FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年6月30日放送

今回のお客様は、南伊勢町新桑にある『ロッジさらくわ』のオーナー、瀧ひとしさん。
大きな鯛の燻製を持って来てくれましたよ!
「つくる」「たべる」「あそぶ」をコンセプトにしたロッジでの、楽しいお話を伺いました。

■ロッジ名の『さらくわ』の意味は、平家の落人の集落名から

『ロッジさらくわ』の『さらくわ』はこの辺りの地名で『新桑』と書きます。
もともとは『新桑竈』と言われていたんです。
『竃』が付く地名は、南島町や南伊勢町だけにある地名。
ここは平家の落人の郷と言われていまして。
落人が逃げて住み着いたのですが、すでにこの地域には昔からの漁師がいるため、魚を捕ることが許されませんでした。
なので、海水を汲んで塩を作って暮らしていたんですね。
その塩を作るための『竈』が地名となって今でも残っているんです。
昔の南島町、南勢町、合わせて8ヶ所あったと言われています。
それから『浦』も、この辺りでは特徴的な地名で、旧南島町に8ヶ所あります。
『浦』はもともとここに住んでいる漁師さんがたちが暮らす場所の地名。
平家の落人の『竃』と対照的ですね。
もちろん両方付かないところもありますが。

他にも、この辺りの地名で良く見られる『浦』『ハナ』『タカ』など、それぞれ意味があるんですよ。
『タカ』は海を見渡せる高いところだから。
『ハナ』は人間の顔の『鼻』のように出っ張っている部分。つまり『岬』や突端部分ですね。
『座佐のハナ』は突端、『座佐のタカ』は高いところ『座佐のハマ』はつまり浜。
面白いですよね。


■自然の景観が残された海岸線をカヌーで渡るのが楽しい!

シーカヤックやカヌーに乗っていると、水面が自分の腰ぐらいなんですよ。
そんな低い位置から見る陸の景色、山の景色は、普段では味わえない感覚。
もっと言うと、さらに外海というのは、車では絶対行けないし、見えない場所があるんですよね。
海岸線をクルマで走っていても見えない隠れたゾーンを、シーカヤックでは見ることができるんです。
それから、かつてまだ車が発達していない頃、新桑竈の人も、むこう側の、車で行けない場所に住んでいた記録あるんですよ。
おそらく、物資の運搬に船を使っていたと思いますね。

そして面白いのは、こういう風景は昔から、何千年と変わっていないということ。
シーカヤックでは今まさに、そんな風景を見れることができる…素晴らしい体験ですよね。

現在の日本の海岸線は、すでに何割かが人の手が入っています…つまり人工。
だから、自然の海岸線が残っている三重県南部は、シーカヤックをする人に喜ばれるんです。


■手付かずの自然があるからこその『海跡湖』

『海跡湖』というのは、もともと湾や入江だったのが、潮の流れで砂浜が間にできてしまい、内側に残された湾が湖というか、池になったものです。
日本全国で20個くらいあるんですが、厳密に海跡湖かどうかは別としても、こういう形状の湖が南島町に4ヶ所あるんです。
芦浜、座佐池、すずき、塩竃浜(しゅうがはま)…これが旧南島町に絡んだ4つの池です。
全国20にある海跡湖のうちの、4つがこの狭い地域にあるって、スゴイことですよね。

『ロッジさらくわ』から『座佐浜』までウォーキングでだいたい2時間が目安。
ある意味、今の日本で、たった2時間歩いただけで手付かずの自然があるというのは、素晴らしいです。
コンクリートのない世界。
シーカヤックだと30分。
こっちの方が早いですね(笑)


■魚の燻製づくり体験と『真鯛の燻製』販売

ウチのロッジでは、鮮魚と燻製製品を物々交換しているんですよ。
というのは、釣りをする人が、本命の魚以外は捨ててきてしまうから。
捨てないで、それを持って来て下さい、代わりにウチで作っている燻製と交換しましょうと。
ウチは、そのいただいた魚を使って、また燻製を作ると。
本当は体験として、お客さんに自分が釣った魚を燻製にするとこまでして欲しいんですが、実際に燻製を作るのは4~5日かかるので、なかなか難しいですね。

そんなわけで、もともと僕は、地元で捕れる、いわゆる『地魚』の燻製を作っていたんですが、今年から正式に製造販売できるようになりました。
これまでは色々許可の問題がありましてね。
魚の燻製を安定供給させるために、今、『真鯛の燻製』を商品化しているところです。
ロッジに来るお客さんに『燻製づくり体験』としてチャレンジして欲しいし、商品として出荷もしたい。
今はまだ、他のお店に出してはいませんが、販売していますし、夕食の一品としてもお出ししています。
地魚の燻製もしていますが、力を入れているのは、やはり真鯛。
南島町、南伊勢町は鯛の養殖が盛んですし、何と言っても美味しい!

『真鯛の燻製』は一尾丸ごとではなく、頭の部分の『カマガシラ』、身の部分の『本身』『骨付き半身』それぞれ、別々に販売しています。
燻製に使うチップは、リンゴとブランデーの樽にも使われるカシ材。
一般的には、チップといえば桜。
でも実は、桜は渋くて、きつすぎるんです。
燻煙の効果を持たそうと思うと2~3時間燻すでしょう。
桜だと鯛が真っ黒になってしまい、身に渋みが出てしまうんですよ。
クセの強い肉類には向いているんですがね。
淡泊な魚に一番合っているのが、リンゴとカシなんです。

ロッジに来てもらうと、色々体験できることがあります。
丸々助けることはできないが、僕たちがそこまですべきでもない。
ある程度ご紹介したら、あとは自分たちで楽しんでもらうというエリアづくりが必要だと思います。

しかし漁業権の問題など、都会から来る人は知らないことが多いので、その辺りはキチッと教えてあげた上で、楽しんで欲しいですね。