FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年12月28日放送

今日のお客様は、亀山市能褒野(のぼの)にある造家(ぞうか)工房亀井の代表、亀井俊博さんがお客様です。
大工や職人が集まってみんなでいい仕事ができたらもっと楽しくなる。
亀井さんの想いがふくらみ『のぼの職人村』が誕生しました。
亀井さんは、住宅建築、古民家再生、そして社寺建築と呼ばれるお寺や神社の建築にも携わっています。
宮大工としての誇りを持って、次の世代につないでいます。

ぼの職人村を作ったきっかけ

職人の技術の低下が一番ですが、一人ひとりでがんばっていても、なかなかね。
みんなが集まって大勢で発信していけば、もっと伝わっていけるかな、と。
そのためにも職人村を作っていました。
大工が5人と見習いが2人、それからパン工房の職人さんと事務員さんが数名います。
手作りにこだわり、コツコツみんなでやることを心がけています。
若手のなり手が少なくなってきて、年配の人がどんどんやめていく中で、技術の継承が難しくなっています。
まだ今は、僕らを含めてベテランの大工や職人がいるので、その間にどんどん若い人たちにいろいろな仕事を見せて伝えていかないとな、と思いました。

 

寺建築は、手を合わせてもらえるような建物に

住宅だけで物足りなくなった大工が次に目指すと、神社仏閣という仕事になってくると思います。
そういう子たちが上を目指せるような仕事を取っていきたいですね。
住宅は人が住む場所ですが、お寺や神社は人に手を合わせてもらう場所です。
そこの建物の差というか、手を合わせる建物は、手を合わせたくなる建物を作らなければなりません。
そこにいろいろな要素が含まれているので、それが宮大工の難しさだと思います。
上を目指していきたい人は、やはりそこを目指すのだと思います。
お寺や神社などの宗教系の建物は大手が受注することが多いので、僕らのような小さな会社はあまり入ることができません。
しかし改修工事は、みんなが望んでいるところがいっぱいあり、金額もそんなに大きくないので、わりとよく頼んでもらいます。
ただ、どんな大工でもできるのかというとそうではなく、お寺や神社に対する知識がないと携わることができません。

 

ミやカンナの使い方を見て、昔の職人と会話することができる

新築は新しい家を作るだけですが、改修工事は昔の仕事を見ることができるんですよね。
それが逆に新しい技術を教えてくれるというか。
僕らもほとんど改修工事で勉強してきたんですが、その技術を見ることができます。
「この大工は下手だな」とか「ここはこういうこだわりで彫ったんだな」とか。
そうすると僕らも、昔の仕事を教えてもらえるというか。
けっこういい仕事をしてあると、負けん気が出て、この大工よりもっと良い仕事をしてやろうと思ったりしますね。
常に見られてもいいような仕事を心がけています。
ウチの家の特徴といえば、土壁。
竹でコマイを編んで、荒壁・土壁を付けていきます。
それを付けてもらう工法と、昔ながらの手で刻む材木。
プレカットという工場で大量生産してしまうような建物ではなく、コツコツ一つずつ仕口、継手、そういう加工場所をみんな手で加工して一つ一つ手で組んでいく・・・それがこだわりですね。

 

標は自分が建てた家が古民家になること

家が百軒あっても土壁を使っている家は、その中で一軒あるかないくらい。
健康的な建物だと思うので、逆のほうがいいと思うんですけどねえ。
ちょっと歯がゆいですが、少しでも昔ながらの土壁の身体にも良い家を増やすために、職人村でがんばって、いっぱい建てていきたいなあと、みんなで頑張っています。
仕事柄、お寺や古民家の改修に携わっていますが、目標は自分が建てた家が古民家になること。
ということは80年とか100年とか・・・。
二代、三代と住み継いで行ってほしいですね。
しかしこれはちょっと難しいと思うんですよ。
住みやすいのもあるけど、愛着。
そういうのも大事かな、と。
だから材料などもこだわって、愛着の持てる家を建てていきたいですね。
それともちろん、技術の継承。
本当に切羽詰まっていますね。
なり手が少なくなってきた中で、若手がなっても、技術のいらない仕事の方に走ってしまうもので、僕らのようにものづくりができる大工が絶対減ってきています。
ここではそうならないように、少しでも僕のDNAというか、ものづくりを手でできる人間を増やしていきたいです。
僕らは昔の大工との対話をしながら仕事を覚えさせてもらいました。
そのためにこういう土壁とか木の家を、少しでも建ててもらえるよう、増やしていきたいと思います。