三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2019年1月13日

スポーツメーカーのデザイナーを退職して、香川県の漆芸研究所で技法を学んだ村上麻沙子さん
現在は、三重県を中心に活動している伝統工芸の若手グループ「常若」のメンバーとして、伝統工芸の変わらない精神を受け継ぎつつ、新しい時代にあった作品を生み出そうとしています!

Japan。
漆器を英語でそう呼びます。
ウルシから採取される樹液は、器などを保護する塗料、そして接着剤として、縄文時代から使われてきました。

 

「私が作るものは、2ヶ月ほどかかります。
表現の豊かさが漆の魅力だと思います。
平面的なものから立体的なものまで作ることができ、さらに加飾の技法も全国にたくさんあるのが漆器の良さですね」

漆芸作家・村上麻紗子さんは千葉県出身。
スポーツメーカーの企業デザイナーとして働いていましたが、大量生産される商品のあり方に違和感をおぼえ、退職。
香川県の漆芸研究所でさまざまな技法を学び、その後、伊勢で神職が履く浅沓(あさぐつ)をつくる機会に触れました。

 

現在は、三重県を中心に活動している伝統工芸の若手グループ『常若』のメンバーとして、伝統工芸の変わらない精神を受け継ぎつつ、新しい時代にあった作品を生み出そうとしています。
以前、『常若』の代表で、根付職人の梶浦明日香さんをご紹介したときも、少しだけ登場していただきました。

 

村上さんの自宅兼工房。
並んでいるのは、村上さんの作品です。

「漆というと黒や赤というイメージがありますね。
確かに古いものは黒と朱しか色がありませんでしたが、今は漆に混ぜる顔料も開発が進み、たくさんの色を作ることがえきるようになりました」

 

こちらの手鏡の花はラナンキュラス。

「やはり漆は黒が一番美しい色だと思うので、色を使う中でも黒を活かしたデザインにしたいと思い、コントラストの効いた黄色を持ってきました」

と、村上さん。

 

こちらの花器は、なんとガラス製。
茶色の部分に透明な漆を使うことで透けて見え、ガラスの透明さを表現したデザインとなっています。

 

続いては工房へ。
こちらが土を使って表面を整えている、下地の状態のもの。
勾玉の形となっています。

「下地の段階で、ほぼ完成が決まると言っても過言ではないと思います。
やはり下地が整ってないと漆を塗っても結局キレイには仕上がらないんですよ」

と、村上さん。

 

作業場の中に引き戸がついているのは、漆が埃を嫌うため。
下地の作業はとても埃が立つ作業となるため、引き戸を閉じて漆を塗る奥の空間に埃が入らないようにしているのです。
漆を塗る作業をする際は、キレイに片付け、空中に霧吹きを吹いて埃が落ちるのを待ってから始めるのだそうです。

漆芸には時間と環境が必要なんですね!

 

さて、今回体験するのは、しおり制作。
まずは絵をボールペンでなぞって写し取ることから。

絵を写した後は、彫る作業。

 

彫った部分に金を入れると一気に絵が浮き出てきます!!

 

村上さんによる漆芸体験会は、地元の学校や、イベントなどで開催。
『常若』として、海外のショッピングモールに招かれた時は、日本の細やかな伝統工芸に、たくさんのお客さんが驚き、集まったといいます。

 

昨年11月にオープンした大型ショッピングモール『イオンモール津南』。
その一角に、常若のメンバー6人の作品が展示されていました。
漆芸、伊勢根付、伊勢型紙、伊勢一刀彫・・・。出身地、職人になった経緯はさまざまですが、三重の伝統工芸に強く魅せられ、情熱を注ぐ6人の作品。
その中にもちろん村上さんの作品もありました。

『伝統的な技法に加え、自分なりの表現に挑戦することで、漆に馴染みのない人にまで興味をもってもらえるようなものづくりを目指します』

 

伊勢に越してきて7年・・・。
村上さんが受け継ぎ、そして模索してきた可能性のすべてがここにあります。

 

「これからも、この伊勢の地で作品を作り続けたいです。
最初は本当に知らない土地でしたが、仲間にご縁に恵まれました。
この先はその縁をさらに広げてゆくような活動もしたいですし、そのためにはこの土地で頑張ってゆくことが大事だと思っています。
漆の作品は世の中にたくさんありますが、その中で『私のだから欲しいんだ。手元に欲しい』と言ってもらえるような作品を作れるようになるのが、私の夢です」

と、村上さん。
塗っては研ぎ、研いでは塗る。
漆芸作家・村上麻紗子さんの作品に興味を持たれたかたは、ぜひ『常若』のHPへ。