FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年12月14日放送

今回のお客様は、玉城町にある『玉城園芸株式会社』の北川雅紀さんです。
玉城園芸では、野菜の苗や花苗を中心にさつまいも、そしてエディブルフラワーの栽培を行っています。
食べることができる花、エディブルフラワーとはどんな花なのでしょうか?

産者が少ないので世の中に流通していないエディブルフラワー

エディブルフラワーは、まだあまり世の中に流通していないですね。
まだ生産者が少なく、流通していないから、みなさんあまり触れていないし食べてこなかったと思います。
だから『エディブルフラワー』と言っても、あまりピンとこないかもしれません。
『食べられる花』という意味です。
花の種類で、味は全く違います。
酸っぱいのもあれば甘いものもあり、苦いものもあり、蜜があったり。
花の中の色によっても味が変わります。
黄色だと香りが強いです。
ジュリアンという冬の花がありますが、黄色は香りが強いです。
パンジーも50色くらいありますが、花の色によって違います。
白は無味に近い、赤とか黄色だとパンジーの味がします。
ホテルや料理屋さんに卸していますが、料理長の好みによって卸す花が変わりますね。
赤などの派手な色を好むお店もあれば、カラフルに色をたくさん欲しいというところもあります。
料理人のセンスと趣味、それから料理との相性ですね。
私が、単純に食べるのが好きなのと、誰もやっていないからやってみようと思ったのが2年ほど前。
他の企業や、ホテルやレストランに出荷しているというレベルでやっているところは全国でもまったくないので、東京のエディブルフラワーをやっているところに見せに行ったりしていました。
日本中、誰もエディブルフラワーをわかっていないと思います。
本にもなっていないし、学問にも何もなっていないのでやるしかないんですよね。
やって覚える、やって試すしかないという感じですね。
もうちょっとしたら本や学問としてまとめられるのかもしれませんが、今はまだ、わかっていないです。

 

フトクリームの上に飾ったり、ドリンクの氷に花を閉じ込めている

エディブルフラワーが今、食べられるのは高級フレンチとか・・・。
高級なところでしかエディブルフラワーは扱っていません。
これをもっと広めようとは今年の7月、伊勢院宮の外宮参道に『オハナサンカフェ (ohana sun cafe)』をオープンしました。
一般の人はあまり食べたことがないため、一言目は『きれい』と言います。
きれい、可愛いというのが先にあって、味はそれぞれですよね。
苦いのに当たったお客様もいれば、ベゴニアという酸っぱくて美味しい花に当たって、喜んでくれる人もいます。
あんまりクセが強くないのを使っているので、「意外と味がしないんですね」との感想が多いですかね。
エディブルフラワーは甘いものと相性が良いので、ソフトクリームに乗せたり、花束のように飾り付けたり、あとはドリンクの氷の中に花を閉じ込めて、ドリンクの上にも花を浮かせる、とか。
ウチは三重県で一番サツマイモを作っているのですが、そのサツマイモスイーツ、スイートポテトや大学芋に花を乗せてお出ししたりしています。
お客さんの95%くらいは女性ですね。
でも、2週間くらい前に80代のおじいちゃん4人が来てくれました。
3階なんですけど、息を荒げて昇ってきて、「花やな」というくらいの感想で、食べていってくれました。
手軽にみんなが食べられるメニューで、値段で、エディブルフラワーを知ってほしいとの思いから開店しました。
そういうのが広まっているというか、知ってもらえて、開店して良かったなと思っています。

 

害に左右されにくいサツマイモを暖房の効いたハウスを使い作っている

取り組んでいることの1つにサツマイモの栽培があります。
サツマイモの利点は、あまり災害に左右されないということ。
キャベツなど台風で水に浸かるとダメになってしまいますが、サツマイモは地中にあるので、水にも風にもあまり影響を受けないんです。
半年ほど保存も効きます。
というわけで便利ですし、あの自然な甘さが好まれるので、近年需要が増していると思います。
サツマイモは温度が10度を切ると腐ってくるんですよ。
だから三重県内の普通の農家では作れないですよね。
ウチは花用の暖房のあるハウスがあるので、そこで10度を切らないように保管できるので腐りません。
残念ながら、ハウスとか暖房の設備がないと作っても保存できないというのが、もっと需要があるのに進んでいかない要因ですね、きっと。
化学的にデータを読んで作っていくというのが、利益を生んだりより良いものを作っていける要因だと思います。
僕は会社員もしていましたし、公務員みたいなこともしてきましたが、農業に関しては勘とか言い伝えが多かったので、それはまあ、あまりアテにならないですね。
もちろん経験してわかることもありますが。
やはり学問として、新しい農業のやり方をデータ分析しながら進めていかないと、これからの時代の農業はダメだなと思います。

 

ボタンが色づかないので生産を控える。もっとおいしいエディブルフラワーを作る

地球温暖化は、農業をしている中で、大きな問題です。
今まで夏に作っていたものも、できなくなってきました。
例えば、今、葉ボタンが最盛期なんですけど、寒い時期になって初めて黄色とか赤の色がついてくるんです。
しかし最近は寒くなるのが遅いので色づかないんですね。
ということは、もう栽培をやめたほうが良いのでは、と。
はボタンは、東北とか北海道のみで栽培できるものになってきたのかもしれないですよね。
そんなことは考えます、今まで通りではないということですね。
大きなメーカーさんと付き合っていると、全国の情報などとても知っているんです。
そういうことを意識して聞くようにしていますし、小さな地域に閉じこもっていたらダメだなと思います。
でもいちばん大事なのは近いところでもあります。
地元を大事にしないと、農業は無理だと思います。
地元で安定的に商売させてもらって、それをほったらかしにしないようにしつつ外に出ていって、いろいろな情報をもらったり新しいことをしていかないとダメだと思います。
『作ること』、つまり生産が主で、サツマイモを作る、エディブルフラワーを作る、花を作る。
そこから第一歩踏み出したのが、カフェ。
さらに自分で作ったものを自分とどこかで協力して、加工していったら面白いんじゃないかと進んだのがお土産のジャンル。
地域に旅行に来てもらった人が、お花の入ったケーキやサツマイモの入ったお菓子などを買って行ってもらって、全国で食べてもらう。
そういうことをすれば次の段階、地元から全国への発信とつなげることができると思います。
そのためにはもうちょっと美味しい花を作らないと、と思います。
今のところ、味がないとちょっと美味しいくらいが一番上くらいなんで。
美味しいなと思われたら無敵だと思います、なんせきれいですから。
そういう花を作っていきたいですね。