三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2020年3月15日放送

『伊勢あさくさ海苔保存会』は、幻の海苔とも言われる三重県産のアサクサノリを『伊勢あさくさ海苔』として養殖に取り組み、三重県や県漁連、三重大学・企業の支援を受けて独自ブランドを確立!
アサクサノリは昭和30年代までは日本の食卓にあがる海苔だった。
しかし、環境の変化や育てるのが難しいことから違う種類の海苔に変わった。
現在では、環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅰ類に指定されている。
三重県では平成23年に自生しているアサクサノリを採取、平成25年から養殖を開始!
2年前の平成29年には国内での最高価格で競り落とされるなどした 『伊勢あさくさ海苔』
『伊勢あさくさ海苔』の紹介と、アサクサノリが出来るまでの2年間に密着!
アサクサノリの種付けから張り込みを経て、摘採作業となるが、その出来はどうだったのか・・・?
3回連続放送の完結編です!

昭和30年ごろまで、日本の食卓で食べられる海苔といえば、アサクサノリのことでした。

 

しかし、アサクサノリは環境の変化、病気に弱く、環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅰ類に指定。
平成23年に三重県内で自生しているアサクサノリを採取、平成25年から一部漁場において養殖がはじめられました。

 

そんな幻のアサクサノリを復活させ、三重の新たな海のブランドとして売り出していこう、と取り組んできたのが、『伊勢あさくさ海苔保存会』のみなさん。
県漁連、三重県、三重大学、そして企業の支援を受けて、収穫量を伸ばしてきました。
しかし昨年、まさかの全滅。

「水温が上がったなど、環境の変化ですね。
5年ぐらいは順調に来ていたのですが、去年は本当に壊滅しました。
主力であるスサビノリも前年対比17パーセントほどの生産量ということで相当厳しい状況に陥りました」

『伊勢あさくさ海苔保存会』会長であり、『伊曽島漁業協同組合』組合長の服部 茂さん。

「ノリは潮の満ち引きによって海水に浸かったり、一時的に外気に触れたりということを繰り返しながら成長していきます。
昨年度は『異常潮位』と言って潮位変動が安定していなかったのと、網の管理が非常に難しい漁技だったことが、去年の不作になった経緯の一つだと我々は考えています」

と、三重県水産研究所鈴鹿水産研究室の岩出将英主査研究員。

危機的な状況の中、奇跡の復活を信じて、今シーズンに挑んできました。

 

伊勢アサクサノリ、奇跡の復活までの道のり。
それは昨シーズンの全滅直後からはじまりました。
県漁連、三重県、三重大学とともに対応策をしっかりと考え、できることを一つ残さずやった上で種を海へ・・・・。

 

みなさんの思いに自然の力も味方して、再びアサクサノリは育ちました。

収穫されたアサクサノリは、海からそのまま加工場へと運ばれ、重さ、厚さ、そして水分含有量をきびしく調整して製品化。

その後、名古屋にある協力企業のラボに運ばれ、DNA検査を受けました。

 

そして生産者が実際に食べて品質を確認する「食味検査」が行われます。

 

これらの検査は、伊勢あさくさ海苔の品質とブランドを守るための生産ルール。
こちらの5つの定義が定められました。

 


そして今年、2月7日。
松阪市の三重県漁連のり流通センターで、のりの共販・入札が開催されました。

 

もちろんその中には伊勢あさくさ海苔も。
奇跡の復活を遂げた幻の海苔は注目の的です。

 

特徴はその甘味と香り、そして歯切れの良さです。
今回出品された伊勢あさくさ海苔は、伊曽島漁協の4人の生産者から、24900枚。
全国から集った仲買人のきびしいチェックを受けます。
色ツヤは申し分ありません。
海苔のプロたちは、伊勢あさくさ海苔をどう評価し、どんな値段をつけるのでしょうか。

 

今年の共販、入札がはじまりました。
売買の方法は、買い手が値段を競い合う『競り(セリ)』ではなく、製品ごとに一番高い金額を入れた買い手に取引される入札。
つまり1発勝負です。

そしていよいよ伊勢あさくさ海苔です。
服部さんは、「2020年なので2030円くらいだと良いかな」と言っていましたが・・・。

 

『浅重優上』等級の2000枚が、100枚あたり20203円!
今年度の全国最高値であり、三重県内の過去最高価格も更新しました!!

全国最高額。
過去最高価格。
その朗報は、組合、そして伊勢あさくさ海苔保存会のメンバーのみなさんをどれほど喜ばせたことでしょうか。
再生を信じて。
復活を祈って。
耐えに耐えた1年。
そのみなさんの思いと努力が、伊勢あさくさ海苔を再び育てました。

網に揺れるのは奇跡の黒い結晶。

明けやらぬ凍てつく海での収穫作業。
何度も何度も調整し、失敗を繰り返した加工作業。
伊勢あさくさ海苔をなんとか復活させたい・・・三重の海のブランドにしたい・・・。
そんな伊勢あさくさ海苔保存会のみなさんの思いが、そして関係者全員の思いと努力が、伊勢あさくさ海苔の復活を実現させたのです!

 

「今生産者の方々の努力によって、『幻の海苔』と言われているアサクサノリが三重県で復活をしました。
しかしまだまだ生産量や品質について不安定な部分があるので、、今後も我々水産研究所と生産者の方々が一緒に、安定的なアサクサノリが獲れるような技術開発や試験研究を続けていきたいです」

と、岩出主査研究員。

「アサクサノリへ現在、桑名地区でしか養殖が取り組まれていないため生産量が少ないです。
生産量を上げて全国的な知名度を上げるには、いろいろな漁場で育てることなので、その助けとなる研究をしていきたいと思います」

と、三重大学大学院生物資源学研究科の柿沼誠教授。

 

「去年はほとんど皆無でしたので、相当な喜びを関係者のみなさんが持っていると思います。
今年を糧にして、来年度にめがけてもう少し上へいけるように努力したいとですね。
地域だけではなく三重県のブランドですから、県内のみなさんに手掛けてもらい、次世代につなげていく商品にしたいと思います」

と、服部さん。

生産地を県内に広げ、三重のブランドへ。
伊勢あさくさ海苔の新しいチャレンジがはじまりました!