FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年8月11日放送

熊野灘に広がる美しい七里御浜と鬼ヶ城を舞台に繰り広げられる『熊野大花火大会』。
毎年8月17日、およそ1万発の花火が熊野の夜空を彩ります。
その起源となる初盆供養を行っていたのが熊野、『極楽寺』。
今回は、極楽寺の住職、足立知典さんがお客様です。

百年前から境内で花火を打ち上げ

当山、極楽寺で三百年ほど前から境内で花火を打ち上げていました。
当時は海の方まで芝生が続いていて、『柱松』という、簡単な花火を打ち上げていたようです。
運動会の時の『玉入れ』を想像するとわかると思いますが、長い棒の先に籠が付いていて、その籠の中に花火が入っています。
まわりの人たちが松明を持っていて、松明を籠に投げ入れて花火を点火し、それを競い合うというものだったそうです。
初盆の方が柱松を持って、一番に火を灯そう、ご供養しようと、みんな一斉に投げ入れて点火をしていたようです。
初盆のご供養の柱松はお金もかかるので、お家の方がされていた模様ですね。
明治頃まで続いていたようですが、花火もだんだん発展してきて、打ち上げ花火などが増えてきました。
そうなるとこちらの芝生では無理ということで、場所を変え、目の前の七里御浜に移動していったようです。
最初は多分、何百人という規模だったと思いますが、今では15万人・・・たくさんの人たちに花火を見てもらっています。

 

盆供養の花火という意味合いは受け継がれている

木本町には六箇寺お寺があり、輪番制となっています。
それぞれが毎年当番を決め、初盆の方をお祀りしている塔へ行き、お経を最初にお唱えします。
その後に花火が始まります。
15日の夜は『精霊流し』とう、海に入りって初盆の方をお送りするという行事があります。
15日に浜の方でお送りして、今度は17日に空の方にお送りするという行事が続いています。
この木本町の方は、初盆、そして精霊流し、花火を終えることで、やっと亡くなった方をお送りすることができたという思いになります・・・。

 

城大仕掛けの音は心に響く

花火師さんは、花火の色や大きさを観てほしいと思いますが、花火大会のフィナーレは、『鬼ヶ城大仕掛け』。
鬼ヶ城の岩場や洞窟を利用して花火が打ちあがります。

その時に大きな、とても大きな音がします。
日本中探してもないような、花火の音なんですね。
その音が、心にジーンと響いてくるんです。
それは、どこにもない、来た人しか経験できない、心の響きなんですね。
その響きが、亡き方へ、初盆を迎えた亡き方へ届けよ!・・・という気持ちなんです。
だから花火の色彩、そして心に響くドシンという音を楽しみにしてほしいと思います。
このお寺まで何キロか離れていますが、このお寺をも揺るがすような轟音がします。
そんな迫力のある三尺玉も楽しんでほしいと思います。

数としては少ないと思います。
ポツン、ポツン・・・と間隔を開けて打ち上げる花火かもしれません。
しかし、その中に、街の人の思い、初盆の人の思い、300年の思いが込められている花火なんですね。
その余韻を楽しみながら観ていただきたいです。

 

れる人それぞれにこの花火を見てくれている

熊野の花火というのは、初盆の方を送るものなので、自分の大切な人がどうしているかなど、観ながら思いを馳せて、そして思い出に耽ってください。
亡くなられた方とともに、心の中で一緒に花火を観てもらえればな、と思います。
『熊野大花火大会』はリピーターのかたがとても多いのですが、そういった思いを持たれて来ている方も多いと思います。
熊野の出身者ではなく、名古屋や東京や大阪などから来る方もいます。
熊野の出身ではないけれども、故郷のような感じがして、この花火を観ていてくれるのだと思います。
だからこそ、「今年も熊野の花火を観に行こう」「8月17日は空けておこう」と思っていると思います。
それが嬉しい限りです。

最後の鬼ヶ城の花火がパパン、パン!と打ち上げられて終わった瞬間、もう終わってしまったんだなというか心にポッカリ穴が空いた気持ちになります。
翌18日は毎年、寂しい思いをしながら浜の清掃をすることとなります。