FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年2月20日放送

今回のお客様、塩本幸子さんは、バリ島に住んでいる伝統絵師クンチ氏とコラボレーションした作品を作っています。
クンチ氏が描いた絵が日本に届き、そこに塩本さんが真珠を重ねていきます。
光の角度によって、様々な変化を見せるあこや真珠。
見るたびに印象が違って見える作品です。

の先を潰した筆を使った絵に真珠をのせる

インドネシア・バリ島の伝統絵師のクンチ氏がウブドに住んでいらっしゃいます。
昔は、バリ島には筆や絵の具など絵を描く道具がなかったので、布に竹を潰して絵筆代わりにし、クララックという木の実を潰して墨代わりにしたもので絵を描いていたようです。
それが伝統絵画として伝わってきているのですが、今ではバリ島でも少なくなっています。
その一人がクンチ氏です。
彼の絵のをひと目見て、そのタッチに真珠を乗せる場所がたくさんあると思ったんです。
そこで、ドキドキしながら、あなたの作品に真珠を乗せさせてほしい、コラボさせてほしいとお願いしたところ、とても気軽に「いいよ」と言ってくれました。
それからコラボが始まりました。
これをどうやってしていこうかと模索しながら…。
5作目くらいで大きな作品に取り掛かりました。
まだ5作品しか作っていないのに!
ポジティブな性格なので、なんでもやろうと思ったらやりきっちゃうんです。

 

本とバリでコラボしていることが不思議な作品

フランス芸術家協会『ル・サロン』の絵画部門の最高責任者の方から、「普通、コラボレーションは夫婦などが多かったり同じ場所で作業するものなのに、一人はバリ島で、一人は日本にいて、どうやってこんなコラボ作品を作っているんだ」と言われました。
いつもお会いするたびに言われます。
オーダーすると1ヶ月くらいやり取りにかかります。
で、決まったらデッサンがあり、描き直しがあり、細かい打ち合わせをメールで全部します。
それで彼のほうの完成が1〜2ヶ月かかります。
それから日本に送ってきて、私が真珠を乗せるという作業なので、最低でも2〜3ヶ月はかかります。
真珠を持って、こっちの作品じゃなくてあっちの作品に合うわ…という感じで、大体2作品くらいを同時進行しています。
大きい作品は並べることができないので1作品ずつですが、小さな作品は2作品で進行していますね。

 

本の人より世界の人の方が認めてくれている

日本の方よりも海外の方のほうが認めてくださっているかもしれません。
世界中の美術館や図書館に寄贈される『アートメゾン』という国際美術年鑑があるのですが、ここでまず認めていただいて、作品を掲載していただいたことがご縁で、あちこちからお話が来るようになりました。
このときにいろいろな方に寸評していただくのですが、私の作品は総合監修で一番偉い方が寸評してくださいました。
私は変形した真珠を使うのが好きなのですが、その良さもそこで取り上げていただきました。
世界中の美術愛好者が読む本ですから、世界中のあちこちから自分のところの美術館で展覧会をしてほしいというお話を頂戴するようになりました。
その元が『アートメゾン』なんですね。
とてもありがたいことでした。
日本の真珠の魅力を伝えるのなら、日本ではなく世界中で展示し、世界中の人に見てもらわないと伝わらないですよね。
どうしたら良いかと悩んでいたところ、娘があちこちの美術関係者に画像つきのメールを送ってアピールしてくれました。
そうしたら『ル・サロン』の日本の窓口会社の方から素晴らしいとメールがあり、それからのお付き合いとなっています。
その次に、ここに載せる前に『モナコ公国芸術祭』で展示していただいたときに、『ル・サロン』の絵画部門総合責任者のアラン・バザールが総合監修をされていて、「素晴らしい芸術作品だからル・サロンの国際応募展に出展しないか?」とおっしゃっていただきました。
コラボだと伝えると、それでも構わないと言われました。
誰が作ろうが、どんな風に作っていようが、自分たちはまったく気にしないと。
完成した絵画が芸術品かそうでないかで、それで入選するかしないかを決めていると。
そこで初トライしたところ、初入選しました。
めったに無い、貴重なことだと言われました。

 

画を通して世界平和を願う

今もたくさん戦争が起こっているので、絵画を通しての世界平和は願いの一つでもあります。
バリ・ヒンドゥーの『オーム・シャンティ・シャンティ・シャンティ』という言葉にも『世界中の人が幸せになりますように』の意味があります。
1つ目のシャンティで自分を幸せにして、2つ目のシャンティで周りの人を幸せにして、3つ目のシャンティですべてを幸せに…という願いが込められている言葉です。
その言葉とともに、同じような願いを以て作品作りをしたいと思っています。
今年は国際美術展がニューヨークのカーネギーホールで開催されます。
9.11のような惨事を二度と起こさないようにとの願いを込めて、作品を出品しようと思っています。
こちらのバルーンにしても悪魔祓いというか厄払いというか、悪いものが入って来ないようにという、日本の獅子舞のような意味があるので、テロのようなことが起こらないと願っていますし、こちらは、この『オム』という文字に世界中の人が幸せになるようにという『平和と平穏』の意味が込められているので、絵画を通して平和を訴えるということを、これからも続けていきたいですね。

少しでも英虞湾産のあこや真珠の魅力を世界中の人に伝え、志摩市の真珠業界の活性化につながれば嬉しいなと思っています。