鳥羽マリンターミナルから市営定期船に乗っておよそ12分。
答志島の桃取港に到着します。
ここは黒海苔の養殖が盛んなところ。
今回は『桃取黒海苔委託加工施設』、工場長の清水直兄さんがお客様です。
最
高で80軒ほどが海苔養殖をしていたが、今は9軒になってしまった
最初に海苔養殖をはじめたのは2〜3人でしたが、それからずっと徐々に増えて、最高は八十数軒聞きました。
僕らが小さな頃です。
それがだんだんと減ってきて、今では9軒になったと。
八十何軒もあると、地区のほとんどが海苔屋さんという感じですね。
その時は今より海苔が真っ黒で、重かったです。
昔のほうが、経費もかからず海苔の単価も高かったので、実入りが良かったです。
今は経費がかかるもので、燃料代も高いし網代も高いし…。
経費が上がった割に海苔の値段が昔と変わらないので、実入りが少ないということですな。
委託加工施設は、海苔を加工をするところです。
桃取で海苔養殖をしている9軒のうち6軒の漁業者が、委託加工場を利用しています。
重労働だった海苔の加工は、ずいぶん楽になりました。
海苔を自分で刈ってきてここに持ってきて、あとはオペレーターと作業員が海苔を作るという仕組みです。
僕らは海苔を沖から摘み取ってくるだけで、仕事はだいぶ楽になりました。
最後までこの工程を自分たちでしなきゃならないと、とても重労働でした。
しかし今だと、桶で摘み取って持ってきて冷蔵庫に入れたら、もうあとは良いので、楽ですね。
鳥
羽の海苔がおいしいのは、海苔の熟成。今は3時間で板海苔が完成する
脱水機で水を飛ばして冷蔵庫に入れ、1日寝かして熟成させます。
この工程はすぐですね。
この工程をするのは、鳥羽市の桃取・答志・菅島だけです。
味が濃くなるし、海苔自体にも光沢というか照りというか光が乗るんです。
美味しく見えるというか。
ピカピカになります。
焼くとまた青くなり、旨味成分が濃くなり、香りも良くなります。
生で佃煮にするときもあります。
水飴などで煮て。
海苔は、刈り取ってから冷蔵庫に入れて1日熟成して、その後3時間くらいで完成します。
息
子たちのためにも豊かな海を作ることが必要
2019年、名古屋で美容師をしていた息子、剛幸(たけゆき)が帰ってきて、今は一緒に働いています。
跡継ぎができたのが一番嬉しいですね。
それに対して、水揚げが伴わないのが一番のネックです。
いかにして水揚げを増やすか…それが一番の悩みです。
海が良くないのですが、自然には勝てません。
海の水を綺麗にする、豊かにすると言いますが、栄養のある水を供給するためにはし尿施設なども関係してきます。
それをもっと研究できないかなと思っています。
もっともっと良い海苔を作りたい…そんな思いです。
息子といっしょにやっている限りは水揚げも増やしたいですね。
せっかく息子が来てくれたのに、儲からないのではこの先不安だし、若い子が食べていけないと困ります。
とにかく自然を、水を豊かにすることが先決だと思います。
栄養のある海に戻すということを、していかなければならないですね。
種
付けが重要。自分の海苔は見たらすぐわかる
私が海苔養殖を継いでから38年。
厳しい条件の中でも毎年、良い海苔を作っています。
海苔づくりは種付けが一番メインですね。
それが重要になってくると思います。
海苔を見たら、自分で作ったものは大体わかります。
色と光沢と仕上がり具合でパッとわかります。
それこそ、勘かもしれませんが。
全国のみなさんに鳥羽、桃取の海苔を食べてもらい、良さを知ってほしいですね。
味が美味しいのが一番。
香りも良ければ味も良し。
厚さ加減も丁度よいです。
厚ければ良いというものではなく、丁度よい厚さがあります。
判を押して目方加減をしていると、丁度よい厚さ加減があります。
なんせ味が良い、香りが良い。
それが一番の自慢です。
これからますます、桃取の海苔を全国のみなさんにアピールしたいですね。
まだまだ知られていないので、これからもっとアピールしていかないといけないですね。
自分たちの努力や過去の経験が頭にインプットされています。
それを生かしていくという感じですね。