『ミエてくる!』2018年8月15日

東紀州エリアに残る古道といえば、真っ先に世界遺産熊野古道が思い浮かぶことでしょう。
「くまのプチ歩き旅 その6」は、奥熊野の秘境、瀞八丁に残る“もうひとつの熊野古道”と、老舗のホテルを改築したレトロで優雅なカフェをご紹介いたします。
今回のフィールドは、歩く道は三重県、カフェは奈良県、そしてすぐ目と鼻の先に和歌山県があるという三県境がひしめき合うちょっとユニークな場所になります!

さて、後編は『プチ歩き旅』の方へと入っていきます!
今回の歩くルートは、往復4.4kmの筏師の道。そう、「瀞ホテル」の説明の際にもちょくちょく出てきた「筏師」がたどった古道です。

まず、筏師とは?
筏師とは、この瀞八丁がある北山川界隈で切り出された木材を組んで筏にし、水運に任せて北山川を下り、熊野川を経てはるか下流の新宮まで筏を操縦して木材を運んだ職人のことを言います。
下りは川の流れに任せて向かえるが、新宮で筏を解体して木材を納品した後は、彼らは足で歩いて帰ってこなければなりません。
この時に彼らがたどった道が「筏師の道」として、三重県、奈良県、和歌山県が集まるあたり一帯に残っています。

総距離はかなりのものになり、世界遺産登録されている巡礼路熊野古道に対し、「裏熊野古道」、「もう一つの熊野古道」と呼ばれ、歴史の道愛好家の間ではひそかな人気を呼んでいます。
一部は荒れてしまったり、または登り口へのアクセスが不便だったりと、全てを歩くには入念な準備が必要となりますが、ここ瀞八丁を起点とする片道2.2kmの区間は整備もよくされており、気軽に筏師の道を楽しむことができます。

瀞ホテルの前からは、2本の道があります。河原(瀞峡ウォーターセット船乗り場)へと下って行く道と、そのまま川に沿うように緩く下る道ですが、どちらを通っても、筏師の道へと行くことはできます。
しばらく、川に沿う道を歩いて行くと、家が数軒並ぶ集落の前にかかる吊橋「やまびこ橋」が見えてきます。
橋の定員は15名、団体で行かれる際には、ぜひお守りくださいませ。
この橋の手前で見られる小さな白い看板は、2011年9月の台風12号による紀伊半島豪雨の際、ここまで水が到達したことを示すものです。
普段の川面からここまではけっこう高く、どれだけ恐ろしい状態であったかが容易に想像できます。

 

瀞ホテルの前から筏師の道へと歩いて行きます。
前方にはやまびこ橋が架かっているのが見えます。

 

やまびこ橋

 

丈夫な吊橋ですけれど、高所恐怖症の人は要注意・・・

 

なかなか多めの定員ですね~

 

吊橋を渡る前の民家の石垣にある、2011年紀伊半島豪雨時の記録看板

やまびこ橋を渡ります。川面から25mの高さで、吊橋ならではの揺れが伴い、なかなかのスリル。
吊橋を渡っているとき、お決まりのように感じる「この橋、いつから架かっているのだろう、切れたらどうしよう・・・」ですが、この橋は2015年に補強工事がされているので、安心ですよ。
この吊橋の真ん中が奈良県十津川村と三重県熊野市紀和町の県境となっています。
今回歩く筏師の道の区間はほぼ全域が三重県となります。

橋を渡った後には、「木津呂側登り口2.2km」とかかれた木製の道標が見られます。
木津呂側登り口とは、今回のプチ歩き旅の折り返し地点で、熊野市紀和町の中心部と木津呂地区をつなぐ林道との合流点になります。

道標を過ぎた後はしばらく登り道となります。
登りはさほどきつくはなく、登りきったところにはベンチが置かれています。
このベンチが過ぎた後は、北山川に沿うほぼ平坦な道が続きます。
道はほぼ全域が森林におおわれていて景色は見られませんが、はるか下方を流れる川の音が時折聞こえ、頻繁に行き交う瀞峡ウォータージェット船が通過した時は、ブウーンという威勢のいいエンジン音が鳴り響き、瀞峡ならではの旅情を誘います。

 

やまびこ橋から、北山川の上流方面を眺める
怖さを忘れてしまう絶景

 

やまびこ橋を渡ってすぐに見える道標

 

そしてすぐ鉄製階段の道に
スリップ注意

 

ゆるやかに登っていくと・・・

 

平坦な道になります
この先はずっと、こんな感じの道が続きます

 

道中、このような距離つき道標が2本立てられています

ほとんどアップダウンの無い筏師の道を歩いて行くと、やがて木津呂集落へと向かう林道に出ます。
今回のプチ歩き旅は、この地点で折り返して、来た道を戻ります。
この林道合流点からは、悠々と流れる眼下の北山川が一望できます。
瀞峡ウォータージェット船が航行しているときはさらに絵になりますよ!

 

木津呂への林道合流点

 

林道から見下ろす北山川

瀞峡に戻った後は、ぜひ「瀞ホテル」でゆっくりくつろいでください。
今回のコースは全長4.4km、半日あればゆっくり歩いても行けますので、午前9時ごろに歩きはじめた場合、ちょうどお昼頃に瀞峡に戻ってくることができ、そのまま「瀞ホテル」でランチを取ることも可能です。
一度に三県を眺めながら秘境にどっぷりと浸かる、とっておきの休日はいかがですか^^?

 

瀞ホテル最上階の縁側からは、瀞八丁を一望!

 

各種ランチを頂けます
コーヒーなどの飲み物も充実しています
写真は、マフィン&スープセット

 

【このルートのスポット情報】
【食堂喫茶・瀞ホテル】
熊野川の支流、北山川の瀞八丁を見下ろす築100年以上のカフェ。
もとは1917年に、旅館「あずまや」として開業したのがはじまりで、始めの頃は筏師が、やがてはウォータージェット船でやってくる観光客が宿泊をし、非常に活気づいていましたが、2004年に3代目の宿主が亡くなって以降はしばらく休業。
2013年6月、4代目に当たる現在の店長が改築して「食堂喫茶・瀞ホテル」としてリニューアルオープン。
休日には周辺県や大阪、名古屋方面からも多くのお客様が訪れています。
重厚な木造家屋と、幽谷深山の瀞八丁とのコントラストは、カメラマンにも人気のスポットとなっています。