FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年8月18日放送

伊賀鉄道上野市駅から城下町の街並みを散策していると、『昭和ハウス』に出会います。
戸を開けるにはちょっと勇気がいるかも知れません。
でもそこは、昭和の世界がぎっしりと詰まっているのです。
今回は『昭和ハウス』代表の、冨永潤さんにお話をうかがいました。
とってもきさくな方ですよ!

■昭和のものが大好き!

昭和のものを好きになったきっかけは、リサイクルショップで掛け時計を見つけたことから。
家に飾って楽しんでいたんですが、掛け時計だけでは寂しいなと思い、昔の茶箪笥やテレビ、ラジオ・・・そうして昭和の部屋を作って遊んでいくうちに、デザインが楽しいな、と。
そこからハマっていったんですね。

現在持っているテレビは、100台くらい。
珍しいのでは、テレビに時計が付いているものかな。
これは昭和35年製で、時計をつけることによって、そのタイマーを使って、自動でテレビの電源を入れたり切ったりできるっていう、画期的なテレビ。
メーカーはシャープですね。

昭和34~5年というと、色々なメーカーから色々なテレビが発売され、価格も下がってきて、一般の人がようやくテレビを手にできるという時代。
なので他メーカーとの違いを出すため、ちょっと変わったのが出てきている時代なんですね。
ほとんどのメーカーさんが珍しいものを作るんだけど、たいてい、数が売れずに消えていくんですよ。
この時計付きテレビは、そういう意味でとても数が少ないし、珍しいんです。

■今でも映る昭和のテレビ

このテレビはアナログながら、今でも見えるんですよ。
デジアナ変換というのをケーブルテレビさんがやってくれているんで、非常にありがたいです。

昭和38年頃に大流行しました、セルロイドというかフィルターみたいなものもありますよ。
昭和38年といえば、カラー放送が始まっていて、全部ではなく、たまにカラー放送をやっていたんですね。
カラー放送の際には、テレビの隅に「カラー放送やっています」というマークが付くんです。
でもカラーテレビはものすごい高くて、まだとても手が出ず、みんな白黒のを見ている時代。
で、このフィルターを通すと、ちゃんとカラーで映るわけじゃないけど、カラーになります・・・ということで大流行したんです。
もちろんカラーには見えないんですけど(笑)

色々集めていて、こういった珍品が出てくると、非常に楽しいんですよね。

■映画に昭和の家電を貸し出し!年代にこだわります!

これまでたくさんの映画に、昭和の電化製品や道具を提供してきました。

有名なところはでは『オールウェイズ 三丁目の夕日』、最近では『永遠の0』。
『永遠のゼロ』は戦前・戦時中の映画ですね。

『オールウェイズ』には、いっぱい、あちこちに出ています(笑)
借りてもらうときは、それこそトラックで何杯か行っている状態です。
説明してすぐにわかるのは1作目の、みんなでプロレスを見ているテレビ。
映りが悪くなってボンボン叩かれたり。
映画の試写会で、そのシーンを見て、みんな笑っているんですけども、僕だけ青ざめていました。
「そんなに強く叩いちゃダメ!」って。
映画の見方が違うんですね。
でも知っていると見方が変わってくるので、たくさん使ってくれて、観客の目に触れてもらえたら嬉しいです。

1作目はレンタルだけだったんですが、3作目は撮影の色々な協力ということになって、現場に立ち会って東宝のスタジオに行ったり・・・。
名古屋でもロケがあったので、そちらで色々な所から借りてきた小道具を飾っていって、現場を作っていく仕事もしました。

僕は時代考証を本当にズバリと行きたいんです。
先程の1作目のテレビを例に取ると、あれは昭和33年の1月から発売開始されたものなんです。
最初に映画の話が来たときに、だいたい昭和33年の話で、東京タワーを作っている時の話と聞いたんですね。
そして(作中で)テレビを購入するのが、スイカを配っているというエピソードが出てくる状況・・・そうなると発売してすぐというより、発売から半年ほどずれたタイミングで、この型が一番いいかな、というジャストなものをこちらから提供させてもらいました。

絶対してはならないのは、一ヶ月でも未来のものを置くこと!
これだけはしちゃいけません。

■昭和30・40年代の電化製品はおもしろい
30年代の電化製品は、これからの日本を作っていく時代、みたいな面白さがありますね。
そして40年代にも40年代の良さがあります。
まだまだこの先伸びてやるぞ・・・という意気込みで、30年代には考えられなかった商品を作っていこうという感じ。
例えばテレビのリモコン。
30年代はワイヤーがあってのリモコンだったのが、40年代に入ると、そこから更に開発されて、今と同じ赤外線が出てくるんですね。
その前には『音波リモコン』なんてのもあって、初期のモノはリモコンの中にピアノ線のようなものが入っていて、それを弾く音でチャンネルを変える、という仕組みなんですが。
お金とか金属を落とす音で勝手にチャンネルが変わってしまったり、いきなり電源が落ちる・・・などのハプニングがあったそうです(笑)
でも、それも面白いでしょ。

50年代になると、だんだんすべてがプラスティックをまとった、同じものに揃えられて来る感じがして、僕にはちょっと。
テレビでもボタンはオンオフだけで、あとはリモコンでね・・・個人的に、もう限界ですね(苦笑)

30年代・40代・・・集めたいのは、実はまだまだいっぱいあります。
だけど場所がゼロ。
欲しい物があっても、これ以上どうにも、物が入れられない状態です。
色々な映画に使っていただいた、楽しい家電がたくさんあるのに、一般の人に一部しか見てもらえないのは、とても残念。
数はいっぱいあるけれど、お金は全然ないので、空いている市の施設とかで博物館的な形で公開して、町おこしをできたら・・・と考えているところです。