FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年8月24日放送

今回のお客様は川越町『株式会社スマイルコットン』の片山秀尚さんです。
肌に優しい生地をつくり、その生地を使って心地よい洋服を作っています。
カシミアのような優しい肌触りの生地。丁寧に作られてきた生地は、今、多くの人に愛されています。

父が創業してから67年

もともとは祖父が三重県の川越町で戦後立ち上げた『円網』というメリヤスのニット生地の工場でした。
当時は機械もなかったため、海外から機械を買って祖父が改造し、生地を作っては発明して、世の中に販売していったと。
その後、僕の父親が大学を出た後、工場に入って・・・という流れです。
僕はちょっと回り道をしまして、大学卒業後は一般の企業に就職しました。
15年ほどサラリーマンをして戻ってきました。
生まれたときから工場があって、工場で働いているおじさんおばさんがいて、トラック、機械の搬入、糸の搬入、いつもラジオが流れていて・・・それらの音を小さな頃から聞いていたので、頭に残っています。
見ているし覚えているので、普通にものづくりが身体に身についているというか。
サラリーマンを辞めるときも、自分が継がなかったら、せっかく作ったものがこの世からなくなっていく。
この商品を知らない人がまだまだたくさんいるのに、これはちょっとまずいな、と。
そういう思いが強くなり、安定しているサラリーマンを捨てたという形ですね。

 

発当初の45年前は高くて売れなかった。15年前からニーズが多くなった

スマイルコットンは45年前に、綿でカシミヤタッチなものを作りたい、肌触りの良いものを作りたいとの思いから、開発した糸と生地です。
開発当時の45年前は値段も高く、生産性の問題もあり、あまり売れませんでした。
15年ほど前に東京の展示会に出展し、そこから大手の百貨店や全国にお店を持っている小売さんとの取引がスタートして、今も長くお付き合いさせてもらっています。
その結果、そこで見たり購入したりしたお客さんが生地を取り扱いたいとか、商品を買わせてほしいと言ってもらい、続いています。
スマイルコットンの特徴は、綿なのに軽くて柔らかくて、汗の吸いも良くて乾きも良い。
一番の特徴が水分を吸うと固くなること。
これは強度が強くなるんですね。
綿の特徴なんですが、一度そうなるとなかなか戻りにくい。
なので、生地がちょっと痩せたと感じたら、それは強度が強くなったということなんです。
もともと繊維には撚りがありまして、その撚りをほぐすことによって、繊維にたくさん空気の層を作ります。
たくさんの層を作ることによって、汗、水の吸水性が上がりますし、風通しが良ければTシャツなど1時間くらいで乾きます。
洗濯後の柔らかさも続きます。
固くなりにくい素材なんですね。
で、一番の特徴は軽い。
普段着ている商品からスマイルコットンの商品を着てもらうと、軽いなと感じると思います。

 

品の感想が全国から寄せられる。この生地を大切にしなければならない

継いだきっかけは、この商品を僕が継がなかったらなくなるな、という思いでした。
さらに、ある日実家に帰ったら、お客さんたちからお手紙が来ていたのを見つけたんです。
全国各地から。
赤ちゃん用の服を買ったとか、パジャマをスマイルコットンに変えたらぐっすり眠れるようになったとか。
ものを作って、喜ばれる。
実際の体験の言葉は、やっぱりすごいなと。
僕自身も、同じものづくりしているけど、こういう感動を誰かに与えられているのかなと、その時強く思いました。
自分はこの家で生まれて、祖父が始め、父が継いで、この家でものづくりの音を聴いて・・・父親が朝早くから夜遅くまで働いているのを見ていましたし、祖父の話もたくさん聞いてきました。
変えるところと変えないところをちゃんとすれば、もっと世の中の人に知ってもらえるのではと思い、会社をやめて今に至っています。

 

品に関わる人とは必ず会って、話をしっかりとする

前職だと、海外で物を作って国内に持ってきて指定の場所に納品したら、それで終わり。
その先は考えませんでした。
でも今の、スマイルコットンではその先まで考えないといけない。
本当に喜んでもらえたか・・・うちのことを良いと思ってくださるお客様に対しては、可能な限り直接顔を見に行くし、話もさせてもらいます。
今はメールなど簡単に連絡を取れるツールがいっぱいありますが、最終的には人と人がちゃんと会って、どういう方が買って使ってくれているのか、どういう人間が作っているのかの、信用が大事だと思います。
スマイルコットンの生地に携わっている人はたくさんいます。
糸を作って編立をして、染めて縫製して・・・。
特に繊維は、たくさんの人の、多岐にわたる分業が集積した産業であり商品なので、そういう思いもあります。
また、商品を喜んで使ってもらっていることを、作ってくれた人にフィードバックして、良かったことや課題点を会いに行って伝えます。
買ってくれた方、作ってくれている人、どちらに対してもちゃんとします。
メールや電話など便利なツールもありますが、だからこそ直接顔を見ることが大事だと思います。

言葉がなくても五感に訴えられる商品。
それを責任を持って、感動してもらえるような商品を作り続けていきたいですね。