『ミエてくる!』2021年6月1日

伊勢市の二見は、常世の国からの波が、現世で1番最初にたどり着く渚ということで昔から神聖な場所として尊ばれてきました。
その清き渚と、そこの潮からできた入浴料、『みそぎのゆ』のご紹介!

神代の時代、倭姫命に導かれた天照大神様は、「神風の伊勢の国は、常世の浪の重浪帰する国なり。傍国の可怜国なり(訳:伊勢は、常世の波がうち寄せる良き国である)」というお告げを下し、伊勢の地にご鎮座されたと言われています。二見は伊勢の東側に位置し、まさに常世(海の向こうの桃源郷)からの波が打ち寄せる清き渚として尊ばれてきました。

 

今回、大潮の時期にしか行けない、二見の清き渚にある『潜島(くぐりしま)』に行ってきました!
『潜島』という名前ですが、ここは島ではなく、陸続きの干潮時にしか行くことのできない海蝕洞(かいしょくどう)という、波浪による浸食でできた洞窟です
ここの場合は、トンネルのようになっている洞門(石門)タイプになっています。

 

海岸線をずっと歩いて行くと、鳥居が見えてきます。ここから先は、ものすごくハードな岩場が続きます。
行かれる際は、大潮の干潮の時間に行くことと、しっかりとした靴を履き、軍手をすることを忘れずに!
約15分間歩くと、やっとたどり着きました。

 

ここは、この海岸線の向こう側にある、伊勢神宮・内宮の摂社『粟皇子(あわみこ)神社』の遥拝所(ようはいじょ)として伝えられています。
*遥拝所とは、遠いところから、その神さま(社殿)に向かってご参拝をする場所

中に入り、後ろを振り返ると…

 

ハート型に空を見上げることができました。

普段、潜島は潮に隠れていて行くことのできない場所です。
古来よりの神どころ、今は自然の荒々しさを感じることのできる神秘的な神どころでした。

 

そして、この清き渚の潮から誕生した入浴料、それが『みそぎのゆ』です。

 

『みそぎのゆ』は、二見浦の旅館街にあるお土産屋さんの大洋堂(たいようどう)さんが製作されました。
大洋堂さんは、来年で100周年という歴史あるお土産屋さんで、現店主の福井謙一さんは5代目。

清き渚である二見の二見興玉(ふたみおきたま)神社でご参拝をし、心身ともに清らかにしてから伊勢神宮へご参拝に行くのが昔からの習わしでした。
それが【お伊勢参りは二見から】と言われる由縁です。
このことを多くの方に知っていただきたいというので製作されたそうですが、なんと製作には約1年かかったようで…
自分たちで『潜島』付近の潮を汲み、運んで山奥で薪を使って鍋で焚いて塩を精製、何度も試作を行っての製作。
その際には何度も焦がしたり、塩に藻が入っているといけないので、一個ずつピンセットで取り除くなど、多くの苦労があったそうです。

実際に使ってみると…ホワ~っと心が落ち着く良い香りが浴室に漂います。
お家でも手軽に、心身ともに清らかにすることができました。
お家時間が増えた今、気持ちをリフレッシュすることができて良かったです。

その他にも、大洋堂さんには【この地に足を運ばないと得ることができないものを置きたい】という想いから、カエルにまつわるもの、しかも作家さんの手作り一点物がたくさんありました。

 

二見にとって、カエルはシンボルのような存在です。それは、カエルが二見興玉神社の御祭神である猿田彦大神様のお使いだと言われているからです。
『無事カエル』『お金がカエル』『若ガエル』などの縁起により、御利益を頂いています。

 

陶蛙作家の楓 利雄さんの作品。揺らすと「ケロケロ」と鳴いてくれました。

 

陶芸作家の美幸ひなたさんの作品。みんな表情が違うので、見ていて飽きません。

 

いろんな色の「福丸カエル飴」。舐めると昔懐かしい穏やかな甘さの飴でした。

 

そして…驚くべきは、ここの店員さんたちの製作能力の高さ。
なんと、商品を置いている台は全て、みなさんで1台の見本を見ながら製作。
天井の木の枠も、自分たちで製作。

 

壁の漆喰も自分たちで塗り、障子に張っている布は、おばあ様のお着物をリメイク。

 

そして囲炉裏や、壁にはめ込んでいる和ダンスもリメイクして使用。

古き良きものを今の形に作り直し、大切に使って後世に語り継がせる気持ちが、昔から尊ばれている二見の清き渚の潮より、『みそぎのゆ』を作るに繋がったのかなとお話を聞きながら感じました。ずっと語り継がれている伝統や、良い風習はこれからも残していきたいものですね。


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