FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年2月6日放送

今回は度会町にあるミルキークィーン専門農家『おんじ屋』の陰地信哉さんと
盛美さんご夫妻がお客様です。
熊野市出身の信哉さんと山梨県甲府市出身の盛美さんが農業法人で出会い、度会町で米作りを始めました。

業を始めるきっかけ

信哉(以下:信) 僕はもともと、熊野市から四日市に出てきてぜんぜん違う仕事をしていました。
けれど地元に帰ってなにかやりたいと思ったのが一番最初です。
友だちと、地元に帰ってなにかやろうぜ、となったときに、熊野はけっこう田舎なところがあるので、農業をやってみようと。面白そうだから。
それが農業に興味を持ったという感じですね。
まずは僕がどこかで研修して学んで、それを持って2〜3人で帰ろうかという話だったんですけど。
その話もいつの間にかなくなって、このまま度会に定住してしまいました。

盛美(以下:盛) 私は食品ロスとかの問題がニュースで取り上げられているのを見て、生産の現場からなにか変えられることはないかと考えました。
形が悪くて市場に出回らないものでも味は美味しいので、なんとかそれを提供できる場を作って、消費者に届けることなどをしたいと思い、農業法人に入りました。
その農業法人では子どもを都会から田舎に連れてきて、農作業を一緒にすることで生きる力を養っていくということをしていたので、そういうことにも興味がありました。
けれど、独立するという頃は、本当は農業はもういいかな、なんて考えていたんですけど(笑)。
自分で農業をやってみたい、今までのように市場に流通させていては、米農家をやっていけないので、個人の人に向けて直売をしていきたいと聞き、改めて一緒にやってみたいとおもいました。

 

会町は、霧が出て米作りに適している

2人が『おんじ屋』を始めて6年。
今は、度会町内の4つの集落でミルキークィーンを作っています。
全部の田んぼを合わせると10ヘクタール。
台風や夏の異常気象、米を作るのに穏やかな年はありませんが、おいしいお米になるように丹精込めて作っています。

 僕らが一番工夫できるのは土作りかなと思い、この冬場にいろいろしています。
山に行けば行くほど、朝と昼の寒暖差が大きいんですよ。
野菜もそうなんですが、寒暖差がある方が、お米でいうと甘みが増します。
ここは宮川があって霧が出やすいのですが、霧が出る地域のものは美味しいといいます。
あっさりしたお米を作ろうとしても、逆にもっちりしてしまうんですよ。
ミルキークイーンはもともとモチモチしているので、よりモチモチして甘みがあってという特性を生かしてくれる環境だと思います。

 これをやっているから、このミルキーは美味いという確証はまだ少ないけど、ミルキークイーンを食べた中でここのが一番美味しかったと言ってくれる人が、一人ならずけっこういろいろな地域の方から言われます。
それはなんでだろうと考えたときに、ここ度会町の唯一無二の環境なんじゃないかなと思います。
山でいろいろな微生物や枯れ葉などの成分が蓄えられたお水が、巡り巡って田んぼに流れてくるのも貴重な環境だと思います。

 

善事業ではなくもうかる農業をやっている

毎年、徐々に田んぼの数を増やしてきました。
創業以来、累計40トン以上のミルキークィーンは、全国各地のみなさんに
食べられています。

 僕らは儲けないと意味がないと思っています。
慈善活動でやっていると『赤字覚悟でやっています』みたいのはあまり好きではなく、儲けてそれなりの形にしてやっているということを評価してほしいですし、そういう形を作ることが、若い子たちが「じゃあやってみようかな」という思いにつながるかなと。
そんだけできる(儲けられる)のだったら、僕もやってみたい、と。
いろいろな人の声を聞くと、「農業なんてやらんほうがええ、米なんて買ったほうがマシや」なんてなっちゃうんですけど。
やり方次第でしっかり食べていけるし、やっていけるということを証明したいです。

 

だけでなく餅や野菜などを生産、そして販売する直売所を作りたい

健康な米を作り、お客様に喜んでいただく。
夫婦で力を合わせ魅力あふれる農業を実践しています。

 屋号の『おんじ屋』で、なんで『屋』にしたかというと、農業で米作りだけでなく、農業にかかわることや地域に関わること全般をやっていくことを目指しているからです。
今はお米主流でしていますが、野菜を作ったり、果樹や木の実、そういう自社生産を極力やっていき、ゆくゆくは店舗というか直売所をやってみたいですね。
今は加工も始めてお持ちを作っていますが、さらに米粉を使ったお菓子や、ちょっとしたお土産になるようなものを作っていきたいと、直近では思っています。

 『おんじ屋』は『心もからだもよろこぶ米作り』をモットーにしていて、その食べた瞬間に身体中の細胞が喜ぶような食べ物を作りたいと思っていました。
しかしコロナ禍に入って、いろいろなお客さんと対応している中で、それをより強く感じるようになりました。
いろいろ大変だけど、このお米を食べることで元気が湧いて来るみたいな…そういう商品づくりをもっとしていきたいと考えるようになりました。
それに準じて、ミルキークイーンだけではなく玄米の良さとかお米の良さを、改めてみんなに知ってほしいと思い、情報提供や料理教室など、どんな形になるかはわからないけど伝えていきたいです。

 僕らの年代で農業をしている人って、度会町でもなかなかいないので、腸内からの地域からの期待っていうのも自分たちなりに感じながらやっています。
常に応えたいなという思いがあります。

 いろいろな大変な事があっても、新米出ましたと言ったら「待ってました!」という声が返ってきます。
その声を聞くだけで、今までの苦労がすべて吹っ飛ぶという感じですね。