FM三重『ウィークエンドカフェ』2022年1月22日放送

海と山の自然が溢れる南伊勢町。
穏やかな海を眺めながらのんびりできる場所が五ケ所に誕生しました。
それがうみべのキッチンです。
今回は、このキッチンを運営する『うみべのいえプロジェクト』、プロジェクトリーダーの西岡奈保子さんがお客様です。

もが使えるシェアキッチン うみべのキッチンを作った

五ヶ所にある、『新港エリア』といが海に突き出た埋立地のエリアが、もともとは商店街だったのですが、今は見ての通り、人がいなくなっています。
住んでいる人たちはいますが、空き店舗が多く、そこをお店に変えていくことで、海辺全体を家ととらえます。
例えばキッチン、みんなで使うお家というイメージを、まち全体に与えたいんですね。
ということで、ここを『うみべのいえキッチン』としてスタートさせ、みんなが使えるキッチンとして自由に挑戦でき、だれでも飲食店ができるというシェアキッチンの形態をとっています。
次はできればゲストハウスを作り、みんなが泊まることができ、寝ることができる寝室を作りたいと。
その後はお部屋をだんだん町の中で作っていきたいと思っています。
高齢者率が三重県では一番高い地域なので、空き家もどんどん増えていく中で、息子さんや娘さんが伊勢とか東京とかにいて、管理できずに朽ちていく空き家が多いです。
海の目の前で、たまたま賃貸の空き家があったので、すぐに電話して、貸してもらいました。
もともと住居だったところを店舗に改装して、今、使っています。

 

タートは焼き芋屋さん

まずは資金がないとはじまりません。
住居から店舗にするにも工事が必要となってきます。
しかし資金がないし、私たちがこういう活動をはじめたということ、町の人に知ってもらいたいと思っていたときに、最初の一歩に何が良いかを考えたときに、『焼き芋』と。
老若男女が好きだし、はじめやすいし、資金もかからないし…ということで、『焼き芋屋』からスタートしました。
焼き芋屋は飲食店営業の資格がいらないのですぐにはじめられるということと、たまたまキッチンカーを無償で借りることができたので、それを使うことができた、というのもありました。
焼き芋屋さんをはじめると、地域のおばあちゃん、おじいちゃんたちが歩いて買いに来てくれて。
「焼き芋売ってどうするんや」と聞かれたので、隣の空き家を改装して飲食店にしたいと話しました。
「がんばってな」と言われて、その流れというか、焼き芋をきっかけに私たちがしたいことを知ってもらうことができました。
焼き芋自体を売りたいということではなく、ツールとして焼き芋販売が活躍したな、と思います。
焼き芋を元に、徐々に徐々に資金を集め、それで漆喰やコテを買ったり、床板を買って板を貼ったりしながら、ちょっとずつお店らしくなっていったという感じです。

 

伊勢町のことを思ってくれている人がたくさんいることが嬉しい

メンバーで作り上げたうみべのキッチンは、今、16の事業者さんがお店を開いています。
地域のみなさんも、とても楽しみにしています。
月に1〜2回ペースで、他のところで店をしているけど南伊勢町のことも知ってほしいという人や、町内でやってみたいことがあったけど場所がなくて、やっとここで実現できると言ってくれる人とか、いろいろな方がチャレンジしてくれています。
ここが出身だけど伊勢でお店をしているケーキ屋さんがここでやってくれたりします。
南伊勢のためになにかしたい…その気持が私も嬉しくて。
私自身移住者なので勝手な気持ちなんですけど、嬉しいですね。
名古屋暮らしが長かった私ですが、今は南伊勢町にずっと住むすつもりです。
名古屋には戻りません。
ここでお店をやって、また戻っちゃうと、何をしに来たんだってなりますしね。
夫も今年の4月から、南伊勢町でイチゴ農園を始めるので、ずっと南伊勢町に骨を埋めるつもりでいます。

 

りたい人の聞き役、背中を押す役目

お店を開く人たちは、年齢も職種もさまざま。
先日は高校生の男の子が魚屋さんをオープンしました。
水産高校の一年生の徳太郎くん、魚が好きで、釣りもして自分で締めて捌くところまでするということで、みなさんに食べてほしいという思いから相談があり、じゃあやろう!と。
そんな思いがある子が町内にいることも知ってほしいです。
また、伊勢などに住んでいる男の子たちから、高校生でやっている子がいるならば僕たちも見に行ってみたいと言ってくれたりしました。
一人の挑戦が誰かの挑戦につながる瞬間をたくさん見てきているので、やりたいと相談を受けたらできるだけできる方向で、考えていきたいと思っています。
メイクアップのレッスン、アクセサリー作りのワークショップなど、食べることだけではなく、ここを使って自分たちの活動を知って欲しいという人たちもいますし、いろいろな使い方をみなさんで考えてやってくれるので、私は聞くだけ。
そんな使い方があるんですか、ぜひどうぞやってください、みたいな。
『QOL(クオリティ・オブ・ライフ)』生活の質の高さは、住んでいる場所にどれだけお店があるかがポイントになっているという研究結果があるんですね。
ここに住んでいる人たちが、このお店…一つのお店でありつつ、たくさんのお店があることで、生活の質がより豊かになるんじゃないかと思います。
1つのお店で商店街ができたらいいじゃん…という感覚ですね。
この過疎地で、1つのお店で1つの種類で月曜日から日曜日までお店を営むって、とてもハードルが高いですよね。
けれど、この1つのお店をみんなで共有してシェアしていく時代になっていく…それが私のやりたいことかな。

失敗しても、それを笑って「次どうする?」と言ってくれる人が周りにいれば、不安な気持ちはなくなります。
だから私は、誰かの背中を押して、手をつないで一緒に歩くという気持ちで、出店者さんに寄り添っていきたいと思います。