『ミエてくる』2019年11月15日

秋から冬にかけて最も口にする機会の多い果物と言えば「みかん」ではないでしょうか。
南北に長い三重県でも、温暖な県南部でみかん栽培は盛んに行われています。
そこで、美味しいみかんの産地として地元では特に名高い度会郡南伊勢町内瀬(ないぜ)地区でみかんを育てる農家さんを訪ねてみました。
「ちょっと小粒だが甘くて美味しい」と指名買いまでされる内瀬みかんの魅力に迫ります。

今回訪ねたのは、内瀬地区にある「アサヒ農園」さんです。
代表の田所一成さんはみかん農家の4代目、2.5haのみかん畑を家族みんなで管理しています。

 

田所さんが育てているのは温州みかんを筆頭に、デコポン、カラ(カラマンダリン)、せとか、ブラッドオレンジなど8種類の柑橘類。
それぞれ収穫時期が異なるので、秋冬だけでなく年間を通じて柑橘類を出荷しています。

まずは温州みかんの畑へ連れて行ってもらいました。

 

海と山に囲まれた内瀬地区は平地が少なく、山の斜面にみかん畑は作られていました。
リアス式海岸の五ヶ所湾を望むみかん畑は日当たりが良くポカポカ。
たっぷりと陽の光を受けて、みかんの実がたくさん実っています。
ひと口に「温州みかん」といっても、収穫時期の早い極早生、それより少し時期の送れる早生など、様々な種類があることを教えていただきました。
地面には少しでも実を大きく甘くするため摘果された固い未成熟のみかんが転がっています。
「これの活用法がなにかあればなぁ」
せっかくここまで育てたみかん、ひとつもムダにしたくないと田所さんは言います。

 

アサヒ農園では温州みかんをハウス栽培も行っています。
ハウスみかんの出荷は夏頃で、主にお中元など贈答用として用いられるそうです。
以前、春頃に訪れた時は白い花がいっぱい咲いていました。

 

ハウス内は気温が調節されており、気温が低いときは木の間に張り巡らされた太いチューブに温風が流し込まれ、温度を上げます。
また、雨風や害虫の影響がなく、与える水の量も人間がコントロールできるので、露地栽培のものより一回り大きく、甘く作れるそうです。

 

最近、注目を集めているのが「せとか」と言われる柑橘類。濃厚な甘みと溢れるほどの果汁を持ち、別名「みかんの大トロ」とも言われるほどのものです。
みかんよりも2回り以上大きいのに、外側の皮は手で簡単に剥けるほど薄く、さらに内側の皮もそのまま食べられるほど柔らか。
田所さんが育てるせとかは銀座にある高級フルーツショップで1個1,000円以上の値が付けられるほどの、抜群の味わいです。

 

せとかのハウスを見てみると、その価格も納得の手をかけた丁寧な栽培を見ることができました。
果実の重さで折れないよう、実のなった枝は一本一本を縄で吊し、さらに柔らかい実が傷つかないよう、ひとつひとつの実に袋がけされています。
もちろん全て手作業で行われています。
そうして育ったせとかを見てみて下さい。

 

外皮も実も濃いオレンジ色に色づいたせとかは、溢れるほどしたたる果汁、爽やかな香り、口の中いっぱいに広がる甘み。今まで食べていたみかんとは、ひと味もふた味も異なる異次元の美味しさです。
せとかの出荷時期は3月中旬頃から4月下旬にかけて。
もうしばらくお待ち下さい。

 

地域おこし協力隊として南伊勢町へやってきた女性を受け入れたり、志摩市にある有名ホテルのシェフとの交流を深めたりと、田所さんはいちみかん農家として地域とのつながりも強めています。
また、内瀬地区でみかんを育てる農家をとり仕切り、内瀬柑橘出荷組合の組合長として「内瀬みかん」の普及にも尽力。
田所さんのみかんは南伊勢町のサニーロード沿いにある「産直市場みなみいせ」や、志摩市磯部町の産直所「恵みの郷 志摩海道」などで販売されています。

「みかんの木が健康でなければ、美味しい実は成らない」
みかん農家となって20年以上。
農薬の使用を必要最小限にし、緑肥や有機肥料を土作りに用いるなど、我が子を育てるように大切にみかんを育てる田所さん。その結果、温州みかんとデコポンは「みえの安心食材」にも認定されました。
内瀬の土と風と太陽と、田所さんたちの愛情を受けて、美味しいみかんが今日も育っています。