第1回『M子の地産地消レストラン』2012年06月

三重県イチのアクセス数を誇るグルメブロガーのM子が、正式に『ゲンキ3ネット』に参戦!
三重県産の食材にこだわる! 地元の海の幸、山の幸を追求する! そしておいしいものを旬の時期に、ご当地で食す!
そんな地産地消のお店を月イチペースで紹介していきます!


安全で美味しい食を求め、三重県内で地産地消に取り組んでいる飲食店を紹介する『M子の地産地消レストラン』。
第1回は、伊賀市丸柱の『伊賀の郷 長谷園』です。

『長谷園』といえば、『かまどさん』で全国的に名を轟かせた窯元。
なんと創業は天保3年(1832年)!

園内には創業時から昭和40年代まで使われていた、16連房の『登り窯』や、大正時代に事務所として建てられた『大正館』など、見どころ満載!
『大正館』は休憩所として開放されていて、伊賀焼カップ付きのコーヒーを楽しむこともできます。

もちろん展示室(ショップ)では、『かまどさん』『蒸し鍋』など、長谷園ならではの鍋類や、使い勝手の良い食器も販売。
「作り手こそ真の使い手たれ! 用・美・楽を求めて」
をモットーに、常に時代のニーズにあった商品を作り続けています。

しかしM子が今回お邪魔した目的は、こちらの『創作料理 なが谷 母や』。
昼夜ともに一日2組限定で、3日前までに要予約です。
もちろん私も、事前に予約してお邪魔しました。

建物に入った瞬間、ふわりと良い香りが。
奥に向かうに連れて香りが強くなり、客間に到着すると、床の間に香炉。
この香炉からお茶の香りが漂って来ていたのです。
入った瞬間から「おもてなし」が始まっている…そう感じて、嬉しくなりました。

こちらの『母や』は、平成14年にオープン。
地の食材を使った季節の創作料理と伊賀焼の器の妙を楽しむことができます。
この土地の食材を、この土地から生まれた焼き物を使って食す…まさしく『地産地消』です。

『母や』のオープンに至るまでの経緯や、長谷園の『鍋』に対するこだわりを、長谷優磁会長にお聞きしました。

「最初はね、34,5年前に子供たちを預かったことから始まったんですよ」と優磁会長。
突然の意外な発言に驚きつつ、お話を伺うと。

今から三十数年前、優磁さんは、少年院を出所した子や不登校の子などで、親からも引き取りを拒否された子どもを引き取り、自宅で生活させていたそうです。
最初はどの子どもも、まったく優磁さんや家族の話を聞かずに心を閉じていましたが、同じ食卓を囲むうちに、徐々に話したり、心を開くようになったといいます。

つまり大切なのは『団欒』であると。
そして団欒に必要なのは、家族みんなが揃って食卓を囲むこと。
しかし、特に日本の家庭では、母親は準備に忙しく、一緒に食事を摂れないことがままあります。
優磁さんは、それではいけないと。
みんなが作りながら一緒に食べられて、みんなが調理人になれば良いじゃないか…と考えたのです。
「焼きながら」「蒸しながら」…つまり「~ながら」で楽しめる食べ方を、と。

長谷園会長 長谷優磁さん


そんな考えから、ここ『長谷園』は卓上で使うことのできる『鍋』を重視しているのだとか。
確かに、『かまどさん』をはじめ、『ヘルシー蒸し鍋』『陶珍菜』『やきやきさん』『あぶり名人』…どれもみんなで食卓を囲み、「~~ながら」ワイワイと賑やかにいただけるものが多いですね。

そして伊賀で採れた旬の食材を楽しみつつ、伊賀焼の器に触れ、これらの鍋の使い方を知ってほしいとの想いから、この『母や』を開店させたのだそうです。

また、食卓を皆で囲むことは、家族の躾の原点。
スローライフ、食育、ロハスという言葉がありますが、それもすべて『食卓』からスタートするもので、これからは『卓育』を提唱して行きたいと、優磁さん。
『母や』では食卓を囲んでもらうことも、狙いの一つなのです。

そしてもちろん、ここ『母や』で使う食材は、地産地消が基本。
こだわる理由は、
「地元に美味しい物がたくさんあるんだから、それでええやんか!」
という優磁さんの言葉に集約されています。

この日の食材の数々。

野菜や畜産物、お米は同じく伊賀の『モクモクファーム』から。
その他の食材は、地元の農家さんからのものや、ご近所から。
「生産者の顔が見える」ことが第一だそうです。
もちろん魚介類も三重県産です。

先付けは、ざる豆腐。
こちらは『モクモクファーム』のもの。
添えられた紫陽花に、季節と「もてなしの心」を感じます。
一口いただいてビックリ!
めちゃめちゃ味が濃いです!
枝豆をそのまま食べているかのような濃さと甘さ。
正直、添えられた岩塩は必要ないと思いましたが、パラリと散らしていただいて、またビックリ!
甘さが際立ち、さらに味が深く感じます。
肉厚で無骨な器が、豆腐を際立たせていますね。

前菜の盛り合わせ。
四角いお皿が、まるでキャンパスのようです。
野菜はどれも『モクモクファーム』産。
トマトは塩分濃度の高い土壌で育てられた『塩トマト』で、普通のトマトと比べ物にならないほど、味が濃く、旨味が強い!
最近、塩トマトの販売を始めたそうです。

肉は、みえ豚で万願寺唐辛子を巻いたもの。
脂の香りが良く、苦味の効いた唐辛子とよく合います!

