三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2021年1月10日

奈良県出身で大阪からの移住者、森前栄一さんは南伊勢町に移住後、炭焼き職人に。
伊勢志摩地方の海岸近くの森に生えるウバメガシだけを原木にして備長炭を生産。
「伊勢志摩備長炭」の名前で、県内や名古屋・東京等の飲食店に販売する他、インターネットでの全国販売も手掛け、更なる量産を目指しています!
2019年には南伊勢町が認定する「南伊勢ブランド」の認定も受け、地域資源の活用と人材の育成に期待がかかっています!

備長炭の窯出しです。
およそ2週間、窯の中で燃え続け、余分な成分をすべてなくした炭を取り出します。
窯の空気調整や温度管理…そして取り出すタイミング…経験と勘だけが頼りの作業です。
伊勢志摩の炭。
地域のブランドをつくり、守り続ける人がいました。

 

それが南伊勢町の『マルモ製炭所』の森前栄一さん。
大阪で建設関係の仕事をしていましたが、2010年に南伊勢町に移住してきました。
田舎暮らしへの憧れ。
思い切って移住を決断したのは、41歳の時でした。

 

「縁もゆかりもなく、知り合いも親戚も何もいないとこで、たまたま偶然こちらに来たんですけどね。
子どもの頃から65歳ぐらいになったら田舎で暮らしたいなと思っていたので、のどかで、良いところだと感じました。
大阪で建築の仕事をしていたのですが、仕事が全くなくなってしまい、思い切って全然違う仕事しようっていうことで、知り合いの紹介で仕事をはじめました。
最初は炭焼きではなく、備長炭の原料となるウバメガシを切って売っていましたが、自分でも焼けるのではと思い、炭焼もはじめました」

 

鳥羽の製炭所で、半年間の修行を経て独立。
南伊勢町内で、元製炭所だった現在の場所を見つけ、新たな窯を自ら、設けました。

「今でも手さぐりで勉強しながらやっています。
もともと現場仕事で職人だったので、ある程度やっていたら少しずつ分かるようになりした。
しかし初めは失敗だらけで、ほとんど出荷できへん大失敗もしてだいぶ凹みました。
今の主な販売先は、焼き鳥屋、うなぎ屋、お寿司屋、イタリアンやホテル。
地元が多いですが、東京・名古屋・大阪等、都市部にも販路を広げています」

と、森前さん。

 

森前さんが作り出す備長炭は、2019年、『南伊勢ブランド』に認定。
地元産の原材料にこだわる、魅力ある地域ブランドとして、今ではインターネットによる通信販売にも乗り出しています。

 

森前さんがやってきたのは、備長炭の原料となるウバメガシの伐採現場。
ウバメガシは硬くて締まっているのが特徴。
炭になると、さらに1/3ほどに締まるそうです。

 

伐採を終えたらケーブルに木をくくりつけて、運び出しの作業です。
すべて人力。
想像以上に大変な力仕事です。
伐採から運搬、そして2週間におよぶ炭焼きを経て、南伊勢のブランド炭が誕生するのです。

 

製炭所では『木ごしらえ』という、山から運んできた原木の長さを割機で揃え、曲がった部分に切目を入れて、楔を打ち込み真っ直ぐに整える作業を行っていました。

「曲がったところに切り目を入れて楔を入れて、伸ばしていくんです。
真っ直ぐな木を選んでいるのではなく、木を真っ直ぐにしているんです。
窯出しをした次の日には、またすぐ詰めるので、窯出しまでに次の木を切ってきて段取りしないといけないので、なかなか休めません」

 

現在行っているのは『口焚き』という窯の温度を上げていく作業。
炭化が始まると、酸っぱい匂いがしてくるのだそう。
匂いと煙の状態から、炭化の始まりを捉えて入り口の穴を小さくしたり大きくしたりで調整するそうです。

 

ちなみに一緒に作業をしているのは、地域おこし協力隊の大河内保志さん。

「東京からこちらに来て、撮影の仕事や家具の仕事、造園の仕事などをしてきました。
一人でする仕事と外で身体を動かす仕事が向いていると思い、炭焼を始めてみました。
定年がないというのも大きいですね。
体力的には山仕事が一番大変ですが、半年たって何となく炭焼きの仕事の全体のことがわかってきたところです。
今まで森前さん、今までずっとこれを一人でやってきたのかと、とてもすごいと思いました」

と、大河内さん。

「やっぱり若い人とやったら楽しいしね、一人だとしんどいだけだけど、仲間が増えると心強いですね。
この『伊勢志摩備長炭』をブランドにしたいと思いながらやっているので、どんどんウチから若い人が巣立ってもらえたらいいですね」

と、森前さん。

 

と、ここで備長炭に火を入れ、干物を焼いていました。

備長炭の特徴は不純物が少ないこと。
炭素率95%以上の良質な炭は煙や匂いがほぼ発生しません。
一般的な炭と比べて火の持続時間が長く、遠赤外線効果で外は焦がさず、食材をふっくらと焼き上げることが出来ます。

 

確かに!
身がふっくらとして余計な匂いが一切せず、美味しいです!

 

「南伊勢町に来て来て良かったと思います。
飲食店などのお店はありませんが、自分には田舎が性に合っていますし、近所の方々がみんな、とても仲良くしてくれて助かっています。
まだ10年くらいのひよっこで、胸を張って良い炭とも言えませんが、それでもこの町・地域の産業になるように、生産量をどんどん増やして。
炭でしっかり稼げるだということを、僕が率先するために直売やネット販売をがんばっています。
最終的には、お客さんに本当に良いと言ってもらえる炭を作っていきたいですね」

と、森前さん。

森前さんの伊勢志摩備長炭。
関心のある方は、ネットから購入することができますよ!!