FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年5月26日放送

今回のお客様は、ウィークエンドカフェでアシスタントとして活躍している、伊東将志さん。
「お母ちゃんのランチバイキング」や海洋深層水を使ったお風呂で大人気の『夢古道おわせ』のアドバイザーでもあります。
常に新しいことにチャレンジしている伊東さん。
今回はどんな新しいことをはじめたんでしょうか…ワクワクしますね!

■尾鷲ヒノキの数珠を発売!

『熊野古道センター』を建設した際に出た木材が、すごく良い状態で残っていたのを知って、それを使った商品を作ろうと思ったことからはじまりました。

まず、「木で身に付けるものを作りたい」という思いがありまして。
身体につけるもので木に親しんだものを…と考えた時に浮かんだのが『木の数珠』でした。

普通、数珠は石ですよね。
木を使うにしても、黒檀や紫檀や菩提樹などレアな木がほとんどで、生産しているのも、中国などほぼ外国でしょう。
国産の木で作られている数珠ってのは、あまりなかったんですね。
それで、これはちょっと面白いんじゃないか、と。

しかしいきなり暗雲が(笑)
「どこで作れるんだ?」
「あんなにちっちゃい玉を作る技術って、どこにあるんだ?」

色々調べていくと、木を小さくする技術というのがそもそも少ないんですね。
その中で一番最初に思いついたのが『そろばん』。
そろばんの玉なら日本で作っていると思ったので探したところ、岡山県と兵庫県で作っているのがわかったんです。
そこでメーカーさんに、尾鷲の木を加工できないかと聞いて回ったんですが、10軒中10軒断られました。
全滅です(笑)

そこで日本の数珠メーカーを調べたところ、全国で数軒だけあったんですよ。
その中の一つ、滋賀県のメーカーさんに事情を話して、木を持ち込んで何度も通って口説き落としましてね、ようやく作ってくれることになったんです。

ヒノキは紫檀や黒檀より柔らかいため、加工に適さないのですが、尾鷲の木は比較的扱いやすくて「コレならば行ける」と。
それでも、幾度もサンプルを作って、ようやく完成したんですよ。


■尾鷲ヒノキの床材!

尾鷲ヒノキを使った商品づくりで、一つは肌に付ける象徴的なものをと考えていました。
それが先程の『尾鷲ヒノキの数珠』。

そしてもう一つ、今度は「沢山の木を使うような商品」として『尾鷲ヒノキの床材』を作りました。
『床材』といってもタイルカーペットと言いますか、フロアマットみたいなモノです。
よくオフィスで配線の上にマットが敷いてあるでしょ。
一枚50センチ四方で、普通は絨毯みたいな素材でできているわけなんですが、アレを木で作れないかと。
またしても色々探したら、日本で1軒だけ作っていることがわかったんです。
それが岡山県西粟倉の『森の学校』さん。
ここだけが日本で唯一、木の床タイルを作っていたんですね。

それでまた、向こうに尾鷲ヒノキを持って行って、是非作って欲しいとお願いしたところ、
「そういう風に広がっていって欲しかったんだ」
と二つ返事で受けてくれたんですよ。
岡山も木の産地。
もちろん岡山だけでなく、日本中で間伐が行われず流通しないのが現状です。
住宅以外の木材の使い方に苦労しているという、同じような思いなので、話が早かったんですね。

結果として数百枚作りまして、ありがたいことに既に完売しました。


■『ロハスデザイン大賞2012』にノミネート中!

行なっている活動が森のことだったり、間伐材の利用を促進だったり、そういったことで僕は、社会の課題に取り組んでいます。
そんなロハスな取り組みに対して評価する『ロハスデザイン大賞』が毎年行われていて、ちょうど今、『ロハスデザイン大賞2012』が開催されているんです。
今回のテーマは『ソーシャルデザイン』。
ソーシャルデザインなヒト・モノ・コトがエントリーされていて、僕はヒト部門でエントリーされています。
先日まで、『ロハスデザイン大賞2012』の『新宿御苑展』が3日間(5/18~20)開催されていました。
その後、最終審査があり、投票があり、最終的な発表があるそうなんですが、僕は今、残り20人のうちの一人にエントリーされているようです。

僕がやってきた『ありがとう風呂』では、入浴木を10万枚以上販売して来たんです。
1枚が3センチの入浴木の他、丸太なども売れているので、販売した木の本数は、おそらく数千本。

今までにない形であることと、家族の絆などの大切さを考えたことなど…この活動が興味深いと認められたから、僕はまだエントエリーされているのかな。
正直、大賞を取れるかどうかはどうでもよくて。
尾鷲で活動していても、ちゃんと目を向けてくれる人がいて、そういうところに載せていただける…ということが嬉しいですね。


■都市部の良さと地方の良さ

本当なら、尾鷲にずっといたらダメな気がしますね。
やはり外に出て、色々な所を見ないと。

でも僕は生まれも育ちも尾鷲で、実は一回も出ていないんですよ。
だからこそ、外に出る機会が新鮮なんです。

都会に行ったら刺激になるし、他の地域…日本海側の尾鷲と同じような課題を持っている町に行けば、外からの視点で、冷静に見られますし。
悩んでいることが、尾鷲でも同じだな、とか。
どこに行くにも移動距離が長いので、アプローチの仕方を考えたり、こうやったらどうかな、この方法でいけるかな…とか、考える時間がいっぱいあるんですよ。
いい時間になっていますね。

東京などの都市部に行くと、商品を見せたりするデザインの面や、商品だけでなくヒトやモノやコトのデザインの力に共感し、学べるところがあります。
なので沢山の人に支持されている商品を見に行くことが多いですね。

逆に田舎では素朴な良い素材…特産品や生産物に触れることができるので、モノ作りの純粋な思いに触れることができますね。
やはりどちらかだけではダメで、両方を見るのが楽しいし、学ぶところが大きいです。


■広がって楽しむ「このへん一帯」!

僕はこの町が好きで、この町に残りました。
だからこの町のために頑張りたいです。
それは昔からずっと思っているんですけど、以前に比べると僕にとっての『町』が『広域』になった気がします。
この『ウィークエンドカフェ』という、ラジオ番組をさせてもらっているのも、僕にいい影響を与えてくれていますね。

尾鷲だけでなく、熊野や長島、海山…何というか「このへん一帯」。
お客さんをお迎えして案内しようとすると、紀伊長島から入って、紀和町を案内して、尾鷲でお酒を飲んだり…。
すると、丸一日、「このへん」で遊んでいることになるんですね。

尾鷲が一番好きだけど、尾鷲だけでなく、「このへん一帯」全体のために仕事ができたら素敵だな。
気がつくとみんなそうじゃないですか。
熊野の人もお客さんが来たら、熊野の中だけを案内するんじゃなく、車で30分、1時間は平気で動くでしょ。
地域の人たちにとっても「このへん一帯」が広がっている感じがしますね。