FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年11月27日放送

今回は菰野町にある『有限会社泰成窯』の伊藤弥彦さんがお客様です。
伊藤さんは菰野町内にある7つの窯元のみなさんで作る『菰野ばんこ会』の代表でもあります。
現代の生活スタイルにマッチした萬古焼の商品を色々と作っています。

藤さんが創業者、新しいことにチャレンジがしやすい

泰成窯は私がはじめました。
平成元年です。
33年くらいになります。
私はもともとこれを販売する商社にいまして、そこで11年ほど販売などに携わっていました。
しかし、一回作ってみるのも面白いのではないかと思い、はじめたわけです。
自分たちで工夫しながら作って、ある程度わからないところは先輩に聞きに行ったりを繰り返してやってきました。
やりたいことやれと親父も言ってくれたので、それではじめました。
やらんと後悔するより、やって失敗したほうがええぞ、と。
やりはじめて30数年年になりますが、これで生活させていただいていますし、今は息子も継いでいます。
ですのでまあ、これを長く続けられるようにがんばっています。
少量多品種ですので、一点物を長くたくさん作るのではなく、いろいろなものを作っているので、変化が大きいですね。
ご飯釜…これは四日市や菰野でみなさん作っていますが、もともとは伊賀で作られていたんですね。
それを四日市の耐熱素材で作ってみったらどうかということで、みなさん作られて。
今は世界にもヒットしていますね。

 

須やごはん鍋、現代の食卓に合う焼き物を作っている

菰野で作られる萬古焼を『菰野ばんこ』として全国に発信しています。
温かみのある食器は、それぞれの工程を職人さんたちが丁寧に仕上げています
四日市萬古と変わらず、耐熱陶器、土鍋とか火にかけてもいい器ですね。
そして萬古焼急須というお茶を淹れる道具もメーカーによって作りますし、また現代に合った食器、若い家族さんたちが好むような食器も作っています。
調理道具も、今、コロナ禍で巣篭もりというか、家族で過ごす時間が多くなりましたね。
そうすると料理も自分たちで作ってみようかとか、時間をかけてもいいな、という思いが全国で出てきたんですよ。
陶板焼きとかグリルパンとか作っています。
お客さんが家で料理をしてみようというのが増えましたね。
家庭にいたら、ご主人さんも料理に参加するし、子どもさんもそういったのを見ているのは、とても良い感じだと思います。
伝統産業ではありますが、現代に合った、お客様に合ったものでデザインなり機能性なりを開発していかないと受け入れられない…そういったことをみなさん考えて作っています。
昔の方が良いものを残してくれたので、私たちはそれで生活させていただいているし、世界中にこれを広めてくださった先人たちのおかげです。
それがなかったら、今、残っていないと思います。
先人が火にかけても良い素材を開発してくれた、それを届けてくれた…そのおかげで今私たちも続けられていられるわけです。

 

ひつやコーヒーの焙煎機などお客様の声が商品になる

この産業を私から息子につないでいくように、続けられたら良いなと思います。
それから直接お客さんの声を聞いて、それをお客さんに直接販売させていただくということも、今後、窯元はやっていかなければと。
すでに少しずつやり始めています。
ご飯鍋と、おひつがありまして。
この『おひつ』が意外とご飯を入れるだけではなく、いろんなものに使っていただいています。
私どものおひつにお野菜を入れて、電子レンジでチンすると無水鍋状態でお弁当に入れるお野菜ができたとか、うどんとお肉を入れてしたとか、パスタを調理したとか、ケーキを作ったとか。
直接お客さんの声を生かしたというのが売れてきますね。
自分本位のものだけ、やりたいものだけやっていても芸術ではないので、お客さん当事者の声を聞いて、作陶するというのが私たちの務めですから。
今、コーヒーの豆を煎る焙煎機も作っています。
そういったものまではじめました。
どこで使うのかと訊ねたら、キャンプ場で使うらしいです。
キャンプ場でわざわざ豆を炒ってコーヒーを淹れるらしいです。
そんなことされるんですね。
感心しました。
耐熱陶器の利用法は、まだまだとてもあると思います。

 

を練ることから完成まですべて出来ることが嬉しい

この仕事は楽しい。
創作意欲もどんどん湧いてくる。
作ることへの喜びがあふれてきます。
だからこそ、やり続けていこうかと。
面白いですね、やっぱり。
こんなん作ってみたけど、どうや、とか。
直接お客さんから反応を聞くことができるので。
最初のものだから。
最初のものを出すことで、お客さんの声を直接聞くことができる。
それはとても良いことだと思います。
やりがいというか…面白いです。
泥から練って土から練って、千何百度で焼いて出てくるんですから、ねえ。
自分でも思いますが、誇りの持てる仕事だと思います。
汚いし汚れるし大変だと言われますが、そんなことなくてステイタスのある仕事だぜ、と。
なかなかこんな、完成までできる仕事って少ないと思いますよ。
農家の野菜づくりでもそうですが、最初から最後まで作り上げますでしょ。
面白みのある仕事だと思います。

自分が作った器を囲み、家族団らんの時間が流れる。
こんな幸せな仕事はありません。
若い人たちから、格好いい仕事だと認められ、僕もやりたいと思われるよう、魅力を伝えていくのが私たちの役割だと思っています。