FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年12月29日

2018年の最後は『三重県立美術館』の副参事、松本忠さんがお客様です。
去年の2月、三重県職員の松本さんは県立美術館の担当になりました。
たくさんの人が美術館に足を運んでいただくように様々なPR活動をしています。
では、まずは美術館の紹介をしていただきましょう。

ーソドックスな美術館だが、ここ2年はチャレンジしている

三重県立美術館は、伝統を守っているというか三重県カラーがあるようで、オーソドックスな企画展・作品展をしてきたようですね。
しかし昨年は動く作品の『テオ・ヤンセン展』、『絵本の世界展』などを開催したり、ここ2年間は今までの伝統的なものと比べると毛色が違うという気がします。
私が初めて県立美術館に足を運んだのは20年ほど前で、そのときはシャガール展を開催していて、『枝』という青を基調とした大きな絵がありました。
真ん中にカップルがいて太陽があって花があって・・・とても幻想的で引き込まれました。
とても良い作品だと感じました。
ただ見方によっては物悲しく見える時もあるようで、おそらく見る側の状況でいろいろな見方ができる作品なんだと思います。
昨年の開館35周年の企画展『ベスト・オブ・コレクション』を開催したときに人気投票をしたところ、その『枝』が一位になりました。
県民のみなさんもこの絵が好きなんだなと思いました。
なので、美術館を代表するのはシャガールの絵ではないかな、と思っています。

 

在考えているのは2年後の企画展

美術館の展覧会は常設展示と企画展示があります。
県立美術館のコレクションを楽しむ常設展や色々なジャンルの企画展。
学芸員が1年先、2年先を考えて企画を立てていくのですが、三重県立美術館の場合、学芸員が7名、館長も学芸員なので全部で8名います。
今は学芸員が集まった会議で、再来年度の企画を検討しています。
もちろん私も会議に参加させてもらっています。
企画展は学芸員の研究の成果の発表でもありますが、できるだけ多くの方に来てもらいたいので、年間5本くらい行う企画展の中から、1本は一般に受け入れられやすいような、幅広い客層に来てもらえるような展覧会にしたいとお願いしています。
西洋画、日本画、工芸・・・いろいろな分野の学芸員がいますので、そういう意味では企画も多くの客層の方に来てもらえるよう、いろいろな分野のものを取り上げてほしいとお願いしています。
今年だと、先程も言いましたが『ぼくと わたしと みんなの tupera tupera 絵本の世界展』、夏は『サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法』、秋は『日本画*大研究』、そして冬は『川端康成と横光利一展』として文学の世界を・・・一年にわたって、本当に多彩なラインナップを揃えさせてもらったと思います。

 

本画の見方を教えてくれる企画展

秋に開催した『日本画*大研究』では、日本画の見方を紹介しました。
製作過程や材料、描き方・・・そしてどういう見方をするのかなどを案内させてもらいました。
また絵の背景を解説したりすることで、より深みが出て、一層楽しんでいただけたと思います。
ところで、作品には必ずキャプションが付いていますよね。
キャプションを読んでから見てもらうか、自分の直感だけで見てもらうのが良いのか・・・どちらが良いとも言えないですね。
しかし作品のモチーフや主題、時代背景などを知る上では、キャプションを読んでもらえるといいかなと思いますね。

 

ットする企画展もあれば、人が入らない企画展も

東京や京都・大阪など大都市の美術館だと、有名な絵を持ってきて展覧会を開催したりしますが、地方の美術館でどういうものを企画したらお客さんが来てくれるかとなると、結構難しいんですよね。
学芸員さんが一生懸命考えてくれているのですが、何がヒットするのかわかりません。
『テオ・ヤンセン』展も『tupera tupera 絵本の世界展』もこんなにヒットするとは学芸員さんも思っていなかったようです。
うまく流れに乗るとか、PRの仕方もあると思いますが、必ずしも作品だけではなく、世の中の流れのようなものもあってのヒットなど・・・多くの要因があると思います。
まあ、たくさんのお客さんが来てくれたらそれでいいのですが、目標を大きく下回るようなときは、それはそれで「美術館、なにしとるんや」という声もいただいたりするんで・・・良いときもあれば悪いときもあるって感じですかね。
三重県立美術館では、海外展だとシャガール展やエルミタージュ展、日本画展だと横山大観や上村松園など、オーソドックスな展覧会が今まで目標を上回って成功してきました。
しかしそれだと固定層のお客さんには来てもらえますが、新しい層のお客さんに来てもらえないので、少し博打を打つつもりで、コアなお客さんを狙いながらでも多くの方に来てもらえるような展覧会を仕組んだりしているところです。

見に来ている子どもさんの目が輝いているのを見ると、本当に良い展覧会だなと感じます。
今後もそういう展覧会をしてきたいと思っています。