「ふれあい」Vol.35 2012年5月号

錦では、4年前から『ISOMONフェスタ』という海開きイベントが開催されています。
踊り好きの6人のメンバーが始めたイベントが今では、錦の夏の風物詩になっています。
地元の伝統行事と祭り・文化を織り込んだ楽しいフェスタにかける情熱と、伝統を守り伝えていく思いについて伺いました。

※ISOMON6とは
「磯の貝」「海辺の住民」の総称である「磯もん」と活動を始めた6名が6の乗法で仲間が増えて欲しいという願いを込めて命名。
 海開き・海の神事を通した『ISOMONフェスタ』、地域にまつわる民話・風習を集め紙芝居にする『物語おこし』、地域に伝わる漁師料理を紹介する『汐の食卓』という3つの活動を通じて、大好きな錦の伝統・文化の伝承を目的に活動。


ISOMON6代表 西村 元美さん

■この町が大好き! だから、もっと錦の良さを知ってほしい

私たちが最初に取り組んだ『ISOMONフェスタ』は、トロピカルガーデン・錦向井ヶ浜遊パークで行う海開きのイベントで、今年で4回目になります。
海開きの初日には、浅間(せんげん)さんと呼ばれる海の安全を祈願する行事を行います。
そして、河童に「ずぅ(髄)」を抜かれないようにと、海に入る前には「へんば焼き」という小麦粉と黒糖を混ぜて焼いたお菓子を食べる風習があります。
私たちが子どもの頃まではどちらも当たり前の行事でしたが、近頃ではあまり意識されていないのではと感じています。
地域の伝統が薄れつつあることに不安を感じた私たちは、皆が集まるイベントを通じて錦の伝統行事や祭り、食文化を継続させることにしたのです。

次に地域の伝統や文化を残すため、地元に伝わる民話などの一つひとつを一枚の紙芝居に残す「物語おこし」を始めました。
地元のお年寄りの方からの話をもとに、今では約30話を紙芝居にすることができました。
これを50話つくることが当面の目標です。
将来的には民話で登場した場所などを掲載した錦マップづくりを行うとともに紙芝居を「かるた」にして、錦以外の皆さんにも物語を紹介していきたいと思っています。

そして、民話では「へんば焼き」以外にも今ではあまり食べられていない「食」が登場します。
今でも人が集まる場では70代から80代の皆さんがつくる郷土のごちそうが並びますが、残念ながら私たちの世代ではそれら料理のレシピをあまり知りません。
これではいけないと思い、地域のお年寄りからレシピを教わっています。
『汐の食卓』はそれらの郷土料理を楽しみに来られた皆さんに喜んでいただくとともに錦に興味を持っていただきたいと願いを込めて始めました。

今後も家族の理解と地域の協力に感謝しながら、ボランティア精神で錦の伝統・文化を伝承していく活動に取り組んでいきたいと思います。

第4回『ISOMONフェスタ』のご案内
●日時/7月8日(日)9:00~15:00
●場所/トロピカルガーデン・向井ケ浜遊パーク
●入場無料
[問い合わせ]大紀町役場商工観光課 ☎0598-86-2243




中西ちづるさん



谷口 奈里さん



糸川 博子さん

■『ISOMONフェスタ』を一緒に盛り上げてほしい

最初の年は本当に苦労しました。
少ない経費でいかに運営するかで非常に悩みましたね。
回を追うごとに思いを共有する仲間ができて、イベントが盛り上がっていくことを実感しました。
その機運に乗りおくれないようがんばりすぎて、熱中症で倒れたこともあります。
フェスタの前に行う浜の清掃作業は、地元の小学生や尾鷲のソーランチームなども参加してくれました。フェスタの準備は大変ですが、とても楽しいですよ。
スタッフがもっと増えてほしいですね。





谷口 満穂さん

■物語おこしから地元の良さを再発見!

紙芝居の絵や物語などほぼメンバーで作成しています。
最初はどこから手をつけていいかわからず、本当に苦労しました。
ここ錦は古事記・日本書記に神武天皇上陸の地とされる土地で、丹敷戸畔(にしきとべ)という豪族がいたそうです。
そういう歴史や物語を題材にした紙芝居を見てくれた子どもたちが一枚の絵から物語を想像し、自分なりに理解しようと真剣に聞き、「よくわかったよ」と喜んでくれますね。
紙芝居は子どもたちに大きな刺激を与えたようで、「紙芝居を劇でやってみたい」「将来はアナウンサーになりたい」と積極的に声をかけてくれます。
紙芝居を通じて、それぞれの夢が膨らんでいるようでうれしいですね。
私たちももっと錦のことを勉強するとともに、子どもたちにも故郷に誇りを持って欲しいですね。



中世古 由起子さん

■錦は地元の人が気付かない、おいしいものの宝庫

群馬から嫁いできたので、魚のおろし方や料理の仕方を錦で一から教わりました。
『汐の食卓』では、錦の皆さんがご自宅で食べているような料理を出しています。
小さくて市場に出せない魚は骨ごとミンチにして調理するなど工夫が凝らされています。
ここを始めたとき、錦の皆さんからは「錦はなんにもないで大変やな」と言われましたが、外から見ると素晴らしいものや発見がありますね。
今は予約制で土日のみの営業ですが、将来はいつ来ても料理を楽しんでもらえるお店にしたいです。


◉お問い合わせ先/代表 西村 ☎090-6085-6744