FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年4月6日

今日のお客様は、創作人形作家の泰良木ゆめさんです。
津にあるゆめさんのギャラリー『昭和人形館 夢うつゝ』は、心があたたかくなる空間。
ゆめさんが作った人形から、昭和の時代の音が聞こえてきます。

形を作り始めたきっかけ

名古屋へ布花を教えに行っていた折、名古屋のデパートなどで展示会などを見る機会がありました。
そのときに人間国宝といわれる方が作った人形が展示してあり、それを見て自分でも作りたいと思ったのがきっかけのひとつ。
それから、当時私が教えていた布花は、チェック柄の布や水玉の布でお花を作るという感じでした。
切って貼って巻く・・・その3工程だけなんです。
教えている私がもう、飽きてきてしまったんですね。
誰にでも作ることができる花として教えていましたが、今度は誰にも作れないものを作りたい・・・そう思ったのも、もう一つのきっかけです。
竹久夢二とか中原淳也とかそういった方がお人形を作っているということも、その頃知り、私も作ってみようかな、と。
いろいろなことが理由となり、今、人形を作っているんです。

 

の人の生き方が伝わる作品

子どもの人形を作るときには子どもの気持ちになりますね。
お母さんを作るときにはお母さんの気持ちになっているというか・・・。
そういうふうに自分の中で子どもになったり母になったり、また男になったり・・・自分の中で気持ちが入れ替わっているのに気づくことはあります。
自分が女性だということもありますが、やはり女の人は綺麗です。
体の線も何もかも。
作っていて張り合いがあり面白いので、女性は好きですね。
ただし、美人な人形はあまり作りません。
美人の人形は数ある中でも1点か2点ほど。
生まれながらの美人というのはたくさんいらっしゃいますが、女の人は生き方などでとても魅力的になってきます。
やはりそういうところを描きたいし表現したいと思います。
例えば着物にしても、見ている方が「これはお母さんの着物と一緒だわ」「おばあちゃんのこんなの着てたわ」と仰るんですよね。
そうするとその人形は、その人のお母さんになり、おばあちゃんになったりするわけです。
これだけの数の人形があると、見る人それぞれ思い入れのある人形は違うわけですから、みなさんがその人形を見に来てくださるということが、私にとっても、とても嬉しいことです。

 

形から伝わるストーリーがある

去年は、念願だったパラミタミュージアムで企画展を開催し、多くの人に楽しんでいただきました。
パラミタミュージアムの入ったところに、私の写真が貼ってあるので、お客様が気づいてくださいました。
その方たちとお話させてもらいましたが、みなさん本当にお人形を楽しんでくださって、中には号泣される方もいます。
それは男の方が多いですね。
みなさんに泣いていただいたりすると、今度作るときにはもっと泣かせてやろうとか笑わせてやろうとか、励みになります。
ストーリー仕立ての作品が多いですが、そんなもの無視してもらって構いません。
見る方が自分の物語を作ってくれたらいいんです。
そのお話を、私も一緒になって楽しませてもらっています。

 

顔には失敗作品はない

『小学校入学記念写真より』という作品があり、子供たち一人一人がさまざまな表情をしています。
私の作品、組作品が多いですから、目線とか会話しているように作るのは、やっぱりちょっと難しいですね。
人の顔をつくるせいか、私は人の顔をよく見ます。
顔って、どんな顔でもあるわけです。
顔が大きいとか目が大きいとか小さいとか、鼻が高いとか低いとか。
どんな顔も存在するわけなんです。
だから作っても失敗するということが絶対ないんです。
私の中で、失敗作品はまったくありません。
若い女性を作ろうと思って、なんとなくイメージが違うなと思って、子どもに変えてしまうことなどはあります。
が、作りかけの失敗ということはありませんね。
なぜなら、どんな顔でもあるからです。
それがいいとか悪いとか、私の中ではないですね。
美しいだけでは面白くない。
歳を取ると特にですが、やっぱりその人が生きて来た表情というのが出ますから、美しいだけではその人の魅力は語れませんよね。

人形は『ひとがた』ですから、その中に魂が入るとは思っていません。
けれど私の人形は、ものは言いませんが、お客様と対話できるということを自分で心がけています。