『ミエてくる!』2018年8月14日

東紀州エリアに残る古道といえば、真っ先に世界遺産熊野古道が思い浮かぶことでしょう。
「くまのプチ歩き旅 その6」は、奥熊野の秘境、瀞八丁に残る“もうひとつの熊野古道”と、老舗のホテルを改築したレトロで優雅なカフェをご紹介いたします。
今回のフィールドは、歩く道は三重県、カフェは奈良県、そしてすぐ目と鼻の先に和歌山県があるという三県境がひしめき合うちょっとユニークな場所になります!

熊野市街地から車で約40分、切り立つ渓谷に抱え込まれたエメラルドグリーンの水が光る秘境、瀞八丁にたどり着きます。
少し前までは道路事情もあまり良くなく、行くだけでもなかなかの労力を要する場所でしたが、2013年に開通したバイパスのお陰で随分と行きやすくなりました。
国道169号道中、奈良県と和歌山県の県境付近に、田戸集落へと下って行く分岐があります。
「瀞峡」と書かれた大きな道標があるので、迷う心配はありません。

田戸集落へ入ると、すぐ右側に公共の駐車場が見えてきますので、ここに車を停めてください。ここから、くまのプチ歩き旅がはじまります!

 

瀞八丁の公共駐車場

 

この案内板をたよりに、瀞八丁方面へ歩きます。
すぐですよ~。

駐車場から階段を下ると、すぐに交番前の広場に出ます。ここにちょっと興味を引く看板が。
そう、ここは三重県、奈良県、和歌山県が集まる三県境ポイントなのです。
通常、三県境というものは1か所しか存在しないものですが、和歌山県が三重県と奈良県の県境付近に2つの飛び地を抱えている関係で、三重県、奈良県、和歌山県の三県境はなんと5か所も存在するのです!
ここ瀞八丁は、その5か所ある三県境のひとつです。この広場には公衆トイレもあります。

 

三重、奈良、和歌山三県境看板

 

三県境看板前からの瀞八丁
悠々と流れる川に、奥熊野の自然美を感じる

交番の横にある石段を下って行くと、レトロな看板がお目見え。
ここが、レトロで優雅なカフェ、「瀞ホテル」です。
カフェとしてオープンしたのは2013年とごく最近・・・ですが、この瀞ホテルはものすごく長い歴史を持っています。
遡ること101年、1917年に「あずまや」という旅館として開業、当時は筏師の人々が主にここに宿泊していったということです。
その後「あずまや」は「招仙閣」への名称変更を経て、昭和期には「瀞ホテル」と呼ばれるようになりました。 
陸路である国道が開通して以降は筏師も役目を終え、徐々に減ってきた一方、瀞峡ウォータージェット船に乗って、幽谷深山の秘境を気軽に楽しめるようになって以降は観光客も増え、瀞ホテルは、周囲にあった何軒かの旅館とともに人気の秘境観光スポットとなりました。
しかし、2004年に第三代目の宿主が亡くなって以降は閉館し、老舗の建築物だけが空き家のまま秘境の断崖に佇んでいる状態がしばらく続いていました。

時は流れて2013年6月、第四代目に当たる今のカフェ店長が、この美しい瀞八丁に活気を取り戻そうと、建築物を改築し、「食堂・喫茶 瀞ホテル」としてリニューアルオープンをしました。
縁側からは、切り立った谷間に悠々と流れるエメラルドグリーンの川のある瀞八丁を一望できることから、県外からも多くの旅行者が訪れます。

 

交番横の石段を下って行くと、すぐに瀞ホテルの入口横に出ます

 

瀞ホテル入口

名前は瀞ホテルですが、食堂、喫茶のみです
中に入るのは、歩いた後のお楽しみ^^

 

北山川河原から見上げる瀞ホテル全景

大層立派な建築物です。

後編は、いよいよ『プチ歩き旅』!
『筏師』がたどった道を、実際に歩きます!