FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年5月9日放送

今日のお客様は、伊賀市にある『森喜酒造場』の専務、森喜るみ子さん。
そう、『るみ子の酒』のるみ子さんです。
10年ほど前から伊賀にある3つの蔵元の蔵女将が集まって、伊賀酒で女子会を
開いています。
第1回目から140人ものお客様が集まりました。
女子が集い飲む酒は、美しく華やか。
『るみ子の酒』も登場します。

づくりが始まると朝4時30分起き、毎日が緊張の日々

お酒づくりのパターンは蔵によって違いますが、うちの場合は朝6時に仕事スタートが大前提。
今は働き方改革でいろいろ工夫したいところですが、醪も酵母も麹も生き物なので、こちらが勝手に『休みます』と言うわけにいきません。
仕込みがある間は、我々経営者側も蔵のスタッフも相対しています。
先程朝6時スタートといいましたが、一番冷える時間を当て込んでする仕事が多いので、それと生活のリズムを合わせていき、一日の仕事のパターンができあがります。
仕込みがある時期は、野放図に寝ていられません。
しっかり緊張感を持って、私は4時半に起きます。
夜も麹の見回りなどもあったりするので、いろいろな意味で日がな一日緊張している状態が続きます。
仕込みの時期を終えて、今の時期になってくると、ぼうっとしてしまい自堕落になってしまいます。
冬場は時間に縛られますし、自分が寝たいときに寝られないこともあり、そういう意味で緊張感がつきまとっていますね。

 

年、基本ベースはそんなに変わらないが自然に沿った味になる

その年のお米によって、できてくる感じは違います。
毎年同じものを作り続けることはできるのかと、よく聞かれます。
ウチのような小さな蔵ではあまりブレンドをせずに、それぞれで出していることが多いので、その年のお米に、私たちが振り回されます。
例えば、同じ品種を使っていてもお米が硬い年があったり、あるいは早く溶ける年もあり。
その年の状況によって私たちが動かされます。
よく『おてんとさんには勝てません』という言い訳をしますが、私たちがお酒をコントロールするというより、自然に沿ったお酒の味になります。
スペックはちゃんと『この辺にしよう』という目処は立てて、こういう味の方向を目指して作ってはいます。
同じような数字でも飲んだ感覚が違ったり、お酒が若い時、熟成したときでも変化は出てきます。
なかなか画一的なお酒はできないと思います。

 

象に残る年がある。酒屋さんの声を聞いて客観的に酒を見る

なんとなく印象に残る年、特徴的な年ってありますね。
このときのお米は惚れ惚れするほど良かったとか、今年のお米は難しかったなとか…。
それが突出している年は、やっぱり記憶に残りますね。
特約のお酒屋さんだと、さらにお酒の味に敏感ですので、そこから「今年硬いね」とか「今年はボリュームがあるな」とかの話を聞きます。
味が乗ったときとか、この期を逃さずに今飲んでもらおうとか考えるので、ちょっと外に出て話を聞くと、さらに客観的に自分たちのお酒を見ることができます。
今、この子をお嫁に出そうとか、もうちょっと育てておこうかなとか、そういうことも私たちの方で勉強になります。
いろいろなお酒も飲んでみて、いろいろな話も伺ってみて、自分のところにフィードバックしたいと思いますね。

 

然発酵のお酒を造りたい

昔は一級酒二級酒という、画一的なお酒の世界でしたが、今は級別が廃止され、お酒の組成自体…どういうふうにできているお酒か、ということが重要視されています。
お酒の質も磨かれて良くなってきていますので、昔の一級酒二級酒の感覚ではない…ちょっとお値段は高いけど、でもその分とっても美味しくなっていることを実感してもらい、お酒を選ぶ楽しみというのを、ぜひ得てもらいたいと思います。
今、自然発酵のお酒が重視されてきています。
酵母も何も加えず、お米と麹と水だけ。
自然発酵させて、しかもお米も選りすぐったもので。
自然発酵のお酒は作っている過程が本当に面白いんです。
自分たちが図れないような…発酵している泡の状態を日々見ながらニマニマしているというか…。
その分、育てていくのも大変ですが、自然に相対してできるお酒を増やしていければ良いなと思っています。
お米についても、顔がわかる農家さん、信頼が置ける農家さんとコラボしていって…地元のほうで広げていけたらいいなと思います。
こだわったお米でこだわった酒造りを、趣味のようにしていきたいですね。
自分たちがやっていくべきミッション。
それぞれの酒蔵も『こうしていくべきなのかな』というサジェスチョンを、お客様と相対していく中であると思います。
うちは最近の消費動向を見ていると、その方向で行くべきだと教わっている気がしますね。

今は本当に日本酒が百花繚乱です。
日本中でおいしい酒が造られています。

その咲き乱れている花から、今日のお花は何にしようという感じですからね。
お酒もそういう楽しみ方をしてほしいですね。
どのお酒を選んだらいいかわからないときは、酒屋さんにいろいろ聞いてみてください。
きっといいお酒を選んでくれますよ。