FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年8月28日放送

今回のお客様は、名張市で料理教室や飲食店のサポートをしている『バルバル』の菅井美幸さんです。
東京・世田谷でスペインのバルのようなお店をしていた菅井さんが名張に移住して、料理の楽しさを伝えています。
子ども料理教室『リトルシェフ』には、幼稚園や小学生の子どもたちが通っています。

初は出張料理、その後、料理教室を始めた

最初は出張料理ということで出店したり、お家でパーティーをするときに呼んでいただいて、そこで料理を作ったりしていました。
もともと食の安全や食べ物の食べ方に興味がありました。
それを伝えていきたいと思ったのですが、大人の方に料理教室として伝えるよりは、お子さんに私の料理人としての技術を伝えながら、得意とするメキシコ料理やスペイン料理の食材もみんなに伝えていきたいと思いました。
食について聞きたいことがある人に届いているといいですね。
「なんでもいいや」という感じだと、私がうるさく言うのがイヤかなと。
食に対して興味のある人が来ています。
誰でも参加しやすいようなところからやっていきたいと思っています。
だけど調味料とかはすべて、不自然なものは使わないと、こっそりとモットーとしています。
例えばマヨネーズやケチャップを使うときも、私が作っておいたものを使っています。

 

じん切りは美しく切ると目にしみない。きちんとしたストロークを

料理人と同じように使えるようになってほしいんです。
みじん切りにしたって、ゆっくりたどたどしく切ってもいいけど、正しいストロークで切ってほしい。
それによって料理の味が変わってくるんです。
やっかいだと思われがちな玉ねぎのみじん切りも、美しく切ると目に染みないんですよ。
ちゃんと切れていないから染みるわけで、スパッと切ると飛沫が少なく目に染みません。
そういうことをちゃんと教えていきたいです。
例えば切り落とすときの玉ねぎの音とか。
シャリっていうか、シュトっていうか…お子さんはやっているうちに目に染みないと気づいていくんですね。
今の包丁の動かし方、とても良かったからこの調子でやっていこう、とか。
ここはやっぱり一人ひとりに向き合いたいということと、個人レッスンの場合は、お子さんに強烈な個性がある…ということも想定して、「どうしてもこう作りたい」という子もいます。
私はものづくりの人間として、「どうしてもこう作りたい」はとても大切だと思うので、そういう子こそ歓迎しています。
先日、ピザ生地づくりをしたのですが、生地を作るのに、どうしても形を作りたいと。
アーティストな女の子で、生地で形を作ったところ、くまのプーさんの蜂蜜の入れ物をとても綺麗に作りました。
でも、ここにチーズを載せないとピザになりません。
そう言ったら、その子はしばらく考えた後に、「料理だからね」と。
可愛いのも良いけど、美味しいのも良いよね…と話をして、チーズを乗せることになりました。
素晴らしい。
でも、そんなに綺麗に作ったものにチーズを乗せるって、ものを作っている人としてちょっと悲しい気持ちがあるのではないかと聞いたところ、「でも一枚チーズを取ったら下から出てくることが自分にはわかっているから大丈夫」と言って、良い感じのピザを作ってくれました。
けれど、教えながら、私のほうがウルウルしちゃって…立派だなあと。
そういう学びがありますね。

 

どもたちが作った料理を親がお金を払って食べるシステム

今、私が積極的に取り組んでいることが『小学生レストラン』。
先日、『やなせ宿』というところを借り、子ども7人くらいを引き受けて料理を教えながらランチを作りました。
そのランチをお母さんたちがお金を払って食べに来るんです。
本当に『小学生レストラン』。
三重県の相可高校は『高校生レストラン』として有名ですよね。
オマージュという感じで、お名前を拝借しました。
私が料理教室を開催しても、そんなにたくさんの人数は見られるわけではありませんし、また、料理教室に通わせるとなると、お母さんからしたらコストもかかります。
そう考えると、料理したいけど、教えてあげられない子たちがいっぱいいるんだよな…と。
なるべく広い門戸で教えようと思ったのが一つです。
『小学生レストラン』という取り組みに、どこかの誰かが共感してくれて、別の地域でも広がってほしいというのが、今のテーマです。
『小学生レストラン』を私があちこちで話すことで、『子ども食堂』とかしている方と一緒にできるんじゃないかなと思うんですよ。
子どもさんが一緒にキッチンに入ってくれたら…邪魔かもしれませんが…教えてあげて、子どもさんが食べさせてもらう、プラス作ることができるようになったらいいなと思います。
なおかつ、お母さんたちがお金を出して食べに来るので、公の、社会貢献のイベントとしては赤字が少なくなると思うんです。
定食1食800円とかで食べてもらうと、有償ボランティアさんにガソリン代を払えるくらいの収支になるんですよね。
調理イベントって、必ず誰かが持ち出ししてやっていて、参加者は500円とか材料費にも満たない額だったりします。
その中でみなさん一生懸命やっているんですね。
でもそれだと続きませんよね。
その点、子ども食堂と調理をセットにしたイベントなら、黒字にはならなくても赤字が0になるような感じでやれるので、私は推しています。

 

球にとって大切なことを学んでいる

料理をできるようになることで最終的に行き着く先は、地球のことをもっとちゃんと考えて、ということなんです。
食べ物がどんどん無駄になっている世の中で、自分に技術がなかったら無駄にせざるを得ないけど、うちはもう、キッチンから傷んだ食べ物とかまったく出ないんですね。
私が飲食店をやっていた頃から、食品ロスはほぼありませんでした。
なかなかそういうことも、忙しいということもあり、難しいことだと思います。
料理するためには食材がないといけなくて、食材も健康な土で育った食材とそうでないものは味が違います。
それに気づいてもらって、私たちがどんなことをすればもっと地球が良くなるかな、ということを感じる子どもになってほしいと思います。
技もそうですし、気持ちも。
こんなに美味しいトマトを作ってくれてありがとうという気持ちがあれば…。
作ることは、相手のことを考えるということなので、子どもたちが「お母さん喜ぶかなあ」と考えながら作っている。
で、実際喜んでくれるというのは、とても良いことだと思います。
誰かのために一生懸命になって…熱いけどがんばってかき混ぜて…そういうことをしてほしいですね。

料理を習うということが選択肢の一つとなってくれたら、嬉しいですね。