三重テレビ『ゲンキみえ生き活きレポート』2022年3月6日

毎月3と8の付く日に三八市が開催されることで知られる桑名市・寺町通り商店街で『お食事処五大茶屋』を運営する林恵美子さん。
林さんは、寺町で生まれ育ち、家業の仏壇店を4代目として運営してきたが、60才で息子さんに跡を譲り、「好きなことをやりたい」と五大茶屋を2013年にオープン!
2015年に桑名を舞台に製作された映画の地元市民でサポートする映画部部長として活躍、そこから人の繋がりをさらに増やそうと、ランチを提供するだけでなく、店舗を使ってのイベントなどを行い、人々が繋がる場を作ってきました!

こちらは桑名市の桑名寺町通り商店街です。
3と8がつく日に開催されている三八市で知られるこちらで、地域の人たちが自然に集うコミュニティカフェとも言える場所があると聞いてやって来ました。

 

それがこちら『お食事処 五大茶屋』です。
店主の林恵美子さんが、2013年にオープン。
ランチの提供だけでなく、イベントの開催など様々な人が集まる場をつくり出しています。

「今年の4月で丸9年になります。
店舗の一部がステージみたいな感じになるので、落語の会やライブなどを開催してきました。
しかし現在はコロナ禍ということもあり、イベントはお休みさせていただいています」

と、店主の林さん。

 

実は林さん、生まれも育ちも、ここ寺町商店街。
『五大茶屋』の目の前の老舗仏具店『仏壇・仏具 五大』を家業とし、四代目として60歳まで働いていました。
現在は息子さんが五代目社長となり、跡を継いでいます。
それにしても、仏具店から喫茶店への転身には、どんな心境の変化があったのでしょうか。

 

「48歳の時にガンになり、死を身近に感じました。
そのときに、自分のやりたいことは全部やってから死にたいと思ったんです。
それが以前から考えていた『食事処』でした」

 

ランチの準備をする林さん。

「いつも7種類のおかずを作ってお出ししています。
料理自体はもともと好きで、子どもたちを呼んでお食事会したりしていました。
たまたま京都へお料理を習いに行くきっかけがあり、お出汁の引き方や胡麻豆腐の作り方などを教えていただいたので、そういうのをメニューに入れたお食事処にしようかなと思いました。
どこにでも売っている食材で、でもちょっとお家のご飯よりは手のかかった料理を楽しんでいただくというのがコンセプトです。
そろそろ春やねとかね…とか、季節を感じてもらいたいですね」

 

林さんが一番こだわるのは味の基本となる出汁。
京都で学んだ技術と、これまでの経験を生かして、深みとコクのある出汁をひいていきます。

「お醤油やお塩も最小限にして、そのお出汁でその独自のそのお野菜の味を出すのが私の料理です」

 

こちらが、『お食事処 五大茶屋』のランチ。
商店街で手に入る食材を、ひと手間加えた調理で、こんな贅沢な一膳に。
『本日のおまかせ定食 コーヒーor紅茶付き』で1300円。
『五大茶屋』のメニューは、こちらの日替わりランチのみとなっています。

 

メインの『とろろ入り揚げ焼き』は、揚げの中にお野菜の旨みが染み込んでいます。
噛むとじゅわっとお出汁の美味しさが口の中に広がりますよ。

 

白和えは優しくありつつ、コクのある味わい。
素材の味を生かしています。

「お店をはじめたとき、『今日はお昼を食べに行くんやわ』みたいな形であの来店されたり、初めての方と同席した方での出会いみたいなものを、この場で作ったらいいなと思っていました。
9年経って、そういう理想が形になってきたのが、とても嬉しいです」

と、林さん。

 

地域の人が集い、何かがはじまるお店をつくった林さん。
2015年に大きな転機が訪れます。
桑名を舞台にした映画『クハナ!』への協力。
地元市民でサポートする映画部部長として活躍。
映画製作のための資金集めやロケ地の交渉、毎日のロケ弁当づくりに携わり、その取り組みで地方創生大賞を受賞しました。

「苦労を共にした人たちと繋がりから、いろいろな人を紹介してもらったりしてさまざまなことを実行しているうちに、だんだん輪が大きくなっていき、思ってもみなかったことができるようになりました。
お店にみんなが集まって、また違う活動になっていっても売上とかは全然変わりません(笑)。
でも、ご縁の財産が、いろいろなところでできたと感じます。

 

そんな林さんの思いが実現したひとつは、店前で開催された『街角ピアノ』というイベント。
地域の人に楽しんでもらいたい、という気持ちでつながったメンバーが楽器を演奏し、80人近い人で盛り上がりました。

 

そして桑名市の事業にも積極的に協力。
認知症の人やその家族、地域の住民など誰もが参加できるオレンジカフェ。
『五大茶屋』はその会場のひとつとして、みなさんと交流を深めました。

 

さらに林さんは、オレンジカフェから発展させて、地域の高齢者、単身者が気軽に集まれるカフェを独自に開催。
その名もグリーンカフェです。
この日も、地域のみなさんが、お茶を片手に楽しいおしゃべりタイムをすごしていました。

 

「私は87才。
最高齢じゃないかしら。
ここは大げさに言えば『生きがい』。
ここへ、カレンダーにマルを付けて、『グリーンカフェ 2時。あ、行ける!』と思うと前の日から胸が躍るんです」

「お家の中でひとりでじっとしていて、1日誰とも話さないという方をお誘いして、引っ張り出してここへお連れしたり…そういう本当にいらないお世話をしています(笑)」

「ここにお邪魔しますと、若い時や高校生時代のことを思い出しますね(笑)」

 

「グリーンカフェそのものもそうですけど、僕はここのママ(林さん)に憧れてるんだよね。
考え方が斬新というか、非常に包容力がある考え方というか。
そういう点では、桑名では珍しいと思いますよ」

「地域の中で、『グリーンカフェ』のような形の展開をやっていく必要があると考えています。
グリーンカフェのメンバーもそういった実験に対して活発に動いてくれそうなので、『寺町商店街』はなかなかおもしろいと、僕は感じています」

と、常連のみなさん。

「何でもやってみてダメな時もあります。
でも失敗する後悔よりしない後悔の方が絶対後でもっと大きな後悔になりますよね。
それは映画『クハナ』の頃、それよりもお店を開店したときからの思いです。
自分が旗挙げするのではなく、例えば子育てで何かの形で協力できたりとか、生の演奏を子どもたちに聴かせてあげたいとなったときに、それを実現できたら、ここの建物はとても喜ぶと思います」

と、林さん。

ひとつの出逢いは、さまざまなものを生み出す可能性。
人が人を呼び、縁を広げていく。
それはつまり無限の可能性になる…林さんはそんな気持ちで走り続けています。