三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2020年12月13日放送

紀北町で長年少林寺拳法の指導を行ってきた小川和久さんは、紀北町で漁業を営みながら、三重外湾漁業協同組合の理事も務めるなど地元の水産業の発展にも取り組んでいます!
伊勢えび漁が解禁となった日、小川さんに現在取り組んでいる『浮魚礁』や、地元漁業についてを取材!
また少林寺拳法の指導者として、地元の中学校の武道の授業として少林寺拳法を指導する姿にも密着!
ふるさとの海とともに生きながら、少林寺の精神を通じて、地元の漁業の発展に取り組む姿をお伝えします!

小川和久さん。
71歳。
年齢を感じさせない動きです。
小川さんは50年以上、この紀伊長島で少林寺拳法の指導者をつとめ、武道を通じた子弟教育に携わってきました。

仕事は漁業。
奥さんといっしょに小規模な定置網業を営んできました。
現在は三重外湾漁業協同組合の理事として水産業の発展にも取り組んでいます。

 

「中学1年生くらいで肺結核になり、1年間のその闘病生活の中で『もう自分は長く生きられないんだな』と投げやりな気持ちになり、家を飛び出して大阪に出ました。
ある時に少林寺拳法のパンフレットを見て、興味が沸き道場に見学に行きました。
少林寺の技に魅了されたというのもありますが、人との繋がりがいかに大切かいうことに気づかされたのが、少林寺に深入りしていった大きな理由だと思います」

と、小川さん。

 

一方、古くからカツオの一本釣漁業で栄えてきた紀北町紀伊長島。
水揚げされる魚種は200種以上という漁師町です。
そして11月に入るとはじまるのが伊勢えび漁。
市場がにわかに活気づきます。

「今年は今イチ、いや、全然かなあ。
これから回復してほしいですね」

「紀伊長島の伊勢海老はとても良いです。
形といい色といい、見たらこの辺の海老だとわかります。
でも今年は量が少ないですね」

と、地元の漁師さんたち。

 

厳しいスタートとなった伊勢海老漁。
小川さんに笑顔はありません。

 

紀伊長島の漁業は定置網を中心に、延縄(はえなわ)やトローリング、そして伝統的な1本釣りと、季節に応じて漁法を変え、さまざまな海産物を得てきました。
しかし現在、海水温の上昇、そして環境の変化により、厳しい状況が続いています。

 

小川さんは三重外湾漁業協同組合紀州支所の理事も務めています。
そんな小川さんに、紀伊長島の海についてお聞きしました。

「多種多様な魚介類が獲れます。
熊野灘はリアス式海岸で岩礁がたくさんあるので、さまざまな魚がいて、それによって紀伊長島の市場にも多種多様な新鮮で美味しい魚がたくさん揚がります。
しかし昭和52年の42億円をピークに漁獲高が激減していまして、去年は9億にちょっと欠けるくらいとなっています」

 

そんな危機的な状況の中、2019年から実験的に取り組んできたのが、『浮魚礁(うきぎょしょう)』の設置。
人工的な漁礁を沖に浮かべ、魚たちを集めようという作戦。
若手の漁師たちが中心になってはじめた取り組みですが、かなりの成果が出ています。

「サワラが1匹いるとそれにつられて他の魚もそのサワラに寄っていくという習性があります。
集団を好むんです。
長島の漁法として、これは古来からサワラの疑似餌を作って流し寄って来たサワラを槍で突く、突きん棒のような漁法があります。
その漁法が今も廃れずに残っていて、その浮魚礁でおこなっています」

 

三重外湾漁業協同組合紀州支所の理事とは別の顔も持つ小川さん。
それが、紀北中学校での武道の講師。

 

楽しく学べるように音楽に合わせて型の練習。
これも時代です。

 

続いて突きの練習。
叩いているのは紙袋。
音が出るからだそうです。

 

「失敗は工夫の生まれる元です
君たちはこれから大きくたくさん失敗するだろう、失敗、先生は失敗して欲しいと思います。
その中でその失敗にくじけずに工夫を考えながら、例えば自分が行きたいなぁという道が閉ざされた、失敗によって閉ざされた。
それで人生が終わるわけではない必ず新しい道が開けているんです。
これは一つのチャンスなんです
新しい自分が想像もしえなかったような道が開けているんだと考え、物事は取り様でいくらでも変わります。
いいですか、失敗をしてもそこからどう乗り越えてくる工夫があるよ
それが少林寺拳法を最初に中国で伝えた達磨大師の考え方なんです」

と、少林寺拳法の教えとともに、生き方を説く小川さん。

 

「結構我慢することがあってちょっと辛かったけど、きっと強くなれると思います。
高校受験に向けて、しっかりと落ち着いてできるような呼吸法なども習ったので、そういうのを生かしていきたいと思います」

「失敗を恐れないこと強い気持ちを持って…強いっていうのは心が強いっていうことが分かりました」

生徒たちも、小川さんの心を正しく受け取ったようです。

 

学校の授業が終わって、今度は町の武道館で教え子たちと汗を流します。
とても70代とは思えない、するどい蹴りです。

 

「お付き合いは40年になります。
若い時は怖かったんですけど(笑)、今は優しいです」

「小川さんとは少林寺拳法を通じて長年の交流があります。
先生、先生という言葉しかありません。
高校時代からの付き合いですから、何かあったら相談しにいくというか、親みたいなもんです。
とても頼りにしています」

 

「『人』という字の成り立ちはこう、支え合うんだと。
これが人という字の成り立ちです。
助け合って生存しているんだよということ。
少林寺拳法の教え方がその漁協に通じるかと言うと、そうではないところもありますが、気持ちの中で根底として協力し合っていこうよと。
これは希望ですが、少林寺拳法で培ったもので伝えることができるればうれしいですね」

ふるさとの海と共に生きる。
人と人のつながりを大切にして、
人と自然のつながりに感謝して生きる。
少林寺を通じて体得してきた精神が、紀伊長島の漁業の未来を照らします。