FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年8月22日放送

鳥羽市水産研究所。
昭和39年、坂手島に作られた研究所は、今年の春、新水産研究所として小浜町に完成しました。
今回は研究員の、岩尾豊紀さんがお客様です。

究所ではワカメや海苔の種苗を作っている

養殖海苔や養殖ワカメをやっている人が使う『種苗』を作っています。
いきなりロープからワカメが生えるわけではなく、米で言う『苗』みたいなものを付けたり、ワカメの小さいのを付けたりするんですけど、『鳥羽市水産研究所』は、その最初の段階の種苗を作る場所で、施設の大半を使ってそれをしています。
あとは養殖をもうちょっとやりやすくしたり、安定的に品質を保てるような工夫をできないかと研究したり。
それからは真牡蠣の漁場の調査や、天然の海藻がなくなってきている海域の観察ですね。
食い止めるのはちょっと…できればしたいけど、難しいのでせめて観察して調査をしています。
そういうことが主な仕事です。

 

思議なものが好き。ゆらゆら揺れているだけの海藻が生きているのが面白い

変な生き物…綺麗なものとか見たことない形のものが好きで、初めて生物を見るために海に潜ったのが大学2年生。
それまでは普通の海藻しか知りませんでしたが、名前も知らない見たこともないような、雑草のような海藻が生えているのを見て、とても綺麗だと思いました。
また、折り紙を適当に切ったような形なのに、なんとなく規則がある…でも陸上に並べてみるとメリハリのない、変な形をしている。
だけど、生きていて綺麗。
なんなんやろ、この生き物は…と思い、知りたくなりました。
それがきっかけですね。
ツノマタかイボツノマタか、マルバツノマタか忘れてしまいましたが、普通の海藻です。
みんなも見たことがあるだろうけど、視界には入ってこないし絶対知らないだろうけど。
実は壁の漆喰などに、わりと利用されているんです。
もちろん僕も当時はそんなこと知らずにいました。
生き物の進化が好きなので、そういうところを考えるのに良い材料だったんです。
でも別に、海藻である必要はなくて。
宇宙生物でもバクテリアでも、深海の泥の中のバクテリアでも、なんでも良いのですが、身近なはずで知らなかったのが海藻だったということです。

 

分の求めていることと漁師の方向が一緒になると嬉しい

僕の本当の興味は生命の進化なので、直接的には水産業と関係ありません。
まったくないとは言いませんが直結はしていませんね。
漁師さんに、職業上の流れでポロッと言われまして、でも興味持つ人なんてそんなにいないのです。
そういう僕の見る目と漁師さんが求めているものは普通には合致しないのですが、話しているうちに合致しすることがあります。
それは僕がここで種苗生産しているからなんですが、漁師さんの喜ぶ方向と、僕がしたい方向、生命進化からははずれますが、種苗を気付かされたり教えてもらったりがあって。
僕が試してみるアイディアをもらったり、向こうもそれで知ったり、そういう普通はできなかったはずの接点ができていく、築き上げることができるのが面白いですね。
養殖業で言うと毎シーズン試したいことができてくるし、漁師さんはコンスタントに試してほしいことがあって、僕はそれに向かって試そうとしているんだけど、漁師さんから見たら言っていることをなかなかしてくれないと思っていることもあったりすると思います。
でも無視をしているのではなく一個ずつ近づいているつもりだけど、2年くらいして、実は遠ざかっていたとか。
漁師さんからしたら、「だから言ったやん!」と。
違うことやっているということを漁師さんは知っているけど、それの正し方を知らない。
僕もそれはまたわからないと気づいて、もとに戻したり。
漁師さんが見守ってくれたり発破をかけてくれたり。
やっている者同士じゃないと口出ししあえない。
「こういう方針だからこう行こう!」みたいな組織の方針みたいなものが通用しない仕事。
面白いですね。
市役所の仕事としては漁師さんの利益を右肩上がりに…とかいうこともあるでしょうが、そういうマクロな地図だけでは旅ができませんね。

 

洋教育の構築

水産業と直接、短期的には結びつきませんが、海洋教育に鳥羽市をはじめ、日本中が力を入れようと、ここ数年なってきています。
鳥羽市の活動拠点の一つが『鳥羽市水産研究所』となっていて、海洋教室をどうしようと考えているところです。
子どもたちでも社会人の研修でもいいのだけど、とりあえず当面のターゲットは小中学生、高校生くらいまで。
海のこと、自然のこと、地域の産業のことなどを、あらゆる教科の先生が教えられたら良いのですが、まだ具体的にどうするかを構築中です。
これが今したいことであり、するべきことです。
海のことを通じて、もっと違う世界のことを知ったり、違う目線から本筋の別の見方に気づくことも多いので、無理に海のことに落とし込まなくても、その人の人生の考え方のチャンネルの一つに、海洋教育が役に立つと思います。
そういう教育体制を作る助けになりたいですね。