FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年2月23日

奈良県との県境、高見峠にほど近い松阪市飯高町波瀬地区。
今回は、ここでクレソンの栽培をはじめ、自慢のクレソンを使ったお店『はぜの風』を営む北川京子さんがお客様です。

『はぜの風』では、たっぷりのクレソンを鍋料理でお客様に出しています。
緑色が鮮やかでシャキシャキした食感は、ここでしか味わうことができません。
その味を求めて多くの人が訪れます。

レソン専門のお店をオープンしたのは約10年前

クレソン専門のお店としてオープンしたのが10年ほど前。
それまでは軽食というか喫茶を15〜6年営業していました。
でも山の中で、エビフライもトンカツでもないでしょ。
ここにはここのものがあるやろ、ということで料理をコロッと変えました。
お客さんを待っているというのもしんどい仕事なので、まず喜んで来てもらうというのが、とても理想的なお店です。
ここは予約制なので、食べ物が無駄になりません。

軽食の店をしていた10年ほど前、大阪からの田舎暮らしをしたいというおじさんが来たんですね。
ぜんぜん知らない人でしたが、うちの畑を見て「あ、クレソンだ」と。
私は雑草のように思って邪魔にしていたら、その人がもったいないというもので・・・。
はじめは私、クレソンは好きではなかったのですが、その人のおかげでクレソンの良さがわかってきました。
自分たちだけで食べるのはもったいないから、みんなに食べてもらおうとなりましたが、当時はまだ、松阪市でクレソンはそんなに人気ではなかったんです。
最初はJAが経営している直売所に週に3回ほど持っていって。
商品を並べているときにお客さんが見えたら、食べ方などの説明できるじゃないですか。
そういうことを続けていたら、いろいろな地方紙などのマスコミさんが取り上げてくれて、それからお店をオープンしました。

 

う存分クレソンを食べてもらいたい。波瀬に来て食べてほしい

ここに初めて来る人は、ハンバーグやステーキについてくるクレソンを連想されるので、「なんでこれをお鍋にできるの!」と驚いて、「今日からクレソンデビューね」という感じになります。
でも、結構高いからお鍋にできないと言う人が多いですから、ここでは思う存分食べていただいています。
生だとちょっとしか食べられませんが、火を通すとたくさん食べてもらえるでしょう。
だから鍋が良いんです。
春菊だとクセも強く、お鍋がベタベタになりますが、クレソンはなんにもクセがなくてシャキシャキして美味しいんです。

栽培は耕作放棄地を使っていますが、金網を張らないと鹿の被害に遭います。
クレソンを食べるのはなく、踏みつけてしまうので、それが困りものです。
そのためあんまり急に広げられませんが、それはそれでいいかと。
広げすぎてあちこちに出しても・・・まずは波瀬に来てくださいと。
ここでしか食べられないよと。

 

の水だけで育てているミネラルたっぷりのクレソン

うちのクレソンは川から水を引くのではなく、山から谷の水だけで育てようという約束事ではじめました。
だから山のミネラルたっぷりのお水で育っています。
とてもきれいな緑なので、全国の荒廃した畑に増やしていけたらいいなあと思い、いろいろなところに苗をお分けしています。
知り合いから「そんなにみんなに分けたら、ここのクレソンはどうなるの?」と言われることもありますが、そんなことを言う方がおかしいでしょ!
私は商売ではなく環境を良くするために、荒れた茶色い土地を緑にしたいというのが目標・・・ちょっとカッコ良すぎですけどね、そんなことを思っているんですよ。
沼田ってご存知ですか?
機械で入ることができなくほったらかしになっているんです。
そこにクレソンを植えたところ、強くて環境さえ合えばどんどん増えていくんですよ。
もともとあったセリなど端の方に追いやってしまうくらい強い植物です。

 

レソンは10月からゴールデンウィークまで

10月くらいからゴールデンウィークくらいまでが旬です。
クレソンは花が咲くと固くなって食べられなくなってしまうので。
夏もできるはできるんですが、すぐに虫が来るんですよ。
虫が来ても消毒するわけにいかないので、期間限定ということで営業しています。
このあたりでは小中学校の給食にも使っていただいて、お客さんがそれを聞いて「すごい贅沢!」って。
先日はペペロンチーノもやったそうですよ。
近くの小学校ではうちの苗を持っていって育ててもらっています。
子どもたちと一緒にプリンをつくったり、クレソンうどんをつくったりしています。
いろいろな方とのお付き合いが増えて、このことはあの人に聞けばいい、あのことはあの人に聞けばいい・・・と、ルートが広がって、心強い仲間が増えています。
東北や九州、岩国、四国などから「リタイアしたから僕たちも植えたいんだ」と中高年の男性たちが来ます。
しばらくすると、「道の駅に置くようになったよ」なんてお話も聞かせてもらえます。
なんせクレソンは楽なんですよ!!
切り株を水の中に捨てておいたら、すぐに根っこが出てきます。
肥料もいらないし、逆に肥料を入れたら味が変わるから、自然のミネラルだけで育てるのがベストなんじゃないかな。

足元を見な、と言われて。
いっぱいお宝だらけやで、と言われて。
あ、そうなんかな〜と思ってはじめて、だんだんこの土地の良さがわかってきましたね。