FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年11月13日放送

今から10年前、伊賀市に三重県で初めてのワイナリーが誕生しました。
作ったのは『NPO法人スタイルワイナリー』の小林康志さん。
今年もおいしいワインが出来ました。

 左:菊野善久さん  右:小林康志さん

々は強い品種のぶどうを作りたい。から始まった

小林 伊賀は生食用のブドウの産地なんですね。
巨峰とか伊賀乙女とか有名です。
しかしとても良いブドウなんですが、病気に弱いというところがありまして、病気に強い品種ができたらいいなと考えていました。
そうこう考えているうちに野生のブドウ、山ブドウが代表的な品種ですが、それを栽培し、品種改良してみたらどうだろうと思い付いたところ、日本でもそういう物好きな人がチラホラ現れまして、勉強会を作ろうとはじめたのが、20年ほど前になります。
10年くらい日本のいろいろな所からいろいろな品種の山ブドウの枝を取ってきて品種改良をしたりして、植えてみると、なんとか栽培できるというところまで来ました。
しかし野生のブドウなので粒が小さく、種が大きい、そして皮が分厚いと。
生の果物として食べるにはもう一つな感じです。
完熟したら甘くて美味しいのですが、フルーツとして食べるにはちょっとしんどいなということがあり、どうしようかと仲間と話したところ、ブドウといえばワインの原料にしたらいいのではという話で盛り上がり、そのメンバーの中で一番歳が若かったのが私で、一番若いのだからチャレンジしてみてはと言われまして、じゃあやりますと言ってしまったので引き返せなくなった…という流れです。

 

林さんのワインは、控えめながらも芯が強いワイン

小林さんが作ったワインを販売しているのが、伊賀市の菊野商店です。
社長の菊野善久さんにとって、伊賀産のワインが完成したことは嬉しいニュースでした

 

菊野 ワインの風味は2種類あります。
アロマとブーケ。
アロマは果物が持つ本来の風味、ブーケは醸造途中から出てくる風味です。
アロマとブーケのバランスの良いワインが、美味しいワインだと言われています。
アロマとブーケの両方を持っているお酒はワインだけなんですが、今年のはかなりバランスが良いのではないかと思います。
日本で販売されているワイン…輸入物でも国産物でも原料はヴィニフェラ種という種類の葡萄からできています。
ヴィニフェラ種は中近東原産のブドウで、今はヨーロッパや地中海で栽培されているワインですね。
そちらのワインの中で良いものと言われているものは、華やかな香りがフワ〜っと立つわけです。
もしくは重厚な味わいがします。
ワインで使っている野生のブドウは、そんなに華やかな香りがあまりない。
控えめな感じになります。
あとはちょっと酸っぱい感じがします。
おとなしくて控えめな感じなんですが、野生の血が入っているので、芯が強いというような味わいがあると、自分では思っています。

 

とは比べようのないワインだった

菊野 実は私、ニッカウヰスキーという会社にいまして、大学を卒業してから6年ほど勤めていました。
これからはワインを売らなきゃならないということで、ちょっと勉強してきなさいと、ほんの少しだけですが会社から派遣されて、ボルドーとブルゴーニュの提携先に研修を兼ねて行ってきました。
そのときにワインの奥深さに気づきました。
いずれにしても日本酒にしても酒造りは文化だと思っていましたので、その文化の奥深さを目の当たりにし、衝撃を受けました。
しかし日本がフランスのワイン近づくというのは、文化的な側面から言ったら、難しいというか不可能に近いよね、という感覚を持っていたのですが、ここ近年、日本産ワインが見直されていますよね。
そういう意味では、日本独自の文化を構築していけば良いと気づきました。
その中で、小林さんのワインは他にない、比べようがないという魅力がありました。
だからこれはすごいなと。
ネーミングも『野生ブドウ』と、独特じゃないですか。
その名前の通り、土臭さというか、伊賀の風土に根ざしたものがあるということで、売らせてもらっています。
菊野商店で小林さんのワインを扱うようになって8年が経ちました。
試行錯誤しながら、スタイルワイナリーを広めていきました。

 

れ残ったことがない。一年かけて一年分が売れていく

菊野 最初は「なぜ伊賀のワイン?」ということで、なかなか売れなかったのですが、いろいろなイベントなどで地道に販売し、テイスティングなどもしてもらっておると、少しずつファンが増えていきまして、今は非常に売れ行きが良いです。
毎年、小林さんのワインは本数が違うんですよ。
けっこう年によって波があるので、その本数を1年間で売るかなと考えながら販売しています。
不思議なことに、販売を始めてから売れ残ったことが1度もありません。
年によっては早く売り切れることもありますが、ちょうど1年分を、次のリリースまでに販売しているという状況が続いています。
基本的に伊賀の産物は、手間ひまをかけて愛情を持って丁寧に作られているものが多いので、それをじっくりわかっていただいて、お買い上げいただき楽しんでいただくのが、我々の目指すところだと思います。

小林 ワイン造りの楽しさ、これは私にとっては人生の彩りかなと思っています。

 

株式会社菊野商店
三重県伊賀市上野農人町459番地
TEL 0595-21-0510(代表)
FAX 0595-23-5074
https://store.kikuno-co-ltd.jp/