三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2019年7月7日

鳥羽商船高等専門学校情報機械システム工学科は、プログラムをはじめ、情報、電気電子、機械を学ぶ学科で、昨年は世界的な学生向けITコンテスト「イマジンカップ」に日本代表の一校として出場しました。
研究が進められるのは、海面養殖自動給餌の人工知能化!
真鯛養殖が盛んな南伊勢町の漁業関係者の協力のもと、スマートフォンを使った自動給餌システムの開発し、さらには出荷日に合わせて想定サイズまで成長させる人工知能を用いた給餌システムの構築を目指しています!

今、漁業が大きく変わろうとしています。
そのひとつが人工知能・AIを使った給餌システムの開発。
漁業の未来の切り開く、画期的な開発が南伊勢の海、伊勢志摩国立公園に位置する全国有数の養殖マダイの生産地で進められていました。

 


漁師の3代目である『友栄水産』の橋本純さん。
三重を代表する特産品、「伊勢まだい」を養殖しています。
伊勢まだいは、三重特産の海藻、柑橘、茶葉の粉末をエサに混ぜ、脂分を抑えたさっぱりした味わいの魚に仕上げています。
給餌器を操作する橋本さんに、仕組みをお聞きしました。

「従来の給餌器はタイマーセットのみでしたが、従来型にカメラを付けることによって、離れたところでも自分が見てるような感覚で餌をやることができます」

 

「スマートフォンのボタンコントロールで給餌する、給餌を止めるという作業をするのが新しいシステムです。

今の漁業において人材不足が一番の課題だが、今までは地元の、海に慣れている子とかを労働者として雇用することが多かった
遠隔操作の自動給餌機だと、あまり海に縁のない子でも雇えたりできるのと、僕たちの知識ではないものが組み込まれているので、エンジニア的な子たちを、労働力として雇えるのではというメリットがあると思います」

と橋本さん。

 


漁業の未来を担う開発を行っているのは、鳥羽市の『鳥羽商船高等専門学校』。
情報機械システム工学科は、プログラミングをはじめ、情報、電気電子、機械を学ぶ学科で、現在400名の学生が学んでいます。
昨年は、シアトルで開催された、世界的な学生向けITコンテスト『イマジンカップ』にも、東京大学とともに日本代表として出場しました。

 

「われわれが開発しているのは、水産業を支援する人工知能を用いた給餌システムです。
真鯛やブリを対象として遠隔で筏の様子を観察しながら、給餌ボタンを押すことによって給餌ができたり、人工知能によって自動的に給餌停止をするような仕組みをつくっています」

と、鳥羽商船高等専門学校の江崎修央教授。

 

この日は自動給餌システムについての会議が行われていました。

「水色の箱が給餌機で、モーターがオンになるとドライペレットという餌が出てくるようになっています。
今の段階では、とある時間になったら一定量吐き出すように設定して漁業者さんは運営していますが、ライブ映像を見ることができれば、食べなくなったら給餌を止めることができるようになります。
給餌の開始停止をスマートフォンでできるようにし、さら餌を食べなくなったら自動的に止めるということも研究しています」

と、江崎教授。
つまり、餌をやるきっかけさえ与えれば、コンピュータ上で操作ができるということなんですね、

 

こちらは養殖生け簀の給餌をしているときの画像。
鯛たちが積極的にエサを食べている高活性の状態、エサを食べない非活性の状態を記録し、給餌の開始・停止、継続の判断をコンピュータにさせようとしています。

 

「昼になるにつれて、画面が全体的に暗くなると、高活性なのか非活性なのか区別をつけるのが難しいですね。
自分で判断するが、わからないところは専門の方に聞いたりしています」

と、情報機械システム工学科専攻科1年の佐伯元規さん。

さらに、運用開始から出荷日日に合わせて、想定したサイズに魚を成長させる自動給餌の仕組みを研究中なのは、同じく情報機械システム工学科専攻科1年 の服部魁人さん。

「僕たちには養殖の知識がまだないので、それを漁師さんに伺いながらの作業になります。
なかなか時間はかかるなあっていうふうに感じています」

 

さらに別の日、江崎先生と学生たちは、養殖の現場である南伊勢町阿曽浦へ。
数ヶ月に一度はこうして足を運んでいるそうです。
橋本さんの船で、さっそく沖に。
橋本さんが育てている養殖マダイの筏です。

 

筏の上で作業がはじまります。
この日はカメラや制御装置を稼働させるバッテリーの交換。
今でこそこんなに小さな箱に収まっていますが、最初はこの何倍も大きかったといいます。
さらに扱いやすく、そして雨風で故障をしないよう改良を検討しています。

 

「一緒の会議に参加していたため、自動給餌器のアイデアを出したところ、それをすぐに形にできた人が江崎さんでした」

と、橋本さん。

「それまで獣害対策の遠隔の管理システムを作っていたので、その技術を持っていけばそのまますぐに転用できると思いました。
声がかかってから、確か一カ月以内に初号機を置きました。。
本当なら給餌は人がやったほうがいいと思います。
橋本さんの目で見て、もっとここで適切にあげるべきだというのは当然あるが、単純なところは機械に任せていいのではないか、そういう住み分けを考えながら、これからいろいろとつくっていかないといけないと思っています」

と江崎教授。

 

海での作業を終えたみなさんは、橋本さんの事務所に場所を移して情報交換。
主に学生たちが、養殖のプロである橋本さんに話を聞きます。
これがプログラムに反映されます。

 

「人工知能による判定はまだ正確ではないので、もう少し工夫をしたりして精度を上げていきたいなって思ってます」

と、佐伯さん。

「一番のやりがいは、やはり作ったものを実際に使ってもらうところを見るということ。
僕たちはこういう技術があるっていうのを知っていますが、生産者さんたちにまだ、技術を使っていろいろなことができるということが知られていないと感じています。
たくさんの人と知り合っていく中でどんどん活用していっていけたらなと思っています」

と、服部さん。

「最近若い人が漁業をしなくなったりで、今後誰が継ぐのかとかそういう問題があるとは思いますが、知識がなくても人工知能を使うことで養殖ができるようになれば、若者をこういう事業や産業に勧誘しやくなると思います」

と、情報機械システム工学科専攻科1年の世古口英大さん。

 

「IT技術は僕らの年代では作り出せないものなので、10代20代の子たちが作り出していき、そういう子たちが現場のことを知ってくれることが、水産業にとっても農業とっても、事業を継続するために必要だと思います。
彼らに協力してもらうことが、僕たちの産業を推進していく力になると信じます」

と、橋本さん。

エサの高騰、担い手の不足。
漁業の未来を切り開くのは、若い力と新たな技術。
人工知能AIを用いた次世代の漁業は、もうすぐそこにあります。