FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年11月20日放送

今回は玉城町で注連縄を作っている『角谷産業』の代表、角谷吉崇さんがお客様です。
伊勢志摩地方の注連縄は一年中玄関に飾られます。
家を守る注連縄。
1つ1つすべて手作りで、丁寧に作っています。

城町の岩出・中角地域は昔から注連縄を作っていた

玉城町の中の度会町に近い岩出・中角地区が注連縄の産地となっています。
私もどれくらい昔のことかわかりませんが、岩出に伊勢神宮の宮司さんがいらしたことがあったそうで、その宮司さんが岩出地区に伊勢周辺の注連縄をお願いしたのが始まりだと言われています。
『伊勢型』と呼ばれる、伊勢の形をした注連縄は、松阪から鳥羽・志摩・伊勢が多いですね。
稲藁は昔から、日本人の主食であるお米に感謝して、採った藁で注連縄を作ります。
裏まで白い気持ちで新しい年を迎えるために網代を付けて、アシビで悪を寄せ付けないようにして、柊の痛痛で入ってきた禍神さんを退散させるという意味があります。
で、新芽が成長して古い葉が落ちるということでユズリハを札の裏に飾りまして、古来より『代代を譲る』という意味合いが込められ、昔から子孫繁栄を謳っています。
もともとは伊勢地域の注連縄は、『蘇民将来』だったと聞いております。
昔は人間は足しかなかったので、『蘇民将来子孫家門』という、この文字の伝わりがなかなかできなかったと思います。
『蘇民将来』の『将』は『将来』の将という漢字なんですね。
おそらく誰かが、略式で『将門』と書かれたのだと思います。
それから『将門』とずっと来ていましたが、『まさかど』と読めるんですね。
そういうふうにして、忌み嫌われると勘違いされると困るということで『将門』が『笑門』に変わっていったのだと聞いております。

 

口があるところには五本足、トイレ、井戸、台所には三本足

五本足、という可愛いのがあるのですが、それは基本的にはお勝手口、物置、車庫、納屋…入口のあるところに松の内まで飾ります。
次に三本足。
これも可愛い注連縄で、人間が生活していく中で、必ず必要なものとして、火と水とトイレを祀っております。
あとは台所まわりや井戸などに飾ります。
トンボという注連縄もあり、これは三本足と同じ神様なのですが、主に鳥羽に多い注連縄ですね。
あともう一つは『神永さん』。
伊勢独特の形で、これも玄関に準じて、注連縄の真ん中に守り札が付いておりまして、札には『大福神』と書かれています。
形的には玄関の注連縄の可愛らしく小さな大きさなんですが、伊勢志摩の方は『大福神』を飾る方が多いですね。
まず、飾るときに横の縄を海老反りのように上に反らせて、足(タレ)を末広がりのように八の字に大きく開いていただけると、格好良く飾れると思います。

 

の種が流通していないので、その年の種をとり苗を作る

私とこが作っている稲の品種が全部で9品種あるのですが、そのなかの6〜7品種は買いに行っても売っていないような品種ばかりですので、全部自分で種を採って、来年用に備えます。
まず2月に種に付いているヒゲを取る脱芒という作業があります。
それから種の選別。
3月には種まき。
それから代掻きが入りまして、田植え。
さらに除草作業に続いて追肥をします。
追肥をしないと、色が出ませんので、これも重たい作業なので大変です。
それからようやく収穫に入りますが、これもまた田んぼから藁を出してくる作業自体が本当に身体にきついので、こういうところもあって、辞められる方も増えてきています。
田んぼから刈って、それを出して、乾燥機へ入れて藁づくりを社員の方にしていただいて、それでようやく使える状態になります。
2月から、だいたい10月半ばまで材料の確保にかかります。

 

夜飾りにならないよう30日までには飾ること

一夜飾りというのは神様に失礼だと聞いています。
なんでかというと、ずっと前から正月が来るとわかっているのに、バタバタバタバタして、年神さんを迎えたらいかんよ、という意味だと聞いています。
9という数字は日本人はあまり好きではないので、29日は福(29)の日だというところもあります。
あとは陰陽道で大安とか先勝とか友引とか、このへんで飾ってもらえれば良いと思います。
とにかく30日までにお飾りすれば良いと、私は思います。
こういう仕事は表向きは年末だけ顔を合わせることが多いので、祭り事のような感じで仕事をしているように思われますが、2月から田んぼのことをずっとやっているので、辞められる方は担い手の跡継ぎがいないということで、少しでも街に貢献したいと思っています。

毎年2万5千個の注連縄を作っています。
月に入ると忙しさはさらに増し、美しく仕上がった商品はスーパーやホームセンターに出荷されていきます。
放っておいたら消えてしまう産業だと思っているので、長くこの仕事に携わっていきたいですね。