三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2018年10月14日

木を使ったものづくりを生業にしたいと、漆器の産地・石川県で修業を重ね、2009年に四日市市に戻り本格的に作家活動をスタートさせた四日市市出身の笹浦裕一朗さん。
漆器の中でも椀にこだわり、お椀作家として木地作りから塗りまで、全ての工程を一人でこなします。
今年7月には、自宅兼工房の一角にギャラリーをオープンし、椀の形やサイズ、塗りが選べるセミオーダーの注文も受け付けを開始、また器を極めるために学んだ料理の経験をいかし、お椀と地元の食材を使ったお味噌汁の魅力を伝える活動もスタートさせました!

笹浦裕一朗さん。
40歳。
四日市市の自宅に工房を構える漆器職人です。
笹浦さんがこだわり、作り続けるもの・・・それはお椀。
木の削りから漆塗りまで、そのすべてを手作業で、たったひとりでやりきります。

「お椀の形は昔ながらのもので、足の部分を高台と呼びます。
高台に『頂く』『捧げる』という意味が込められていると思うので、自然に対する畏敬の念、『いただきます』という気持ちを思い起こさせる、日本の心を表した形を、思いとともにつなげていきたいと、日々お椀を作っています」

と、笹浦さん。

 

笹浦さんの工房兼ギャラリー『ギャラリーささうら』。
笹浦さんと、大工であるお父さんによって自宅を改装。
備え付けの家具なども、すべて二人の手によるものです。

 

こちらにはたくさんのお椀が並んでいます!
おおまかに分けると3種類で、セミオーダーで購入が可能です。
まず、こちらの棚からお好みの形、大きさのお椀を選びます。
続いて漆塗りの仕上げの状態を選んで組み合わせ。

 

2〜3ヶ月待つと、自分だけのお椀が出来上がります。
10年は持つという漆塗りですが、1回は無料で塗り直し。
まさに一生モノの器です。

 

妻の真理さんは仏像彫刻家。
豆仏や掌観音などの作品をギャラリーで購入することができます。

 

自宅内の工房でお椀を削る笹浦さん。
通常、この削りの作業と漆塗りは、それぞれの職人が担当します。
しかし笹浦さんは、それをひとりでやってしまうのです。

笹浦さんは1978年生まれ。
2002年に石川県挽き物(ひきもの)轆轤(ろくろ)技術研修所に入所。
その後、下地職人に弟子入りして、削りと下地付け、漆塗りの技を磨きました。
2003年には、工芸都市高岡クラフト展『金賞』を受賞しています。

 

続いて自宅2階の作業場に。
ここは、笹浦さんが子供の頃使っていた勉強部屋だそうです。

「こちらは漆を乾かす棚です。
下地作業を終えたもの、途中のものなどがあります」

5分おきに回転させることによって、均一な状態で乾かすことのできるこの棚、昔の職人さんが使っていたものを、笹浦さんが譲り受けたのだそう。
このように組んであるタイプの棚は、今は貴重なもの。

 

塗りの作業。
最初は漆で固めて、その後見付けに弾力のある麻布を張って、強度を持たせます。
次はヘラを削ります。
下地作業はヘラ使いが一番大切で、ヘラを作ることができて、初めて作業に入ることができます。

 

混ぜ合わせているのは、漆と、珪藻土と、砥石の粉。
これを下地として、お椀にヘラでつけます。

「漆は常に、つけては研いでつけては研いでと・・・あくまでも食い付きをよくするために常に研ぐというのは、大事な作業だと思います、僕は」

下地をつけて乾いたら砥石で研ぐ。
そしてまたつける。
繰り返すこと3回。
この手間が10年もつ漆塗りの強さの秘密です。
研ぎ終わった後に、下塗り、中塗り、上塗りと塗り重ねます。

「上塗りは一日かかりますが、スカッと揃うと、刷毛目なくきれいに仕上がると、気持ちがいいですね」

 

そんな笹浦さんが生み出すお椀の世界。
漆を塗って拭いてを繰り返す、木目を活かした『拭き漆』。
麻布を張り、下地を施して塗りを重ねる、昔ながらの技法を使った、真塗り仕上げの『本朱椀(ほんしゅわん)』。
乾いて固まった漆を砕き、混ぜ合わせて白漆で固めた、『乾漆(かんしつ)仕上げ』。陶器のような質感が特徴です。

 

器を極めるために料理を学ぶ。
笹浦さんは料理学校に通い、そしてお椀と味噌汁の魅力を伝える活動をスタート。
自分のお椀と、管理薬膳師の齋藤純子先生のお料理で、『繋げよう、伝えようお味噌汁の会』という活動を行っています。

「日本の国土、特にこの土地で取れたものを、バランスよく食べることを伝え、いただく心を育むのが薬膳です。
それをみなさんに体感していただこうと思っています」

と、斎藤先生。

 

五味調和に基づき、五つの味、五つの栄養に分けられた季節の食材から好みのものを選びます。

 

さらに2種類の出汁、2種類の味噌から好みのものを選び、自分だけのお味噌汁が完成。
まさに日本の食です。
緑のお野菜や、なすの紫と黄色の色合いが、笹浦さんの赤い器に映えて、とてもきれいです。

「正直きれいですね、自分で言うのもなんですけど」

と、笹浦さん。

「不思議と、何を入れても合うのがお味噌汁なんです。
なので怖がらずに、いろいろな食材でのお味噌汁づくりにチャレンジしてほしいですね」

と、斎藤先生。

 

一方、笹浦家の食卓。
やはり、笹浦さんがつくったお椀や器が並んでいます。

「24時間、家族一緒にいられるのはありがたいことです」

と、笹浦さん。

「夫に、このまま自分の生き方を貫いていってほしいですね。
私たちの生き方を見て、子どもたちが『仕事って楽しそう』『生きるって楽しい』と思ってもらえたら、何よりです」

と、真理さん。

みなさんも、笹浦さんのお椀で味噌汁を味わってみませんか。
ギャラリーのオープンは毎週木曜日。
各種イベントも開催しています。