しらすは伊勢産。
帆立は、軽くスモークしたものをオイル漬け。
これも長谷園の『いぶしぎん』が使われているのかしら…と思ってみたり。

焼き物は、『あぶり名人』を使った、穴子の白焼。
七分ほど焼いてあるのを、卓上で仕上げます。

それにしても、食材もお皿も緑と白のコントラストで美しいです。
添えられているのは、茄子のお漬物と『大黒本しめじ』。
最近時々見かけるな~…と思っていたら、近年、四日市市を拠点に栽培を行なっているとのこと。

この焼き目!
脂がジュワジュワと滲み出て、その脂が『あぶり名人』の火元に落ちた香りがたまりません。
醤油に軽く浸すと、脂が虹のように広がります。
山葵をたっぷり載せていただいても負けない、芳醇な味わいの身の弾力もまた、たまりません。

そして、先程の『大黒本しめじ』は焼くと水分が抜け、コリコリとした食感に。
エリンギよりも遥かに歯応えが良く、クセがない上に旨味が濃いので、かなり気に入りました。

ここでなんと、三重県産の『岩牡蠣』。
実は生の岩牡蠣はやや苦手なので、躊躇したのですが。
生臭みが一切無く、驚くほど身が締まっているのに驚愕!
しかも何と言うか…豊かな味わいで、さながら「噛みごたえのある白子」とでも表現したいほど。
もっと食べたいくらいでした。
ちなみにこの器は、M子宅にもあるもの。
しかし、こうして岩牡蠣を盛られた姿は、まったく別物…美しく見えます。
使い方一つで、こんなに変わるものなんですね。

蒸し料理は、IH対応の『ヘルシー蒸し鍋』を使った旬の野菜と地鶏、スズキの蒸しもの。
人参が甘くホクホクと、スズキは身が締まって、味が凝縮されています。
地鶏は歯で噛むと、ものすごい弾力!
臭みがない代わりに噛めば噛むほど、鶏本来の味と旨味が滲み出してきます。

なんとこのホウズキは食用。
『ストロベリーチェリー』という品種で、やや酸味のあるマンゴーとベリーの中間のような味がします。
熱々で危険ですが美味しい!

とうとう、伊賀牛登場!
こちらは『やきやきさん』でふっくら焼き上げ。
室内で焼肉をしても、ほとんど煙が出ない優れ物です。

そして、やはりお肉に欠かせないのが、

ご飯。
伊賀米を長谷園のスーパースター『かまどさん』で炊きあげました。
どうです、このピカピカなご飯の美しさ!
さらに美しいだけでなく、これで炊いたご飯は、文句なく美味しいです!
もう、おかずが必要ないくらい。
でも、やっぱり伊賀牛は美味しいので、オンザライスでいただいたり…

『浅漬器』で作ったお漬物と長芋の醤油漬け、ひじきの炒め煮とハマグリのお味噌汁とともにいただきます。
ハマグリはお吸い物ではよく目にしますが、お味噌汁とは珍しいですね。
しっかり出汁が出て、ご飯にとっても合います!

ここ『母や』では、長谷園の鍋を使った美味しい料理を知ってほしいため、一年中『鍋』を使った料理を出しているとのこと。

水菓子。
枇杷とさくらんぼ。
ちょっと『伊賀焼』では珍しい感じの器ですね。

そうそう、『母や』で出される器は、実際にギャラリーで販売しているものや、一品物の他、ここで働いている職人さんの作品が使われることも。
ただし、一人で腕をふるっている料理長が、料理に合うとして認めたものだけ。
職人さんが持ち込んでも「こんなの使えるか!」と突き返されることもあるそうです。
さすが「作り手こそ真の使い手たれ!」がモットーの長谷園。
ここ『母や』は、職人さんたちの研修道場でもあるのですね。

土地のものを、土地の器を使って、ゆったりといただく…身体にも心にも、とても贅沢な体験でした。

それにしても、食べ終わってから気づきましたが、M子宅には、先程の器の他、『かまどさん』『ヘルシー蒸し鍋』『やきやきさん』があるのです。
もっともっとお鍋を活用し、美味しく地の物をいただこうと、決意を新たにしました。

ご馳走様でした。



■なが谷 母や
営業時間 昼席 午前11時~午後2時
      夜席 午後5時~午後9時
      昼・夜席ともに1日2組まで
コース  昼席:4200円、6300円、8400円~
      夜席:6300円、8400円、10500円~
定休日 水曜日・第1第3火曜日
予約 利用日の3日前までに要予約

※今回出していただいたお料理は、『母や』さんのお勧めであり、通常コースの構成ではありません。
詳しい情報とお問い合せは長谷園のHPから『母や』さんのページをご覧ください。

■M子
神奈川県出身。三重に移住して5年。
ラーメン、B級グルメをこよなく愛し、津を中心に食べ歩き。
ブログ『壮絶!ミセスM子の勝手にうまっぷ拡大版』は、ローカルのグルメブログとは思えないアクセス数を集め、トンデモナイ影響力を持つ。

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