今回紹介するのは、かつて志摩市阿児町鵜方で生産されていた「鵜方紅茶」の復活に取り組むみなさん!
志摩市阿児町鵜方では、明治から昭和にかけて紅茶の生産が行われており、全国の品評会でも最優秀賞を受賞するなど、鵜方紅茶は全国に有名だったと言われています
しかし、その後輸入紅茶の登場により生産は行われなくなり市場から姿を消してしまいました
JA伊勢では、平成29年から鵜方紅茶の復活を目指して試験製造を開始、地元の茶農家などを訪ねるなど調査を行い、紅茶用の品種『はつもみじ』の木を残していた谷川原さんの茶畑で今年の収穫が行われたました!
また令和2年から志摩市のふるさと応援寄付の返礼品として採用され、最近では地元のホテルや喫茶店などでも販売をはじめた。
鵜方紅茶。
その香り、味わいは高く評価され、大正9年の全国製茶品評会紅茶部門で最優秀賞を獲得。
しかしその後、輸入紅茶の普及などにより生産量が激減。
市場から姿を消しました。
そんな幻の紅茶を求めて、志摩市阿児町鵜方にやって来ました。
JA伊勢は、一度は姿を消した『鵜方紅茶』を今に蘇らせる取り組みを行っているのです。
こちらが紅茶用の品種『はつもみじ』。
今、まさに収穫中です。
『一芯二葉』とか言って、一つの芯と葉っぱが二つのセットがが、一番高級な茶葉だそうです。
茶畑の『はつもみじ』は谷川原さんの茶畑で収穫されています。
「紅茶自体は、うちの茶は紅だと親父から言われていましたが、厳密な歴史や名前は全然知りませんでした。
しかし4〜5年前くらいから農協さんが『鵜方紅茶』を見直そうと。
うちのはたまた『はつもみじ』で、緑茶にも紅茶にもできるということで、親父の代からのが残っていました」
一度は途絶えてしまいましたが、谷川原さんところで、紅茶のこの品種の木が残っていたということですね。
「うん、そうそう、たまたま。
親父に先見の明があったのかはわかりませんが、紅茶専用の茶葉は中国や台湾からの輸入に負けてしまったんですね。
『はつもみじ』はたまたまこ通の緑茶にもできるため、親父の惰性で現在に至っているという感じです(笑)』
と、谷川原さん。
ちなみに『はつもみじ』は緑茶として飲むと、普通の『やぶきた』などに比べると渋みが強いそう。
そういう意味で、紅茶に適した品種だと言えるようです。
明治から昭和にかけて紅茶の生産が盛んだった鵜方。
全国で認められたその香りと味わいは、なぜ姿を消したのでしょうか。
「昭和に入ってから安い海外製の紅茶が輸入されるようになり、需要がそちらに傾いてしまったこと。
さらに鵜方紅茶を生産する方も高齢になって消えていったと考えられてます。
かつて、大正9年の国産紅茶の品評会では、金賞を受賞をし、新聞にも掲載されました。
当時の金賞が最優秀賞に当たるような賞だったらしいのですが、当時の資料があ『阿児町史』という古い書籍にしか残っていなくて、当時を知っている方も、もういません。
今はペットボトルのお茶が普及していて、若い人はわざわざお湯を沸かして急須でお茶を飲まない時代になってきていて、お茶の価格も下落しています。
紅茶だと若い方もあのお湯注いで飲まれるので、そこに需要を見出して、お茶を紅茶に加工するように取り組みを始めました」
と、JA伊勢鳥羽志摩経済センターの竹内大登さん。
この日、谷川原さんの茶畑で収穫されたのは二番茶の新芽。
竹内さんをはじめとするJAの職員も大勢参加してみんなで手摘みをしました。
半日かけて収穫できたのは、わずか30キロほどの『はつもみじ』などの新芽。
これが鵜方紅茶になるのです。
収穫された茶葉は、すぐさまJAの茶加工場に運ばれ、萎凋(いちょう)と呼ばれる干し作業に入ります。
ちなみにこちらの網は、きんこ芋を乾燥させるためのものだとか。
そして一晩風に当て、水分量が60%ほどに減少したら、茶葉を揉む揉捻(じゅうねん)作業に入ります。
緑茶は蒸してからですが、紅茶はそのまま揉みます。
茶葉から絞り出された酸化酵素で自然発酵。
緑の葉が赤く、香りも紅茶のそれへと変わります。
ちなみにこの発酵を途中で止めたのが烏龍茶。
最後まで発酵させたものが紅茶です。
熱を加えて発酵をとめ、乾燥させたら、鵜方紅茶の完成。
現在、鵜方紅茶は、志摩観光ホテルなどで販売されている他、
志摩市のふるさと納税の返礼品にも選ばれ、ふるさと志摩の味として楽しまれています。
また7月1日から志摩市の『ぱん屋ふじ田』では鵜方紅茶を練り込んだ『鵜方紅茶あんぱん』が発売されています。
そして伊勢志摩サミットが開催されて世界の玄関口となった賢島駅の近く『イワジン喫茶室』でも販売始まりました。
こちらはティーバッグになっていて5個入り。
お土産にもピッタリなパッケージです。
「地元の紅茶を地域の人はもちろん、観光客の方にも知ってもらいたいと思い、、取り扱いをはじめました。
日本の紅茶っていう感じで美味しくいただけます。
飲みやすいというかクセのがないので、どんな料理にも合うと思います」
と、『イワジン喫茶室』の岩城悟さん。
「お茶産業だけでなくて、地域の活性の一役を担えればと思います。
志摩に来て、飲んで、買っていただけることが定着してほしいですね」
と、JA伊勢鳥羽志摩経済センター経済センター長の野村沙織さん。
「こんなに鵜方紅茶が歴史のあるものとは知らなかったので、改めて認識しました。
親父もそれなりに苦労してこれを残してくれたのだから、その思いだけは続けて行きたいです。
仲間が増えて、生産量が増えるといいなと思います」
と、谷川原さん。
「紅茶以外でもお茶農家さんたちが継ぎ手がいないのためことが多いので、紅茶で盛り上げて、紅茶だったらやりたいという人が増えたらなと思います。
鵜方紅茶をみなさんに飲んもらい、モチベーション上がるようにしてもらい、どんどん輪を拡げていきたいです」
と、竹内さん。
復活を遂げた幻の紅茶。
鵜方紅茶。
時を越え、たくさんの人の手を経て、その香りと味わいが、いまに蘇りました。