FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年9月1日放送

桑名市の北東部を南東に流れる揖斐川。
その右岸に『諸戸氏庭園』があります。
広い庭園には、たくさんの草木が植えられ、効果的に配置された石の美しさも
見どころです。
『諸戸氏庭園』は、10年以上かけて修復工事を行っています。
今回は『公益財団法人諸戸財団』事務局長の澤田健晴さんにお話しをお聴きしました。

復工事は10年以上、図面がないので大変

100年に1回の建物と庭園の修復大工事をするために、平成20年に『公益財団法人諸戸財団』を設立しました。
平成20年から10年ほどかけて工事を行っています。
今年でちょうど10年になるのですが、まだ終わらず、見込みとしては平成33年くらいになると思います。
さらに財団と建築の方と、常に連絡を取り合い、委員会を作りました。
委員会の中でいろいろ検討して、建築や庭園の増築を進めています。
お城もそうですが、昔の建物には図面がないのです。
図面があればそのとおりにすれば良いのですが、図面無しで再現するために、みんなで打ち合わせをしながら進めていくので、非常に時間がかかります。

 

つじや紅葉が美しい

明治17年に初代・諸戸清六がこの庭園を買い取りました。
諸戸氏庭園は春と秋に一般公開を行っており、今年の秋は11月3日から12月2日までとなっています。
秋は、ドウダンツツジともみじが真っ赤に紅葉して、とても綺麗になっています。
諸戸氏庭園は花菖蒲の庭として江戸時代に造園されました。
さらに明治に造園した青石と松の庭を中心に、来賓館として建てられた茶室などの建物が点座していて、明治時代の商人の生活空間をそのまま感じられるのが特徴となっています。
春はつつじ、藤、花菖蒲などの花々が庭園を鮮やかに彩っています。
それほど広くはありませんが、全部で3000坪ほどあります。
街の中ですが、ここに入ると鳥の声が聞こえ、心が穏やかになる空間です。
ぜひ一度、見に来てほしいと思います。

 

名の水道整備事業も私費で行うなど、地域のために貢献

初代・諸戸清六はバイタリティに溢れた人で、引き継いだときには一千両の借金と二十石の船一艘がありました。
一千両といえば今の価値で2億5千万円くらい。
昔はお金の価値が今より高かったので、大変だったと思いますよ。
しかも継いだのは18歳の時。
借金を必ず返さなければならないため、がむしゃらに働きました。
清六の座右の銘は『時は金なり』。
時間を無駄にすることを非常に嫌ったんですね。
例えば、仕事は夜に移動して、朝から働き始める。
米の買い付けをしていたときは、夜のうちに移動して、朝の4時から5時頃には、相手先の家に到着していました。
そして農家の人が仕事に出る前を捕まえて、商談を行っていたそうです。
『国のため』という意識が非常に強い人でした。
清六さんは林業も行っていましたが、それについて、

『山は荒れれば田畑へ水が行かず、米が育たない。
木がなければ家が建たない。
そうなれば日本人は、すぐに食うに困るようになってしまう。
木を植えるということは、国の芯体を増やすことで日本人の生活を守ることである』

と語っています。
桑名では水道施設を作り、市内十数箇所に消火栓を設け、桑名市の発展に尽力をしました。
また、上水道を日本で6番目、名古屋市より早く作るなどの貢献をされた方です。

 

蔵の煉瓦蔵は、とても風情がある

庭園の近くには煉瓦の蔵が並んでいます。
米蔵かつては5つありましたが、空襲で焼けてしまったため、現在残っているのは3つ。
諸戸清六は地の利を活かし、米の買い付けで儲けました。
ない日船荷が上げ下ろしされ、この通りは大変賑わっていたそうです。
今は煉瓦の色はだいぶくすんできていますが、それはそれで庭とマッチングしていますね。
藤の花が咲いて、菖蒲が咲いて、秋を迎えて紅葉となり・・・見どころのある建物のある庭ですから、楽しみに来てほしいと思います。
良い松の木がたくさんあるので、枯れないように保存するのが大変だと思います。
建物が現在工事でなくなっていますが、修復工事が始まってくると、だんだんと形が整ってくるので楽しみです。
諸戸氏庭園の隣に六華苑がありますが、合わせてだいたい5〜6000坪。
さらに裏の公園と併せて、一つの観光地になると思います。

10年後、20年後、みなさんがこの庭園を訪れたときも、以前に訪れたときと同じ状態で守っていくのが私どもの使命と考えています。
今後ともこの庭園が歴史あるものとなるよう、見守っていきたいと思います。