『M子の地産地消レストラン』2012年08月

その地でとれたものを、その地で食す。
そんなコンセプトで美味しい物を訪ね歩く『地産地消レストランめぐり』。
今回は鳥羽の離島、神島へ向かいます!

今回はいきなり船に乗っています。
そう、離島へ向かっているのです。
三重に暮らして5年以上になるというのに、『島』へは一度も足を踏み入れたことのないM子。
とってもとってもワクワクしています。

鳥羽の佐田浜港を出港することおよそ30分で、見えてきました『神島』。
『神島』は言わずと知れた、三島由紀夫作の『潮騒』の舞台となった島。
作中で『歌島』となっているのは『神島』の古名なんだそうです。

が、今、私が目指すものは『潮騒』ではなく『食』。
大漁の蛸壺が期待を高めます。

『浜辺の店 潮波(さっぱ)』。
船の発着場から見える、まさに浜辺のお店です。
神島には民宿が何軒かあり、食堂を兼ねているところもあるそうですが、基本は事前予約が必要だそう。
なので『潮波』は、島で唯一、飛び込みで入ることのできる『食堂』なんです。

店内は半分が食事スペースで、半分はおみやげ売り場。
3人のお母さんが、厨房を切り盛りしています。
観光客相手だけではなく、島に暮らす人たちもちょくちょくにお店に来ては、ちょっとしたおかずを買っていました。

眺めて楽しいメニュ。
この他にも、玉子焼きや海老フライやサラダや酢の物など、お持ち帰りおかずもあり。

いきなりお母さんが「美味しいのよ、これ」とすすめてくれた『タコ串』200円。
これが滅法、味が濃い!
歯応えがあります!
まさに獲れたてを感じる、生きの良さ!
いや、正直、タコ串とビールがあったら、ずーっとここで暮らしてもいい、と思うほど。
それほど、何というか・・・「地の味」なんです。

どうしても食べたくて、海を渡ってきたM子注文の『タコ飯定食』900円。

お目当てのタコ飯。
味が染み染みなのが納得できる、桜色・・・いやいや、薔薇色に染まったご飯。
もうですね、本当にタコの旨みが、ご飯の一粒一粒に染み渡っています。
でも、タコ自体にも旨みがもしっかり残っていて、二重に美味しいです!

こちらは『アラメ巻』。
アワビの餌となる海藻『アラメ』で秋刀魚を巻き、炊きあげたもの。
ふっくら柔らかく炊かれたアラメと秋刀魚が味わい深く、しみじみと美味しいです。
一見地味ながら、2切れ、3切れとつい箸が伸びますよ。
この『アラメ巻』の作り方、お母さんにお聞きしたところ、実は相当手がかかっているそう。

まず、採ってきたアラメを干してから、一旦水で戻します。
それから一昼夜炊いてから、もう一度しっかりと干します。
・・・と、ここまでが、『アラメ』自体の下ごしらえ。
『アラメ巻』は、このアラメをもう一度水で戻し、秋刀魚を巻いて砂糖や醤油、酒・味醂などでじっくり3時間ほど炊いたもの。
昔はどこの家庭でも作っていたそうですが、最近はアラメを採りに行く事自体も少なくなり、かつ手間もかかるため、作らなくなっているそうです。
こんなに美味しいお料理、なくならないで欲しいです。

そして何となく『さきイカ』チックなこの小鉢、コラーゲンのコリプル感もあって不思議な食感。
甘めの味付けでご飯が進みます。
なんとこれは『エイの和え物』!
『アラメ巻』と同じくこの辺りの郷土料理で、作り方を聞いたところ、こちらも思いっきり手がかかっています。

ほら、と、お母さんが冷凍庫から出してくれたのはエイのヒレ。
エイのヒレの部分を11月から12月の間の1週間~10日間干したもので、カッピカピです。
ここまで乾燥させるには、やはり冬の時期でなければならないそう。

これを戻して裂き、炊きあげたのが、『エイの和え物』で、お正月には欠かせない料理だとか。

『潮波』で人気の高い『海鮮カレー』700円。
これは確かに美味しいです!
「お母さんのカレー」に、海の旨みが濃厚に加わって・・・何と言ったら良いのか・・・決して濃いわけではないのに、コクがものスゴイです。
具は海老、イカ、タコ、浅利。
海鮮と言ってもあまり入ることのないタコが、一味違った風味を醸し出しているのでしょうか。

『さざえのお刺身』2個で500円。
2個で500円て!
しかもこの大きさ、この鮮度!
コリッコリで臭み全くなく磯の香りがいたします。

嬉しいのが、この白いキモ!
普通の黒っぽいのは苦いんですが、この白いのは、あん肝のように濃厚で美味しいんですよ!
お店のお母さんも「アタリだね」と。
これをお醤油に溶かして、共和え状態でいただくと、なお美味しい!ということも教えていただきました。
ちなみに白いキモがでるのは、たまたまだそうです。

『潮波』のみなさん、ご馳走様でした!

・・・と、通常ならここでレポート終了なのですが、何しろ離島。
到着したのが11:30すぎで、取材と言う名の食事を終えたのが12:30。
そして次の鳥羽行きは、15:45・・・。
つまり、あと3時間ほど『神島』滞在が決定しているわけです。

と、カメラマンとして同行している夫が突然、「神島小中学校と、その先のニワの浜に行こう」と。

※上の画像をクリックするとPDFで大きなファイルが開きます。

『潮波』でいただいた地図によると、小中学校は、島民が暮らす港側の全く裏側。
しかも島全体が、港からすぐ山になっており、かなりの急勾配。
しかしあと3時間は島から出られず、一軒だけある食堂(休憩所)は、先ほどまでお邪魔していた『潮波』さん。

・・・というわけで、かつて『洗濯場』だった水場や、三島由紀夫が執筆中に滞在したという、『寺田さん宅』などを探しつつ坂を登り歩くこと数十分、小中学校に到着。

そして最終目的地『ニワの浜』近くの東屋に倒れこむM子。

実はこの時、軽い熱中症にかかっていたようで、顔が真っ赤で頭がガンガンしていました。
水で絞った手ぬぐいを頭に載せること数十分・・・ようやく治まりました。
歩いている最中、一瞬走馬灯が走った気がいたしましたよ。
みなさん、熱中症にはくれぐれも気をつけて下さいね!
・・・っていうか、毎日この道を通っている小中学校のみなさんを、心から尊敬しました。

そして15:40。
船に乗る寸前に嬉しいサプライズ!
夫が神島に来ていることを知った『潮騒の宿 山海荘』のご主人から『タコかつバーガー』の差し入れ!

※夫と『潮騒の宿 山海荘』の出会いはこちら。

急でバンズがなかったためか『タコかつサンド』になっていますが、できたてのホッカホカ。
急いで作ってくださった、その気持ちがめちゃめちゃ嬉しいです。

『タコかつ』はポテトコロッケのベースにタコがゴロゴロと入っています。
柔らかく炊かれているため、コロッケの柔らかさを全く邪魔しない口当たりで、むしろクリーミー。
地の物ならではのタコの旨みの濃さに、タルタルの酸味がちょうど良く、あっという間に完食してしまいました。

船の出る時間になったとたん、「もう少し神島にいたい!」と後ろ髪が引かれる思いが。
『潮波』のお母さんたち、『山海荘』のみなさん、そして「今日は暑いでな~」と気軽に話しかけてくれる、島のおばあちゃんたち。
そんな、島の人たちのあたたかさに参ってしまったのかも知れません。
また来ます!

重ねて、ご馳走様でした!