残したという部分がすごいのではないかなと思います。
生活用品ということで、初代から三代目の時までは職人さんも非常に多くいて、桶の注文もたくさんありました。

 

によって作る桶の用途が違う

大きな餅屋さんから、毎年お餅を入れる桶の発注がたくさんあり、店がとても忙しくにぎやかでしたね。
餅を入れるのに木が適しているというのは、やはり急激に冷えてしまうと、餅が固くなって扱いにくくなってしまうから。
冷たいところに温かい餅を入れると、周りが固くなって芯が柔らかい状態になります。
そういういうことがないので、木の桶が使いやすかったんでしょうね。
味ご飯となどもおひつに入れるとべちゃつかずいいと思います。
桶の木の素材は、杉、サワラ、ネズコ、高野槙の4つを使います。
ひのきは使えないんです、水に弱く硬いので。
杉は味噌桶か漬物桶、それしか使いません。
高野槙というのは高野山に行くと生えていますが、桶風呂を作るか、湯盥や片手桶に使います。
ネズコというのは標高1000m以上にしか生えていません。
何に使うかというとこちらも味噌桶。
腐りにくいと言われていますが、なぜかはわからないんですね。
水を使う桶は、木に脂気があって水に強いサワラを使います。
最高級のものはサワラか高野槙かな。

 

の寿命は50年ほど 母の代から娘の代まで

自然の匂いはやはり、毎日嗅いでいても心地よい。
化学物質で作った匂いは、長いこと嗅いでいると飽きてくるというか嫌になってくると思います。
自然のい草は24時間寝ていても心地よい香りがするし、木も同じではないかな。
自然の匂いには、そういう利点がありますね。
最近の仕事としては、お寺さんなどで使っている桶が、今頃悪くなってくるんです。
その修理とか新品作成とか、けっこうお寺さんから依頼があります。
直せば使えるものもありますが、木なので最終的には腐って土になるか肥料になるかです。
でまた木を切ってきて、また桶を作って腐って土になって・・・その繰り返しですね。
それでも古い桶は悪いところを変えたりしていくらでも修理はできます。
桶の寿命・・・例えば寿司桶やおひつだと親が使って子供が使って、お終い。
だいたい50年と言われています。
タガが外れるといいますが、本当の桶は外れません。
寿司桶でも使い終わったら洗って太陽に干すこと。
湿気があると黒くなってカビが生えてきます。
干してもタガが落ちるということはありません。
グッと木を殺してあるもんで。
一回使ったらそれでいいのか、それとも何十年使えたらいいのか、それは個人の価値観の違いですね。

 

く使ってもらいたい

注文をいただいた際、おひつだったら何合入ったら良いのか、五合なのか三合なのか七合なのか、入る大きさを作るわけです。
寿司桶でも半桶(はんぎれ)でも、五合、七合、一升などの大きさ、それから深さなどを聞いてから作ります。
受注生産なので、作り置きはないんです。
一番良く売れるのは、昔からある花手桶かな。
こういう小さい花手桶を作っているのは、日本でもうちだけですね。
小さいので作りにくく手間がかかるんです。
そればかり作っているとモチベーションが保てないので、いろいろなものを作りたいです。
趣味の世界ではなく商売ですが、何百年と持つ物なので、大事に使ってほしいという思いがあります。
生花を入れて、季節と匂いを感じてもらって、飾ってくれると嬉しいですね。
せっかく桶を注文してもらうので、昔ながらの製法で作っています。
長く使ってもらいたいですね。