FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年1月26日

JR四日市駅近くの住宅街に古い町屋をリノベーションしたギャラリー『町屋スタジオ侶居』の代表で、ディレクターの日出秀美さんが今回のお客様。
『侶居』はグラフィックデザイナーのご主人とインテリアデザイナーの日出さんのこだわりがたくさん詰まった空間。
スタジオ侶居は、小さな幸せに包まれています。

65年の町屋をギャラリーに改装

築65年の町家づくりの建物で、私はここで生まれました。
大工だった祖父がこの家を建て、両親が住んでいましたが二人とも亡くなったときに、ここをどうするかと。
壊すという話が出た時、私は東京に住んでいましたが、夫とともに戻ってきて、東京の仕事をしながらここでギャラリーをしています。
22年ぶりに戻ってきたら、この辺りもずいぶん変わっていました。
小学校や中学校の頃の道がなくなっていたり、家などもずいぶんなくなっていて・・・同級生は1人もまわりにいません。
私の名前を知っているおじいちゃんやおばあちゃんはいますが、私はわからないという状況で、かなりギャップがありました。
夫がアート制作とグラフィックデザインの仕事、私はインテリアデザインの仕事をしているため、ここで仕事をしながら何ができるかを考えたときに、自分たちの好きなことをしたいと。
アートを暮らしの中に取り入れることを提案できるようなギャラリーをやりたいと思い、ここで住みながら開廊しています。
木とか土壁とか、この佇まいを残すにはどうしたら良いかを考えたときに、改装してギャラリーにしようと思いました。

 

父が建てた家を復元しながらリノベーション

こちらに戻ってきたのが2016年11月。
そこから仮住まいをして、ゴミ屋敷状態だったところを片付け、2017年2月に工事が始まりました。
解体工事も自分たちでできるところはやって、大工さんに力を借りながら直して。
仮住まいをしていましたが、あまりにも工事に時間がかかったため、まだ出来上がっていない状態の家に引っ越してきました。
住みながら、大工さんたちの工事を見守りながら、なんとか2017年10月に完成。
それから準備をして2018年2月にこのギャラリーをオープンしました。
父も大工だったので、新建材を使ったりして、改装しながら暮らしていましたが、私は祖父が建てた状態に復元することに力を入れました。
新建材の壁を剥がしたら土壁が出てきたとか、昔のままの柱や梁が出てきたので、その良さを活かしつつダメな部分は取り壊しました。
新しい扉を付けなければならないときは、新しい扉を作るのではなく、古い建具を買ってきて、それを取り付けるとか。
できるだけバランスを崩さないように、リノベーションしました。

 

めてアート作品を買うというお客様が!

暮らしの中にアートを取り入れてほしいということで、一般的に『ホワイトキューブ』と言われる白い壁とモルタルのグレーの床の中に作品を展示するという形ではなく、古民家の暮らしの中で、どうやったら作品が飾られるのかを提案しています。
暮らしの中でアートを楽しんでほしいという気持ちを込めて、ここを運営しています。
いわゆる『コレクターズアイテム』のような何十万とするような作品を扱うのではなく、玄関や自室の壁にかけてもらえるような・・・上等なカバン1つ分、良い靴1足分くらいの値段である3万円から5万円くらいの作品をみなさんに紹介していきたいと考えています。
先日、作家さんの紹介で来たけど、一度もアート作品を買った経験がない方がいらっしゃいました。
もともと買うつもりではなく、見るだけという感じで来てくださったのですが、1つの作品にとても感情が入ったというか、目が合ったというのかな・・・とても気に入ってくださいました。
私たちも、コレクターズアイテムのようにしまい込むのではなく、お部屋に飾って欲しいとお話したところ、納得して買ってくださいました。
初めて自分で買ったアート作品だと聞いて、とても嬉しかったですね。

 

りたいと思ったことをぶれずにやっていきたい

決して高価なものはありませんが、自分たちがこだわったできるだけ質の良いもの、時間が経っても価値が変わらないもの、時間が経つことによって価値が上がるものが好きなので、そういうものでギャラリーを構成しているつもりです。
自分たちがやりたいと思って最初に決めたことをブレずにやっていきたい。
「今、人気があるこれをやってみたら」とご提案をいただくこともありますが、そうではなく自分たち『侶居』らしい企画をしていきたいです。
また、アートといっても絵画や彫刻だけではありません。
音楽や演劇・・・そういうもののワークショップや、料理やお茶など食べることのワークショップも続けて開催したいです。

日々の、ちいさな特別のために。
これが侶居のコンセプトです。
『伴侶』の『侶』という字を『りょ』と読み、仲間という意味。
『居』は居場所という意味。
つまり『仲間の集まる場所』という、アートに興味のある人がここに集まってくれればいいなと思い、付けた名です。