FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年2月1日放送

伊賀・島ヶ原、正月堂の『修正会(しゅしょうえ)』の時期が近づいてきました。
伊賀路に春を告げる行事の1つです。
その正月堂の近くに今年で創業123年を迎える福岡醤油店があります。
120年以上続く伝統の技法を受け継ぎながら、時代に合った商品を作りだしてきました。
醤油『はさめず』は先代のこだわりの一品です。
今回のお客様、三代目のご主人川向啓造さんに、お醤油の話をうかがいましょう。

賀島ヶ原は4つの県の境 盆地は醤油を作るのに適している

南に行けば奈良、北へ行けば滋賀、西に行けば京都と、4県の境目となります。
盆地になっているので、本来、冬はとても寒いです。
それがお醤油を仕込むのにとても良い気候と言えます。
会社の大小などで醤油の作り方がいろいろ違いますが、私どものところでは自然な仕込みをしています。
今から4月くらいまでが仕込みの時期。
5月くらいから夏にかけては熟成に時期ですね。
そして年末くらいに搾ることができるようになります。
ウチの場合は常に蔵にもろみがいますので、常に搾りたてです。
三重県の登録有形文化財に指定されている蔵で、創業当時からの桶でじっくりともろみを熟成させます。
北西、南西、県外では奈良や大阪、名古屋や滋賀からは、直接買いに見えられるお客さんが多いですね。

 

油を作るというより料理を作っているという意識

お醤油というのは嗜好品なので、ご自身の味の好み、あるいは天然のものであるとか、いろいろなこだわりがあると思います。
一回気にいると、リピーターになられる方が多いですね。
よく『はさめず』の意味を聞かれます。
もともと『はさめず』とは『はさめない』という意味。
我々は液体の醤油を作っているわけですが、心構えとして、単に調味料を作っているのではなく、料理を作っているという気持ちです。
普通のお料理ですとお箸ではさんでいただくわけですが、この料理だけは液体なのではさめない・・・ということで、はさめない醤油から『はさめず』と名付けられました。
今の会長である先代が付けた名前でして、もともとは京都の方の板前さんからヒントを得て付けたと聞いています。

 

代は味の追及を徹底的にやってきた

食品ですので、なんやかんや言っても美味しければ意味がないですよね。
先代がずっと味の追求を徹底的にやりました。
それがはさめずの生命線だと思います。
県内でも現在、組合に加入しているところは40社を切って来ています。
伊賀でも昔は8社10社とありましたが、今では3社くらいに減ってきました。
お醤油屋だけで続けていくというのは厳しい部分がありますね。
お醤油業界に限らず、続けていくというのは難しい時代になっているなと感じます。
昔はお醤油だけで食べていけましたが、やはり高齢化してきて、お醤油を使う量も全体的に減ってきています。
お醤油は一気に飲むものではないので、次に買いに来ていただくまでの『つなぎ』となる商品を作っていかないと、なかなかお客様との接点が遠くなってしまいます。
お醤油はまだあるけど、この商品が欲しい・・・と思っていただけるような、醤油以外の商品開発を心がけています。
流行りを追うのではなく、脇役の商品づくりを目指し、従業員の人たちと一緒に挑戦しています。

 

模が小さいので小回りが利く。ニーズに応えた商品を作っている

お客様が求めているところをうまくキャッチしてそれに合ったものを提供する・・・それに尽きると思います。
ウチは規模が小さいだけに、新商品を作るにしても小回りが利くんですね。
決断が早くできるし、小さい会社ならではの良さを出していきたいですね。
最近、日本を訪れてくれる外国人のお客様が増えていますよね。
日本人のみなさん中心に商品を開発していますが、日本の食文化としてのお醤油を、外国の方にもわかっていただけるような、そういったことができるといいなと思っています。
現在、創業して123年です。
せっかくここまで頑張ってきたので、この先20年、30年続けていきたいと思いますし、若い人にバトンタッチして、さらに続いていけるような会社にしていきたいですね。

従業員の人達と一緒に挑戦している商品開発。
流行りを追うのではなく、脇役の商品づくりを目指しています。
しっかりした原材料を選ぶことが大切です。
お醤油は早く商品化したいと思いますが、我慢して、もう少しじっくり寝かしましょうねというところがあります。