FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年7月17日放送

格子戸作りの家が続く伊賀の町並み。
ここで伝統工芸を守り伝えているのが馬場建具店の馬場幸次さんです。
釘を使わず木を組み立てる技法が組子。
美しい組子の作品が作り出されます。

父さんの跡を継いで建具を始めた

もともと親父が建具屋をしていて、跡を継ごうと。
弟でしたが兄は全然関係なく、昔から建具具をするのが大好きで、高校も上野工業のインテリアに進み、今になってそこで学んだデザインなどが役に立っています。
組んで行くとき、洋風のところでも障子を入れなさいと言っています。
障子は光を通して、風を通して、開けられて、結露を取ってくれて。
そしてもう一つみんながわかっていないのが、障子が焼けて茶色くなるのは光で焼けているのではないんです。
実は、部屋の空気を濾過しているんです。
だから目詰まりを起こして、張り替えるときれいになるんです。
トイレなども寒いので、サッシの上に障子を入れさせてもらいます。
障子を入れるだけで、とてもあたたかい。
特に伊賀は寒いですから。
いろいろ発信して、お客様が欲しい物を作ろうとしています。

 

まざまな業種の人が支援してくれている

障子の中にはサンがあって、そのサンを、腕の良い人がどんどん考えて、日本の文様にして使います。
麻の葉の文様は邪気を払うという意味があるし、上の大鱗のような柄は今の穏やかな生活が荒波立つことなく続くように、との意味があります。
七宝組という丸がたくさん重なった文様は、繋がっていきますようにとの思いを込めて作っています。
庭を見るのに僕の建具が邪魔をしない程度の柄。
僕の作品は「どやっ!」と見入るような感じでしたが、今はそこに馴染んで、よく見たら「ええ仕事しとるな」という感じ。
建具というのはとりあえず、部屋と部屋を間仕切るものから始まって、外部を囲うものになって…という感じかな。
ここでコースターの体験なども用意してますが、これも江戸時代のお寺の障子などは編んだように作られています。
ヒノキの良い香りがすると思います。
良いお寺の障子は編んであることで外れることがありません。
コースターを使っているときに濡れた布巾で拭いてもらって、良い色が出てきてきます。
30年後にどう育てるかはお客さん次第。

 

子の作業について

3cm以下の刃を、だいたい7000個くらい作っています。
こうやってはめていきます。
三角の三ツ組手の中に、30ずつ、60の切った破片を入れて・・・。

(とんとん叩く音)

麻の葉でいろいろなものを作りました。
どんどん組子文様デザインが増えていきます。
また地方にもどんどん来ると思います。
兵庫県の高砂まで、麻の葉を全面に入れて光を楽しめる作品を作らせてもらったこともあります。
この幅に、右から左まで三角がピッタリ合うように作っています。

 

後のパーツはその家の人が体験できるようにしている

テーブルで組子を入れるとき、1箇所だけ空けておきます。
お客さんの家に納品しに行ったとき、そこを嵌めてもらい完成となります。
自分で作ったという喜び。
全部作るのは大変だから、1つだけ。
失敗しても良いようなところ。
小さな子がいる家に行ったら、一緒にカンナで木を削ったりします。
失敗したら僕が削り直しますけど。
その子は保育園に行っていたのですが、翌日僕がまた来ると知ったら、保育園に行かないで待っていると言いました。
小さなときから僕のファンを作っておかないと(笑)
障子ってあたたかいから、台所でも障子。
トイレにも障子。
溝がないところでも入れられるから。

職人の腕を磨くのはお客さん。
お客さんがあってこそ。
お客さんから無理難題を言われて、それにがんばって応えるから。