FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年5月5日放送

今回のお客様は、三重県環境生活部で、新博物館建設のお仕事に携わっている安藤亨さんです。
只今建設中の三重県立新博物館は、どんな風に完成するのでしょうか。

ここがエントランスになるのかな? ここはミーティングルームかなあ。

新博物館のいろいろ、ちょっと早くみなさんにお知らせします。

■新博物館づくりにかける思い

僕はですね、何かするときに常に面白いところを見つけるタイプなんです。
だから、いつも楽しくやっているように見られる(笑)

例えば、名刺にはサンショウウオの絵が描かれています。
裏には『サンショウウオとは』とか、博物館の移動展示の案内とかも書いてあってね。
もちろんそれは、僕が自分で書いているんです。
ちょっと面白いでしょ。

他にも、見学会に来た方に「コレちょっと描いたんで、どうぞ」と言って、絵葉書を渡したりもします。
ここでしか手に入らないレア物だというと、みなさん喜んでくれるんですよ(笑)
これは手描きではなく、プリンターで、5~6種類位作ってあります。
これを渡すと、ついつい堅い雰囲気になりがちなシチュエーションでも、ふっと場が和むんですよ。
場が和むと、相手が話をすっと聞いてくれますしね。

他にも、細かい説明書きも作ったりしますよ。
僕は建築技師なんで、普段から描くことで覚えるというクセがあるんです。

写真だと覚えられなくても、描くことで覚えていることってあるでしょ。
例えば、そこに置いてある物の前後関係、色、その場所の気温、匂い…描くことで、非常に良く思い出すんです。
写真を撮るより、その時の状況が心に残りやすいというか。

以前から美術館や博物館に携わりたいと思っていたので、色々な場所でスケッチもしました。

『安藤メモ』とでも言うのかな。

ある博物館のライトの形や、柱の模様、足あとの写真、などなど…描くということは覚えること。
これまでやりたいな、伝えたいな、と思い描いていたことを、今回の博物館づくりに投入できる機会ができて、嬉しいですね。

何かを説明するときに、イメージを共有するために「○○博物館のここ」というと、みんなに伝わりやすい。
設計者さんと施工者さんと話すときに「あそこの博物館のこういうことみたいなこと?」パパっと説明がつく。

設計者さんや施工者さんや、建築技師…僕だけじゃなく、みなさんも勉強しているんですね。

施工の現場所長、副所長、設計士さんで現場で中心になっている女性2名…全体的に、いいものを作ろうという気持ちがすごく強いです!
これは口では説明が難しいが、感覚でわかりますね。

建築現場のスローガン。

『地図に残る現場を、記憶に残る現場を』

これだけ読んでも、かなり熱いエネルギーを感じるでしょ!

■ずっと博物館作りに関わりたかった

県としては、営繕課というところが、建物を作ったり管理する部署となります。
今回の博物館のような大きな規模となると、建築技師が博物館本体に、私を含めて2人配属されています。
これは全体的に見るような立場ですね。

僕の肩書きは、一応、一級建築士。
一級建築士というと、自分で建築して事務所を構えて独立…というイメージがありますが、僕のような県の職員にもいるんですよ。
現在、職員としての建築技師は数十名かな。

県に入る前は7年くらい、建設会社でマンションの設計や建築をしていたんですよ。
なぜ公務員になったかというと、ゼネコン(建築会社)の設計は設計施工なので、公共建築物の設計が基本できないからです。
というのは、公共建築物は、設計と施工を切り離すと決まっているんですね。
設計は設計事務所、施工は建設会社で、入札制で。

学生時代から、設計を志している人は、博物館や美術館の設計に関わってみたいものなんですよ。
県の職員になったら、直接の設計は出来ないながらも、建設には携われるかなあ、と。
それももちろん、確約はないんですけど(笑)

でも、縁あってさせていただいているんで、本当に嬉しいですね!

美術館、博物館をやりたいと思ったキッカケは、卒業設計で、伊勢の駅前に博物館、美術館、記念館などのコンプレックス施設の設計をしたことから。
その設計を通して、僕のアイディアや思いが、設計なり建設に生かされればいいな、と。

■『ミエゾウ』の足跡が出土!工事が1ヶ月ストップ?

このあたりに、350万年前の『亀山層』という地層があるのは、以前から知られていました。
そこで何か発見される可能性があるということで、、工事の最中に注意深く確認しながら作業していたところ、『ミエゾウ』が歩いていたと思われる、足跡が発見されたんです!
その数40くらい。
これはトレースして保存してあります。

つまり、この博物館の建設現場には『ミエゾウ』らしきものが歩いていたということなんです!

ロマンがありますよね~…。

足跡の大きさは…どうかな…腕を大きく広げたぐらい。
学芸員さんに聞いたら、正確な大きさを教えてくれると思いますよ。

工事は全部ストップ!…しませんでしたよ(笑)
他の部分は工事を進めて、その部分だけは1ヶ月ほど、工事をストップ。
その間に、調査を2回ほど行いました。

私が配属されたのが2011年の4月。
1次調査が3月、2次調査が5月に行われました。
まさか博物館を建設しようとする場所に『ミエゾウ』の足跡が発見されるとは思いませんでしたが、ある意味、まさに博物館を建設するにふさわしい場所だったんだな…と、妙に納得しましたね。

あ、もちろん博物館マスコットキャラクター、オオサンショウウオの『さんちゃん』も忘れちゃいませんよ!
新博物館の、エントランスホールを入って左手…メインの場所にちゃんとお部屋を用意しています。

■平成26年春の完成に向けて、みんなで作る新博物館を目指す!

建設中の博物館は平成26年の春、オープン予定です。
建物は来年出来上がりますが、そのあと1年間色々準備をする必要があるので。

そうなんです、博物館は普通の建物のように、完成したらすぐにオープン…というわけにはいかないんです。

それは、収蔵物や展示物を守るため。
新築の場合、建物から、アンモニアなどの化学物質が出てくるんですが、これが収蔵物に悪影響を与える恐れがあるんです。
アンモニアなどの化学物質を安定させるためには、およそ2夏置くと良いとと言われています。
今年の夏前にコンクリートを打ち上げて、今年、来年の夏…それを見越して、オープンを平成26年に設定したんですよ。

完成する新博物館は、資料、収蔵庫も多いですが、自由に使えるスペースを用意しています。
もちろん来館してくれるお客様に対してです。

そのスペースの名は『交流創造エリア』。
新博物館では、ミーティングや、さまざまな活動、資料を見る、図書を調べる…そういうことを最初から想定しているんですね。
ここは基本、自由に入ってもらって、来館者の方々に楽しんでいただきたいです。

今回、新博物館の建設に携わってから感じたことなんですが。
美術館というのは、静かなイメージがありますよね。
しかし、博物館は、わりと参加するイメージなんですよ。
他の博物館を見たり、学芸員さんの話を聞いても、それは同じ。
学芸員と来館者が一緒に参加して、みんなで創っていく、鑑賞する…ガイガイワヤワヤしている感じ。

平成26年の春のオープンに向けて、もっともっと、来館者のみなさんが、楽しめ学べる新博物館作りをしていきますよ!